姫君を喰う話 宇能鴻一郎傑作短編集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101030517

感想・レビュー・書評

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  • 結構前から積んでたけど、そろそろと満を持して取り出した本書。平積みから買ったけど万人が手に取っていいのだろうか。

    表題は意表を突かれたけど妙に納得と官能と食欲を刺激される怪作。凄い筆致で驚いた。谷崎や安部公房なんかを彷彿とさせる艶かしさ。

    鯨神は芥川賞受賞作なのね。全体的には何となく陰鬱な雰囲気を受けるけど最後の鯨神との対話でパァーッと陽光がさすような。

    花魁小桜の足。小品。うん、まぁ、といったところで過分感慨もないといったところだが。文体は少しクセになってきた。次に期待。

    西洋祈りの女。ややアングラな日本映画のような情景。西洋祈りというカルトな雰囲気が深い靄をかけたように揺蕩う。幕切れの唐突さも短尺の映画感で面白い。

    ズロース挽歌。性癖を晒してるおっさんを高尚な文章で語る下世話さ。もちろん褒めてるんだけど、なんかこう同人小説のような、きな臭さを感じてノスタルジックに。

    リソペディオンの呪い。真景累ヶ淵のような因果応報なお話。作品の中では章立ても細かくテンポ良く読みやすい感じ。それこそ講談とか落語に出来そうな。

    通して言えるのは、霞んだレンズを通して非日常をしっかりとイメージ出来る素晴らしい筆致。ただ本慣れしてない人からすると少し読みにくさは感じそう。

    のちに官能小説に転じたそうなので、そっちも読んでみるのも面白いかしらね。

  • どの話も変態が出てきて面白かった。
    女性の足への強いこだわりは谷崎潤一郎ライク。
    ネットでのレビューを見て買ったが「これが読みたかったんだよ!」って作品が並んでて楽しかった。
    ちくま文庫の『猟奇文学館』シリーズだれかプレゼントしてください。

  • 収録されている短編全て、高貴な文体で土俗的な猥雑なことが語られる、かなりのインパクトと不思議な読後感を感じる短編集でした。

  • 着想はありがちだけど、
    さすが食と官能の作家、
    表題作は味わい深く読んだ。

  • 「姫君を喰う話」
    千年の時を超えて生きる虚無僧と並び、モツ焼きを喰いながら
    セックス&カニバリズム談議にふけるという話
    モツ焼きを食べるということが
    むかし愛した女を想ってするオナニーのようなものであるらしく
    それを指摘された虚無僧はどこかに消えてしまう

    「鯨神」
    明治時代初頭の長崎で
    巨大な鯨に親兄弟を殺された若き漁師が
    これに復讐をこころみる話
    復讐を果たした彼は、自らも深手を負ってしまうのだが
    死に際の夢の中で鯨と和解する
    人を人たらしめるのは物語であり
    そこを離れれば人も自然界の一部にすぎないという
    ひとつの気づきであるが
    死を目前にしなければそれを実感できないという
    物悲しさもある

    「花魁小桜の足」
    江戸時代の長崎出島
    世間知らずの花魁小桜は、天国に行けると言いくるめられ
    御禁制の基督教に入信してしまう
    天国に行くには、踏み絵を拒否して処刑されねばならない
    その日が近づくなか
    小桜は足フェチおじさんの相手を言いつけられる

    「西洋祈りの女」
    キリスト教の祈祷師が谷間の村に呼ばれるのだが
    それは子連れの美しい女であった
    彼女の出現と共に、村の若い男たちは
    なにか熱病におかされたようになってしまい
    ある惨劇をひきおこす
    消費社会のおぞましさであるとともに
    ある意味では健全さと言えるだろう
    インターネットの現代にも似たようなことはおきる

    「ズロース挽歌」
    女学生の制服
    とりわけ、スカートの内側にのぞくズロースへの憧れが
    ひとりの男を狂わせる
    持病の悪化によって死期を悟った彼は
    女学生誘拐の罪を犯すのだが
    逮捕後、獄中から小説家に手紙を出し
    やがて物語となる
    身寄りのない彼は、そのようにしか己の淋しさを癒せなかったのか

    「リソペディオンの呪い」
    とある因縁を持って生まれた侏儒の男が
    孤独な少年時代を経て、ストリップ小屋に勤めるようになるが
    結局すべてを失って
    故郷に帰ってくるという話
    運命にあらがおうと神殺しを果たしたものの
    その影響力からは逃れられやしない
    そういう悲劇である

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著者プロフィール

宇能鴻一郎(うの こういちろう)
1934年、北海道札幌市生まれ。本名鵜野広澄。家族4人で、東京、山口、福岡、満洲国(現中国東北部)撫順、長野県坂城と移り住み、満洲国奉天にて終戦を迎える。福岡県立修猷館高校から東京大学教養学部文科二類に入学。修士課程在学中の1961年、仲間たちと創刊した同人誌『螺旋』掲載の「光りの飢え」が『文學界』に転載され、これが芥川賞候補となる。次作の「鯨神」が翌年1月に芥川賞を受賞。以後おもに性を主題として新しい文学を切り開くが、文壇では正当に評価されず、1971年から徐々に女性告白体の官能小説に軸足を移した。歴史小説、ハードボイルド、推理小説でも独自の世界を築いている。
 主な著書に『密戯・不倫』『楽欲(ぎょうよく)』『痺楽』『肉の壁』『黄金姦鬼』『お菓子の家の魔女』『切腹願望』『金髪』『斬殺集団』などがある。

「2022年 『甘美な牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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