河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101025063

感想・レビュー・書評

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  • 国語の授業が嫌いだった人はきっと芥川なんてつまらない小説家だと思っているだろう。
    特に得意でも不得手でもなかった人はきっと芥川の本をわざわざ買って読んだりしないだろう。
    そんな人たちはこの一冊を読んで欲しい。
    俺は言いたい。
    「芥川舐めんな!!」と。
    この一冊は新潮で出ている他の文庫よりも異質な感じになっている。
    表題作の二つは勿論なのだけど、最後に載っている「歯車」が怖い。
    芥川が自殺した理由が何よりも伝わってくるのだ。
    これから自殺します、という感じがひしひしと伝わってくるのだ。
    太宰でもそれは伝わってくるのだけど、そういう作風が多いためあまり有難味を感じなったりするのだけど、芥川の場合「歯車」一つだけで何もかもぶち壊したという感じがするのだ。
    「歯車」が表題作にならなかったのは社会的な配慮があったのでは、とさえ思える。
    名作ではないかもしれないが、彼を知る上では外せない作品。
    個人的には最高傑作。

  • 河童と歯車が好みです。

  • 書物には良薬と劇薬があるというけれど、これは後者である。「羅生門」の文体を想定して読み進めたら痛い目を見た。
    個人的には、最晩年の作品はかなり好み。理知の枠から漏れ出す激情と不安が作品全体を包む。故に小説は小説の形を保っておらず、むしろ詩に近い印象を抱かせる。
    一度読んだくらいでは味わいきれないくらい深い作品。

  • 精神病/精神病治療施設に関する記述のために再読。相変わらずこちらのメンタルまで引きずられる文章。

  • 「ある若い狂人の話」だと思って読み進めると、あまりの描写の緻密さと精巧さに「この人は本当に狂人なんだろうか」と疑問を持ち、最後には何が虚構か真実か分からなくなりました。流石としか言いようがない。藪の中と少し似た読後感でした。

  • 表題作と「大導寺信輔の半生」が良かったです。芥川は教科書以来触れるのは初めてでしたが、とても面白かった。

  • 歯車がホラーチックで面白かった。

  • 三、四年程積読のままだったが、急に読みたくなって手に取った。

    芥川龍之介の、ここまで精神的苦痛を描いた小説は初めて読んだ。
    彼の気持ちに寄り添って読む部分が多かった。

    大導寺信輔の半生
    玄鶴山房
    蜃気楼
    河童
    或阿呆の一生
    歯車

    どれも好きだった。
    歯車が一番好きかもしれない。

  • 「河童」を読んだ時の衝撃は忘れられません。すごすぎて爆笑しました。こういうことがあるから、本を読むのはやめられません。

  • 「河童」が面白かった。
    この作品がユーモアであるということは河童の世界という設定や河童とのやり取り(例えば河童の出産の場面や鼬鼠との戦争など)からも伺える。
    しかしそうしたユーモアからはそれ以上の人間世界に対する厭世観を痛烈に感じさせられる。
    また、河童の世界が本当に存在するのか、それとも精神病患者である主人公の妄想なのかは不明なままであったが、そうすることで芥川は最後の最後まで、矛盾したこの世への皮肉と疑問を訴えていたのだろう。
    人間の醜悪さを河童に思い知らされてしまった。
    私も河童の世界へ行ってみたいな。

    その他、「蜃気楼」は蜃気楼の発生する描写が美しい。
    また主人公を気遣う妻の姿は、晩年の芥川の自殺願望を心配する妻文子の様子を窺い知る様で哀しい。
    そういった点では芥川は自殺未遂を繰り返し、相手の言動や世の中に傷付きながらも、常に物事の有り様を冷静にそうして忠実に観察しては作品に映し続けていた人なのだと改めて実感してしまう、そんな作品集だった。
    勿論理解しきれていない部分もまだあると思うので二回目も読んでみたい。

著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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