檸檬 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101096018

感想・レビュー・書評

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  • 著名な作品で名の知られているものだが、読むのは初めてである。檸檬は短い話であるがその世界観は色濃く、檸檬の様に瑞々しく、酸っぱい青春の思い出を感じさせるものである。瑞々しいものにダークな灰色が混じり合って、ヒリヒリとした思い出が加わり、段々と違う味を出していき、また別の青春の甘みと苦味が加わり、時には絶望感を味わう場面もあり、それらが徐々に研ぎ澄まさていくような感じであった。青春文学の感受性豊かな物語だなと感じる。

  • 改版。深入りしそうだ。

  • 病に倒れ31歳でこの世を去ることになる著者。世界の醜さや美しさをより深く感じることができる。

  •  短篇集です。

     「桜の樹の下には」という一篇では、屍体を栄養にして妖しく美しい花を咲かせる桜を作者は夢想しています。

     作者の梶井基次郎は、結核により三十一歳の若さで亡くなっています。この短篇集は、死と隣り合わせの日々の中で、残された命を燃やし尽くすようにして書かれたもののようです。「桜の樹の下には」で作者が描いた“死を栄養にして咲いた花” ── それはこの短篇集そのもののことであるような気がしました。
     
     大部分の作品はストーリーよりも心象風景の描写を中心としており、小説というよりも散文詩に近い気がしましたが、「ある崖上の感情」は、物語としても上手く出来た作品だと思いました。

     「Kの昇天」、「冬の蠅」にも心に響くものを感じました。そして、表題作「檸檬」は不思議な味わいでした。

     ただ、他の多くの作品は、じっくり読んでも内容が真っ直ぐには頭に入って来ませんでした。独特で微妙な感情に、戸惑いを感じることもありました。ただでさえ鋭い感受性を死の予感によって研ぎ澄まされた作者の心の動きを、そうでない私のような者が本当に理解することは、あるいは難しいのかもしれません。

  • 三ページほどの掌編だが、『桜の樹の下には』が好き。語り口と相まって、声に出して読みたくなる感じ。

  • 2017年11月8日に紹介されました!

  • 巻末解説に書かれていた「意欲ある絶望」という表現が、私の梶井作品に対する印象に一番近い物だと思いました。
    どの作品も、肺病病みの青年が自分の先に待ち受けている「死」に向かって、激しく抵抗するわけでもなく諦めて達観するわけでもなく、ただひたすらに前を向き、自分の命をみつめ心情を吐露する。どれも読み終わった後、マイナス感情だけではない、何かプラスのモノが残る不思議な読後感。
    また、風景描写の美しさと、そこから主人公への心情吐露へと繋げていく文章の巧みさには脱帽。風景までひっくるめて心象表現になっているといってもいい。どれも素晴らしい小説でした。

  • 「檸檬」が好きで、買ってみました。
    好きなものもあれば、「わからんわ!」と投げたくなるものも多く…笑
    本・文章を読む、というよりは美術館で作品を見たり、スケッチしているところを見たり、そんなイメージ。
    作家と呼ぶより芸術家と呼ぶ方がしっくり。

  • 《収録》
    ・檸檬
    ・城のある町にて
    ・泥濘
    ・路上
    ・橡の花
    ・過古
    ・雪後
    ・ある心の風景
    ・Kの昇天
    ・冬の日
    ・桜の樹の下には
    ・器楽的幻覚
    ・蒼穹
    ・筧の話
    ・冬の蠅
    ・ある崖上の感情
    ・愛撫
    ・闇の絵巻
    ・交尾
    ・のんきな患者

    失われつつある日本語表現がいっぱい詰まっていて、国語好きとしては面白かったです
    これ、現代語で言えば「寝不足で深夜テンション」だよなー、とか。
    そういう読み方だと、時間かかって展開遅くて読むの飽きてしまいがちだけど。

    「桜の樹の下には」は、「○○が埋まってる」と続くのだけれど、このフレーズってここが発生源だったのかな?

    「Kの昇天」と「路上」が好きかな

  • Kの昇天/冬の蠅/ある崖上の感情
    頽廃の中の瑞々しさを感じました。

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著者プロフィール

明治34年(1901年)大阪府生まれ。同人誌「青空」で活動するが、少年時代からの肺結核が悪化。初めての創作集『檸檬』刊行の翌年、31歳の若さで郷里大阪にて逝去した。「乙女の本棚」シリーズでは本作のほかに、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)がある。

「2021年 『Kの昇天』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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