室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界 (新潮文庫 し 93-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101048314

作品紹介・あらすじ

日本人は昔から温和なんて大噓!僧侶はデスノートで武士を呪い殺し、ゲス不倫には襲撃で報復。暗殺、切腹、えげつない悪口……。私たちが思い描く「日本人像」を根底から覆す、荒々しく図太く、自由に生きる室町人たち。現代の倫理観とは程遠い中世という“異世界”を知り、常識に囚われがちな私たちの心を解放する! 「室町ブーム」の火付け役による痛快・日本史エンタメ! 対談:ヤマザキマリ

感想・レビュー・書評

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  • タイトルが良いですね!まず。
    戦国時代の前にあたる頃って、ちょうど興味が持続しないと言うかあまりパッとしない気がする。貴族と武士、それ以外は貧しい、ということくらいだった室町の知識が広がりました。

    タイトルに遜色ない奇抜な内容があります。
    切ない人身売買や、思わずおっかねーと叫びたくなるものまで、てんこ盛りです。
    力を持つ人の無理強いや、童歌のようなものにどんな意味があるのか、深掘りされていて面白い。

  • 歴史は相性が悪く、読んでいてすぐ眠くなってきてしまうが、この本は実に面白い。一見、現代の日本人からするととんでもない、室町時代の日本人がコミカルに紹介される。
    一見、と書いた。たしかに今の尺度からするととんでもないが、当時の尺度からすると当たり前の行動、合理的な、至極真っ当な考え方だったのであろう。
    日本史上の大転換点にあった室町時代の日本人の考え方や行動原理を知り、私が現代で当たり前とするものや考え方もまた絶対の当然のものではないと再確認させられる。色々な考え方の人がいて、色々な正しさがある。こういう考え方って、今の、視野狭窄とも感ぜられる世の中には大事なものなのかな、と。
    そして、一見我々からすると妙だが、根本では似たような考え方や行動をしていると知り、ご先祖様たちに親近感もおぼえる。
    長々と書いたが、ただの歴史本にあらず、世の中の見方、物の考え方について、持っておいたほうが良い「寛容さ」、相対的な視点の大事さを改めて教えてくれる一冊であった。

  • 室町あるいは中世が、庶民も武器を持つ「ハードボイルド」だったのは、強大な公権力を持たなかったがゆえ。重心が無く分かり辛い時代というイメージもその辺に理由があるが、日本中世の象徴たる荘園の権利を巡ってせめぎ合う人々や、大きさの異なる升、立場によって法(=正当性)が変わる、といったローカルルールの話など、視点をミクロにすればむしろ面白い(当人達は必死だが)エピソードが満載。れっきとした史実に基づく内容ながら、語り口が上手いので小説の様に読めるのも長所で、知られざる日本人を描いた好著。

  • 当たり前のことだけど、どんな時代にも色んな人がいたんだなぁと。こう言う話を補足的に聞きながら日本史の勉強をしてみたかったなぁ

  • 高野秀行さんとの共著、辺境の怪書なんとかいう本がとても楽しく読み進められたのでこちらも読んでみた。
    私の中では鎌倉、室町時代から戦国時代にかけてのイメージといえば、ガチャガチャしてて登場人物多くてとにかくガラ悪いって感じでした。
    そのあたりの時代を研究してらっしゃるこの本の著者、清水克行さん。
    結果私の予想けっこう当たってた。
    教科書で教えてくれることなんて、その時代活躍した武将の名前だけ、大きな出来事くらいでそれぞれの時代のほんっっの一部しか自分は知らない。
    室町時代では農民や商人がけっこう力持ってて刀持ってたこと、大義名分かざして武士よりも立場が上になり、ええように動かしてたくらいだったこと。今の住所でいう、どこどこ区くらいの小さな単位同士での血みどろの争いがご近所同士であったこと。身内やどこ出身ということのようなごく小さな横の繋がりが最優先なところ。
    ここかー、高野さんと話してたアフリカ諸国のなかでの民族主義と似ているところって。
    自分の知ってる価値観や情報とは全く違う価値観が過去の日本にあり、現在でも世界中で自分の知らない価値観や立場や単位は無数にあること。
    本や音楽に触れ、先入観を持たず誰かの話を聞いて、自分自身を常にアップデートしてゆける柔らか頭、ずっと持ち続けたい。

  • 第1部 僧侶も農民も! 荒ぶる中世人
    第1話 悪口のはなし
    おまえのカアちゃん、でべそ
    第2話 山賊・海賊のはなし
    びわ湖無差別殺傷事件
    第3話 職業意識のはなし
    無敵の桶屋
    第4話 ムラのはなし
    “隠れ里”の一五〇年戦争
    第2部 細かくて大らかな中世人
    第5話 枡のはなし
    みんなちがって、みんないい
    第6話 年号のはなし
    改元フィーバー、列島を揺るがす
    第7話 人身売買のはなし
    餓身を助からんがため……
    第8話 国家のはなし
    ディストピアか、ユートピアか?
    第3部 中世人、その愛のかたち
    第9話 婚姻のはなし
    ゲス不倫の対処法
    第10話 人質のはなし
    命より大切なもの
    第11話 切腹のはなし
    アイツだけは許さない
    第12話 落書きのはなし
    信仰のエクスタシー
    第4部 過激に信じる中世人
    第13話 呪いのはなし
    リアル デスノート
    第14話 所有のはなし
    アンダー・ザ・レインボー
    第15話 荘園のはなし
    ケガレ・クラスター
    第16話 合理主義のはなし
    神々のたそがれ
    余話 室町ピカレスク
    ある地侍の生涯
    おわりに
    歴史は民衆によって作られる
    対談 ヤマザキマリ×清水克行
    参考文献

  • 日本人やべーじゃん、と思ってしまう楽しさだった。

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著者プロフィール

清水克行(しみず・かつゆき)
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。 主な著書に『喧嘩両成敗の誕生』(講談社、2006年)、『戦国大名と分国法』(岩波書店、2018年)、『室町社会史論』(同、2021年)などがある。

「2022年 『村と民衆の戦国時代史 藤木久志の歴史学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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