妖怪学新考: 妖怪からみる日本人の心 (小学館ライブラリー 132)

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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094601329

作品紹介・あらすじ

人々が不安や怖れから逃れられず、心に「闇」を抱きつづけるかぎり、妖怪は生きつづける。妖怪を明らかにする試み…、それは現代社会と日本人の心を明らかにすることでもある。妖怪研究の第一人者による刺激的妖怪論。

感想・レビュー・書評

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  • 人間の恐怖が昔から今日に至るまで「妖怪」を生み出してきた。
    自然など予期できぬものに対する畏怖の心から生みだされた
    日本特有の形をした土着信仰と言える。
    高度経済成長を経て都市から「闇」が無くなってからも、
    日本の「妖怪」は消滅していないと筆者は言う。
    心の内部にはなお嫉妬、恨み、恐怖などといった「闇」を抱えているからである。
    またそれは正常な心の働きだと言う。

    思えば暮らしが良くなった現代も一般の生活から政治経済に至るまで
    あらゆる局面で、不安やリスクといったものが大きな行動原理として
    作用している事例がたくさんあるが、
    計量出来ない事象に対して仮想敵として「妖怪」を
    たくさん生み出した過去の人の生活は辛かっただろうなあと
    とりとめのない事を考えて読んだ。

  • 民俗社会には数多くの妖怪や魔(生霊・怨霊・呪詛・憑きもの)あるいは異界に棲む多くの妖怪たちが活動しています。多くの子どもたちを恐怖させた口裂け女の騒動もまだ記憶に新しいところです。科学文明が現代社会に生活する人々に浸透しているにもかかわらず、こうした怪談を生み出す心性を日本人は今日なお持ち続けています。妖怪や魔を究明することは、この母胎である民俗文化の仕組みや民俗的思考様式を探ることであり、古代から現代にいたる日本人の生き方に触れることを意味しています。 本書は、民俗社会に生き続けてきた数多くの「妖怪」や「魔」を体系的に把握、探求しつつ、現代の生活空間の中で隠されている空間──「闇」の領域から解明し、日本人の心のあり方を探求します

  • 幼少から水木先生による妖怪洗脳をされてきた世代ですが、妖怪学に踏み込んだのは小松和彦氏の本を読んでからです。

    鬼・狐・憑き物・呪い・怨霊などなど、日本古来からのありとあらゆる「妖怪的なモノ」を研究していらっしゃいます。

    著書も多数ありますが、入門書としてはこれがよろしいかと。

    妖怪とは何か?

    妖怪と都市(平安京の恐怖空間・江戸の怪異空間)

    変貌する都市のコスモロジー(『闇』の喪失・妖怪の近代)

    妖怪と現代人

    祭祀される妖怪、退治される神霊

    民族的起源論

    呪術と怨霊

    外方使い

    異界・妖怪・異人

    「近代の科学文明の発達・浸透とともに人間世界から妖怪は消滅するはずであった。…中略…しかしながら、本書でも示したように、まことに興味深いことに、現代においても、妖怪たちは生き続け、また、新たに生まれているのだ」

    「妖怪が棲みついていた『闇』や『自然』が人間によって制圧され、…中略…前代の妖怪を衰退させることになったのであった」

    「現代人の心の中に『不安』や『恐怖心』つまり『闇』が存在している…中略…その『闇』が『妖怪』として形象化され物語化されて、社会に吐き出されるのである。つまり、妖怪が本来の棲みかとしているのは、人間の心の『内部』なのだ。人間の心のなかで生まれた妖怪が、その外の世界に解き放たれたとき棲みつくところが、外界にある『闇』だったのである」

    現代(執筆された1994年頃の)と過去を比較し、 妖怪を分類定義し、わかりやすいものに解き明かしているようで、その実、またよくわからないものだと再認識することのできる本です。

  • 妖怪の存在を通して社会について考えさせられた一冊。

  • 3種類出てますがこれがいちばん表紙が素敵。

  • 妖怪好き必読。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター教授、同副所長

「2011年 『【対話】異形 生命の教養学Ⅶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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