旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記 (全集 日本の歴史 1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784096221013

作品紹介・あらすじ

四万年の歩みを一気に描く新しい列島史。

感想・レビュー・書評

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  • 旧石器時代・縄文時代・弥生時代・古墳時代それぞれにおける、人々の思想的な営みがよく理解できた。本書で扱う原始時代という時代は、文献資料がない時代ということで、古代以降の歴史と比べて当時の人々の理性的・人間的な部分を軽視してしまいがちな時代であると思う。しかし、そこには人間の理性の萌芽ともいえる「文明」が存在していたということを本書を通じて実感した。

    原始時代人の理性のどのような部分が、今を生きる現代人と共通しているのかに注目していきたい。

  • ・700万年前に猿人が出て、15万年前に新人が出る
    ・旧石器時代にも農業をする動きはあったが、定着しなかった
    ・2万年前は寒冷化のどん底。瀬戸内海は陸地となり、日本海は対馬と津軽で外海とつながる内海となった。狩猟・解体・加工に特化したナイフ形石器の登場。
    ・1万5000年頃に温暖化していくと、ナウマンゾウやオオツノジカといった大型の動物は消滅。ナイフ形石器から実用性にこだわったフットワーク重視の社会orデザインに拘ったネットワーク重視の社会の登場。
    ・結局、縄文時代はネットワーク重視の時代となった。
    ・各地域、とりわけ東日本では獲得・加工・貯蔵の技術が個別化。共有された知が目に見える形となって現れる文化となる。物資流通ネットワークが形成される中で、デザインに凝った土器の登場。無文字社会において、デザインこそがアイデンティティーの表明となる。
    ・「凝り」は個々人感の差異を助長する方向に働く一方、環状のモニュメントは平等志向。
    ・BC3000〜2000年頃、再び寒冷化。これが内からの弥生化と外からの弥生化をもたらす。前者では、集団よりも個々人のイニシアティブが重視されるように。後者は、四大河地域に端を発する、自然と人を支配する文明型文化である。北九州や北海道・東北北部では外からの弥生化が早くから進んだのに対し、中部・関東での進みは遅かった。
    ・農耕は人口の増加をもたらす。北九州では資源を巡る争いが増え、人々が互いに寄り合うことでムラ→クニの動き(強い集団が弱い集団を征服していく説に否定的)
    ・BC300〜100年頃の弥生中期には、温暖化。北九州で大酋長、北海道で副葬のピーク、近畿・東海で環壕集落が大型化。
    ・紀元前後から弥生後期、古墳時代にかけて寒冷化。鉄器を取り入れることで、農業生産の衰退に対応。世界的に見るとゲルマンの大移動の時代。
    ・鉄を軸とした流通経済のシステムへ。大酋長は遠距離交渉の窓口となる。同列的なムラから、鉄の流通拠点となる大きなムラを頂点に、階層的なクニへ。
    ・まとめると、弥生後期にかけての寒冷化でムラからクニへ、石から鉄へ、墳丘墓の出現、青銅器の大型化と消滅。
    ・3c半ば、箸墓古墳の登場。鉄を軸とする外部物資の交易圏をめぐり、大酋長同士の利益を調整する人物(=倭王)が共同で擁立される。
    ・5c半ば頃には列島の鉄需要が満たされる。倭王や大酋長の権威が低下。古墳の衰退。この支配体制の再編成を経て、律令社会へ。

  • 日本史復習。古墳時代まで

  • MT4a

  • 図書館から借りました。
    石器時代~古墳時代までの文字記録のない時代の日本の社会の様子を、花粉による気候の変化や出土物から考察する、というヒューマンサイエンスの見地から解説した歴史書。要は、歴史が転換する時は、とても温暖になったりとても寒冷になったり、と気候の変化に因るとことと、縄文土器のように道具にも「凝り」が見られるのは、その社会に取っての何かの共通言語のような役割を果たしていたのではないか……など、なかなか興味深い内容であった。

  • 古代の日本列島の社会はすごく多様性がある。この本はそのことをわかりやすく説明してくれる。

  • この書籍は、日本列島の歴史と言いますが、日本史の創造期の旧石器時代から古墳時代までの長い期間を2007年まで解っている範囲までを解説されています。
    未だに謎多き「旧石器時代」。ちょっと解り易くなった「縄文時代」を前後。「弥生時代」も前後。「古墳時代」は全期にして、縄文と弥生は近年の研究で繋がりがあるのでつながるようになっています。

  • ☆縄文遺跡での小グループは出自別ではないかとのこと。古墳の埋葬品から、被埋葬者は神格化されていたとする。

  • 日本列島の旧石器時代から縄文、弥生時代までを認知考古学という新しい手法で述べた試みである。認知考古学では、当時の人々の考え方から考古資料を読み解く。例えば、縄文時代は平等ではなく競争社会だったが、それを合理化するための儀式として土偶や祭具が使用されたという。

  • 考古学者である著者が、ヒトの確かな足跡が発見される旧石器時代から、巨大古墳が築かれる5世紀までの4万年の日本列島の歴史を文字の記録に頼らず、物質資料のみで描いた大作。

    何より新鮮だったのが、歴史科学の再生において「認知科学(ヒューマンサイエンス)」をベースにし、人の心の普遍的特質から人の行動を考古学的に説明しようとした点。文字のない「物質」と「人の心」から読み解く考古学の世界は、自分が想像していた以上に惹かれるものであった。

    無文字社会の人、もの、心のあり方とは?そもそも宗教というものはあったのか?日本という国はどうやって形成されていったのか?

    こういった素朴な疑問に対し、なんらかの新しい発見がきっと見つかるはずである。

    架空の存在への信仰、美、芸術に満ちた世界。

    5万年前も今も変わらない、人間の本質というものに気づかされる。

    <以下引用>
    考古学研究者が「画期」「革新」などと呼ぶような変革の多くは、実際には何十年も、何世代もかけて徐々に進んだ小さな変化の積み重ねであることが少なくない。このような小さな変化の積み重ねこそ、歴史が動くメカニズムであり、そこに人類史の本質がある。

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著者プロフィール

松木 武彦(まつき・たけひこ)
1961年愛媛県生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。岡山大学文学部教授を経て、現在、国立歴史民俗博物館教授。専攻は日本考古学。モノの分析をとおしてヒトの心の現象と進化を解明、科学としての歴史の再構築を目指している。2008年、『全集日本の歴史1 列島創世記』(小学館)でサントリー学芸賞受賞。他の著書に『進化考古学の大冒険』『美の考古学』(新潮選書)、『古墳とはなにか』(角川選書)、『未盗掘古墳と天皇陵古墳』(小学館)『縄文とケルト』(ちくま新書)などがある。

「2021年 『はじめての考古学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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