晩年 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 297
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006017

感想・レビュー・書評

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  • 『思い出』
    みよとの話が切なかった。みよにとって太宰は雇用主の一人でしかなかったのだろう。

    『彼は昔の彼ならず』
    面白かった。相対性理論の『気になるあの娘』という曲の「気になるあの娘の頭の中はふつうふつうわりと普通」という歌詞を思い出した。ずっと昔にこの感覚をここまでお洒落に描いてるのすごい。

  • どの本をと読んでも太宰治らしさがみえていい。津軽の表現が、多くて風情あった。
    でも、全てを理解するのはまだまだだと思ったのであと3年後にもう一回読みたい。

  • 太宰の内面が赤裸々に書かれていて、1人の人間の感情の機微に触れる事が出来ます。

  • いやぁ。自分は太宰治の熱心な読者というわけではないですし、自虐と自己憐憫の果てに破滅に至るような作品なのかと身構えていましたが、意外なほどの明るさと瑞々しさを湛えた青春の書じゃないですか。

    まずもって、27歳の若さで世に送り出した処女作品集のタイトルが『晩年』って。人生に疲弊し切った老人の繰り言のような題です。が、内容を読むにつけ、人生にそれだけ絶望し尽くすというのもまた若さなのかも、と思わされましたね。年齢ではなく、感性において、太宰は本当に若い。逆に若者でなければ書き得ないような鋭さといいますか、斬新な感覚に満ちています。

    妻の裏切りを知らされ、共産主義運動から脱落し、心中から生き残った著者が、自殺を前提に遺書のつもりで書き綴った処女作品集。
    “撰ばれてあることの 恍惚と不安と 二つわれにあり”というヴェルレーヌのエピグラフで始まる『葉』以下、自己の幼・少年時代を感受性豊かに描いた『思い出』、心中事件前後の内面を前衛的手法で告白した『道化の華』など15編より成る。

    1 葉/2 思い出/3 魚服記/4 列車/5 地獄図/6 猿ヶ島/7雀こ/8 道化の華/9 猿面冠者/10 逆行/11 彼は昔の彼ならず/12 ロマネスク/13 玩具/14 陰火/15 めくら草紙

    所々、著者自身による前置きや脚注、解説や弁解めいた文言が挿入されるあたり、鼻につかないではないです。四の五の御託を並べるのはいいから、早く本編に行ってよ!と言いたくなる感じ。が、溢れ出る文才の絵の具をキャンバスに叩きつけたようなアオハルっぷりはたまりません。この純度・深度を他の作家で味わうことは困難ですわ。

  • 太宰治の最初の本。中編小説15篇が収録。
    老年の作家が書いたような「晩年」というタイトルだが、太宰が27歳の時のもの。収録されている作品に「晩年」というそれのものはない。太宰が遺書のつもりで、それまでの人生のすべてを書き残した。
    もはや90年近く前の本なのだが、令和の時代に読んでも全く色褪せた内容には思えない。

  • 太宰治の処女作品集。全15編。当時27歳。
    自殺を前提に遺書のつもりでせめて自分の一生を書き残したいと懸命に書かれた作品。
    劣等感や罪悪感。生きることへの絶望はありながらも、悲壮感や切迫感はあまりなく、むしろ"死"より"生"を強く感じた。
    太宰治の繊細な内面が、一編ごとに違ったテーマで様々な技法を駆使して描かれており面白い。
    「道化の華」では「人間失格」の主人公が出てくるなど作品同士の繋がりが嬉しく、「ロマネスク」は特徴的な三人の童話風の話が印象に残り、「雀こ」は津軽弁で語られる故郷と井伏鱒二への愛を感じた。
    彼の生き方に共感できるかは別として、彼の弱さは誰もが心のどこかに持っているもののような気がする。
    太宰治のことをもっと知ってから読むともっと深く読めるのかな。
    少しずつ読み進めます。

    • 1Q84O1さん
      ひろさん♪
      『走れメロス』に続いて読み進めていますね
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      ひろさん♪
      『走れメロス』に続いて読み進めていますね
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/06/11
    • ひろさん
      1Qさん♪
      着々と読み進めてますよ~( *´艸`)ウフフ
      太宰さん、遺書のつもりでこんな多彩な物語を書かれていたとは驚きでした~
      1Qさん♪
      着々と読み進めてますよ~( *´艸`)ウフフ
      太宰さん、遺書のつもりでこんな多彩な物語を書かれていたとは驚きでした~
      2023/06/12
    • 1Q84O1さん
      ひろさん、文豪恐るべしですね(゚д゚)!
      ひろさん、文豪恐るべしですね(゚д゚)!
      2023/06/12
  • 道化の華


  • 1.おすすめする人
    →日本文学に興味がある、太宰治を知りたい

    2.内容
    →太宰治の遺書であり処女作。
     話がかなり飛躍するので読みにくいが、
     興味のある人はスラスラ読めると思う。
     私は「ロマネスク」という作品が好き。

  • 人間らしい太宰治の事が色々書かれてあったり。

    よくわからない話もあったり(自分の読解力が足しないのかも?)

    またいつか読み返したらもっと何か分かるのかもしれない。

  • 昭和十一年刊行の太宰治の処女作品集。

    以前、別のアンソロジーで「富嶽百景」を読んだとき、自分がどう見られているのかをすごく気にする人だと感じたが、それは本書収録の作品にも直截的に書かれている。また、(意識的か苦しまげれかはさておき)小説の筋をいったん止めて作者自身が説明や言い訳をしたり、とりとめのない文句をコラージュ的に並べて雰囲気を演出したり、または箴言めいたことを書いてみたり、気取っていて自意識が非常に強い。解説には二十三、四歳のころに書かれたとされているので、そうなるのも当然ではあるのだろうけれど、いま一歩作品に入り込めない。思春期に読んでいれば、また印象は違ったのだろうとは思う。
    どの作品にも作者自身が反映された登場人物が出てくる。


    以下は印象的だった作品

    ・「猿ヶ島」
    猿の流れ着いた島が、実は動物園だったと判明する。
    先着の猿が語るさまざまな職業についての皮肉が面白い。

    ・「猿面冠者」
    人生の岐路に立たされたとき、見知らぬ人から手紙が送られてくる、「風の便り」という小説を書く過程を作者の思考を交えながら描く。小説のなかで小説を書くという入れ子構造になっている。
    同じ手法をとっている「道化の華」(本書収録)では、読者に見られることを意識したうえで悩み、卑下している感がある。

    ・「彼は昔の彼ならず」
    親の遺産を譲り受けた青年は、木下青扇という男に家を貸したが、いっこうに家賃を払う気配がない。取り立てに行っても、いつもうまい具合にごまかされてしまう。働くようにすすめるも、女房が変わるたびに手をつける仕事も変わり、稼げている様子はない。なかば放っておいているところに、青扇の最初の女房が青年のもとを訪れる。

    ・「ロマネスク(仙術太郎 / 喧嘩二郎兵衛 / 噓の三郎)」
    蔵にこもって仙術を会得した太郎。喧嘩の腕を磨こうと鍛錬を積む二郎兵衛。幼いころから嘘をつき続けてきた三郎。思うよういかない三人を、おとぎ話のような形で滑稽に描く。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

太宰治の作品

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