まれびと

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 62
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784096823064

作品紹介・あらすじ

日本の来訪神儀礼が初めてまとまった写真集

世界をフィールドに冒険家として活動しながら、文化人類学や民俗学への関心を持ちつつ活躍する写真家石川直樹が10年に渡って撮りためた日本の『来訪神』儀礼を一冊にまとめる企画。日本列島には折口信夫がいうところの「まれびと」、すなわち異形の神を迎える儀礼が数多く残されている。それらは海の彼方から現れる来訪神であり、彼岸からやってくる魂でもあるという石川が、それらの“異人”儀礼の貴重な写真を写真集にまとめます。
仮面をかぶり、異形の姿で、家々をまわる来訪神儀礼。 北は、男鹿半島のナマハゲ、秋田県能代市のナゴメハギから能登半島のナゴメハギに至るまで9儀礼、南は、トカラ列島の悪石島のボゼをはじめとして、下甑島のトシドン、硫黄島のメンドン。さらには沖縄・宮古島バーントゥ、石垣島のマユンガナシ、西表島のミルクなど11儀礼。列島に残る20の来訪神儀礼を一冊にまとめる写真集となります。
なお、8県にわたる10件の来訪神儀礼が、2018年11月にユネスコの無形文化遺産に登録されました。本書は、世界に誇る日本の「来訪神儀礼」を網羅するたいへん貴重な写真集となります。

【編集担当からのおすすめ情報】
10月4日~12月1日まで、「鹿児島霧島アートの森」にて、来訪神儀礼の写真を中心にした『石川直樹 島は山』展が開催されます。

感想・レビュー・書評

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  • 「まれびと」とは異界からやってくる異形の来訪神を指す。国文学者・民俗学者の折口信夫によって提唱された。折口によれば
    まれと言ふ語の遡れる限りの古い意義に於て、最少の度数の出現又は訪問を示すものであった事は言はれる。ひとと言ふ語も、人間の意味に固定する前は、神及び継承者の義があったらしい。其側から見れば、まれひとは来訪する神と言ふことになる。ひとに就て今一段階測し易い考へは、人にして神なるものを表すことがあったとするのである。人の扮した神なるが故にひとと称したとするのである。

    ある決まった時期、決まった日に、異界から現世を訪うものがある。元々は人が扮しているのだけれども、異様な衣装を身に付け、怖ろしい仮面をつけたその瞬間、何かが憑依したように、「それ」は人を超える。
    日本の各地にそうした風習が残っており、年に一度、例えば大晦日、例えば小正月、村の各戸を訪れ、子らを泣かせ、人々に祝福を与え、歓待を受け、やがてまた異界へと戻っていく。
    これはそうした「まれびと」を追う写真集である。

    大きく、南と北に分けられ、南は九州や沖縄の島々、北は北陸から東北に掛けて、併せて20の地の「まれびと」が現れる。鹿児島悪石島のボゼ、下甑町のトシドン、沖縄石垣島のアンガマ、男鹿半島のナマハゲ、新潟村上のアマメハギ、岩手三陸のスネカ。名も扮装もさまざまな異形のものが練り歩く。
    著者の石川直樹は写真家であり、かつ民俗学にも深い関心を持つ。
    石川の写真は、単なる旅人の目線ではなく、祭りの内側に入り込み、その空気を捉えるかのようである。「まれびと」自体だけでなく、その地の風景、祭の準備の様子、泣き叫ぶ子供たち、供応する老人たちがフィルムに収められる。
    石川による各章冒頭の短文に誘われ、読者は各地の「まれびと」に出会い、「まれびと」が纏う空気に呑み込まれる。
    連綿と受け継がれていた来訪神行事の向こう側に、古代からの人々の祈りや畏れが見えてくるようでもある。

    巻末に、伊藤俊治、安藤礼二による論考を付す。

  • SANDAの理解の補助になるかと読了。普通の人がある瞬間に神になる大変にいい写真集でした。「サンタクロースとは対極の招かれざる神」なんてフレーズがあった日にゃもう創作者ならここをつなげたいという気持ちは分かるな・・・とちょっとだけ受容の気持ちが芽生えた。

  • 写真に閉じ込められた文化の美しさを感じる一冊

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/782431

  • 日本全国いたるところにあるが、海沿いだな。土左衛門?漂流人?

  • 写真家・石川直樹さんが”まれびと”を写した写真集となる。

    日本列島を北と南に分け、古くから伝わる伝統行事で現れる神や聖人を撮影しており、図鑑のように各地域のまれびとが紹介されていて興味深い。

    いつかその地を訪れてみたいと思うような一冊。

    ”下甑島のトシドン。
    3体が居間に揃うと、その家の子どもが起立して歌を一曲歌わされ、歌い終わると餅を背中に載せて四つん這いになって運ばなくてはならない。餅を落とすとトシドンに怒られ、最初からやり直しだ。
    言葉にならない声をあげながら闇の中を歩くトシドンと、その声が聞こえた瞬間から泣き叫ぶ子どもたちの姿が、今も目に焼き付いて離れない”


    悪石島のボゼや宮古島のパーントゥはビジュアルが強烈な印象だが、なんと言ってもこの写真集を読んでみて僕が一番気に入ったのは下甑島(しもこしきじま)のトシドン。

    トシドンの声が聞こえた瞬間から子どもが泣き叫ぶにも関わらず、家に上がり込んでくると一曲歌わされ、餅を背中に載せて四つん這いになって運ばされ、餅を落とすと怒られる。

    子どもにとって、その恐怖と非日常体験は一生忘れないだろう。

  • 日本の客人神の本。
    実際の行事風景を収めた写真集と解説。
    おもしろいし、実に興味深い。
    装束も簡易化されたりしてきたのだろうが、昔の「もっと怖かった神」を見てみたい。
    近年では一種のポリコレ的潮流で「子供に不用な恐怖心を植え付ける」として客人神の振舞いを制限させる流れもあると聞くが、これは恐怖ではなく畏怖であり、人知では抗えない「畏怖」の核を現世の人間の心の底に収めることが必ずしも悪いこととは思えない。
    少子化で客人神の行事が絶えてしまうというのは大きな損失だ。
    私が地元出身の男で酒に強かったら是非とも神に扮してみたかった。

  • 7700円の写真集
    図書館で借りられてありがたい。
    日本各地の祭祀、異神の仮面、人々の躍動感と、
    来訪神のおとづれ、ぎゅっと凝縮したような瞬間、においたつような写真で、昔からこの土地に続いてきた人々の生活と歴史を感じたり、面白さもあり。
    おとづれる おとなふ 
    が音を立てる、訪問すること

    沖縄 鹿児島 佐賀 石川 秋田 山形 新潟 宮城 岩手 

  • 「まれびと」とは何なのか少しわかったような気がします。解説文もとても良かったです。

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著者プロフィール

冒険家、写真家

「2019年 『いま生きているという冒険 増補新版 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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