- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101096018
感想・レビュー・書評
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肺に病をかかえ、何か憂鬱なものに心を押しつぶされそうになる私は、追い立てられるように、街から街へと彷徨い歩く。果物屋で目にとまった檸檬を手に入れると、その冷たさと香りに心が弾んだ私は、思いがけない行動に出る。今もなお色褪せることのない、梶井基次郎の名作『檸檬』。
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皮相の静謐の中に混在する内奥の激しさや退廃。この一見相反するものが一つになり、筆者の艶麗な文体によって解き放たれたとき、これほどまでに美しい反応が起こるのかと驚嘆した。筆者の言いたいことはどの短編を読んでも一貫していることが分かってくる。青春の中の多感さと病による暗鬱さがあいまって目に写る全てのものに悲哀が伴ってしまう。それは死に対する曖昧な恐怖と共に生きた筆者だからであり、そんな筆者の青春を綴った作品はどれも重々しく短編といえど気が滅入り読了後には疲労感が残る。しかし字を追っていくとその風景描写というのは誰もが美しいと口にはせずとも感じたことがあるようなものが多い。それは若者にありがちな退屈さや過剰な妄想や逃走欲故にしか拝むことのできないものである。普通に生きている我々一般人はこのようなものを言語化したことなどないし、ましてやあまりにも曖昧な故にできる気がしない。しかし作者の達観することにたけた才能はそれを巧みにやり遂げている。筆者はこのような若者の鬱憤を筆を握ることで静かに晴らしているようで、これが私にはとても美しく感じた。私自身、若者といわれる年齢であるが、この時に読めて良かった一冊だと心から感じた。また、筆者の病故の死と隣り合わせの非愛は度々出てくるが、時々「生」をテーマとした、生きることへの恍惚を描くようなものもあり、その漂う悲壮感から、筆者は苦しみながらも絶望してはいなかったのかもしれないとも感じた。「静かに力強い」、そんな一冊であると言える。
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よくわかんなかった…なんでかな…
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詩のような短編で、情景が浮かびやすい
美しいと言われるのもめっちゃわかる
けど共感できることはあんまりなかったし、めっちゃ眠たくなった。
読むのに苦労したけど、読んで良かったとは思う -
文体が美しく、この本の状況を想像してる時はいつも油絵で書かれたような情景が浮かんだ。
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すべての描写が美しくて、その感受性に泣いてしまった
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全短編、陰鬱で面白みがなく読み進めるのも感想を書くのも苦労した。
確かに「檸檬」はこの中では郡を抜いている。
「泥濘」も心の琴線にふれた。
全編通してハッと息を呑むような美しい色彩を感じる文章がところどころにある。
そういう一文は素晴らしいのだが、物語としては起承転結もなく捉えどころもない。
何度も文字の上を目が滑って頭に入らず、また読み返して…の繰り返しが多かった。
共感する部分はあっても、読みにくさが勝ってしまった。
文学としての素晴らしさと読書としてのつまらなさを併せ持った本だった。
檸檬 ★4
城のある町にて ★0
泥濘 ★4
路上 ★1.5
橡の花ー或る私信ー ★1
過古 ★1
雪後 ★1.5
ある心の風景 ★1.5
Kの昇天ー或いはKの溺死 ★3.5
冬の日 ★1
桜の樹の下には ★3
器楽的幻覚 ★1
蒼穹 ★1
筧の話 ★2
冬の蠅 ★3
ある崖上の感情 ★3.5
愛撫 ★2.5
闇の絵巻 ★1
交尾 ★1.5
のんきな患者 ★1 -
学生の頃 教科書で深く学びました。
色の濃い 熱い温度を持った お話 でした。