- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101110011
感想・レビュー・書評
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阿川弘之、デビュー作。
「雲の墓標」の衝撃と感動に、こちらへとさかのぼって読んだ。
3月から読み始めて、今!
・・・途中、何度も中断したのに、よく投げなかったものよ・・・
それもこれも、筆力、テーマの力。
学徒動員され、内地での暗号解読業を経て、中国へ・・・
そして終戦。
故郷広島の悲劇。
阿川氏は主人公と同じく、広島で聞き書きを重ねたのだろう。
当事者故にわかることも多々ある。
ちょうど広島サミットにあわせ、読み終わった形。
今すぐの結果はでないだろうが・・・
ただの「貸座敷」で終わらないサミットであってほしい、と
読後、説に願う。
ただし、小説は、解説の猪木直樹氏がいうように、
青春小説。原爆小説ではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「戦争小説を読むんだ!」との強い覚悟でページを進めていたけれど、後方部隊配属の学徒出身兵が主人公で、全編を通して激しい戦闘描写はなく、大学で青春を謳歌していた学生が戦争に駆り出された体験談が淡々と描写されていた。 それでも、原爆の段になると、過激な描写はないものの、その無慈悲な兵器の恐ろしさに身が震えた。 避けえない戦いもあるだろうけど、殺戮で決着をつける戦争は極限まで避けなければならない。 それを戦って、又は耐え抜いてこられた先人に感謝したい。
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「阿川弘之」を代表する作品のひとつで戦争文学の傑作『春の城』を読みました。
『蛙の子は蛙の子 ― 父と娘の往復書簡』、『人やさき犬やさき―続・葭の髄から』に続き「阿川弘之」作品です。
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学徒出陣、基地での激務と空襲、マリアナ沖海戦、父や恩師、そして恋人を奪った広島の原爆の惨状…‥。
第二次大戦に遭遇した一人の青年の友情と恋愛、師弟愛と肉親愛とを、入念な筆で情趣ゆたかに描いた著者の処女長篇。
激動の時代を生きながらなお、溌剌たる若い生命の感受性、健康で素直な生活感情と故国への愛、掛替えなき青春という時の、一つの姿を浮き彫りにする。
読売文学賞受賞。
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「阿川弘之」の処女長篇で1952年(昭和27年)に第4回読売文学賞を受賞した作品、、、
著者自身が、1942年(昭和17年)9月海軍予備学生として海軍に入隊し、中国語ができたため、特務班の中でも対中国の諜報作業担当を経て、中国で終戦を迎えた経験をしているだけに、その青春時代を投影した自伝的小説でもあるようですね。
年末年始に読んだ『雲の墓標』と同様に、主人公の青年「小畑耕二」の大学生活~海軍入隊~従軍~終戦~引揚げについては、淡々とした筆致で描かれていますが、それが逆にリアル感を醸し出していて、作品の中に引き込まれて行く感じがしました。
「耕二」の出身地広島(実家は白島の設定のようですね)を舞台にした場面も多く、懐かしい地名や建物、言葉(広島弁)が出てくるので、親近感を強く感じて、感情移入しながら読めましたね。
本作品は「耕二」を中心に描かれているものの、、、
彼の両親、近所に住んでいて幼い頃からの付き合いがある4歳年上の医学生(後に軍医として従軍)「伊吹幸雄」、その妹で「耕二」に思いを寄せる「智恵子」、学生時代からの友人等々… 複数の人物の立場から第二次大戦への関わりが描かれており、直接、戦闘の最前線や内地での都市爆撃や原爆を経験していない「耕二」よりも、彼等や彼女等の置かれた状況の方が凄惨に描かれていました。
友人「久木」が戦死するマリアナ沖海戦の惨状にも心を痛めましたが、、、
もっと心に響いたのは、第三章の後半40ページを割いて描かれている広島の原爆の惨状… 広島出身者として複雑な思いがあり、読み飛ばしたいけど、目を背けられない感じで、半分自虐的な気持ちになりながら読み進めました。
絶対に忘れちゃいけない歴史ですからね… 逃げずに向き合いながら読みましたよ。
そして、『雲の墓標』の読了後と同様に、静かにじんわりと、そして少しずつだけど確実に感動が込み上げてくる作品でした。
青春文学、戦争文学として、素晴らしい作品なんだと思いますが、気持ちが入り過ぎちゃって、ちょっと気持ちがしんどくなりましたね。
そうそう、題名の『春の城』って鯉城(広島城)のことなんですねぇ、、、
「耕二」は、どんな思いで城跡を見たんだろうか… 色んな思いが頭を過ぎります。 -
第4回読売文学賞
著者:阿川弘之(1920-、広島市、小説家)
解説:猪瀬直樹(1946-、長野県、小説家) -
2016.11.9
阿川弘之の自伝的小説。戦争の中、予備学生の心の葛藤が精緻に描写されており、とても面白い。広島の原爆、智恵子の死はとても胸が痛んだ。
春の城にこめられた意味。それでも日本は復興するという思いからか。 -
舞台は戦前の広島。主人公の小畑耕二くんは、文学部の学生であります。年長の友人である伊吹幸雄くんの妹・智恵子さんには好意を抱いてゐながら、結婚話を断つてしまふ。もつたいない。
戦時下が若者の学習意欲を殺ぐ。徴兵のため、卒業も早まるのであります。国のために、この戦に命を捧げてもいい、むしろ光栄であるとの意識が高まつてゆくのでした。
耕二くんの場合は、東京通信隊の軍令部特務班にて、暗号解読の仕事をすることになります。
しかし戦況は悪化する一方で、遂に広島には米軍の新型爆弾が投下されます。智恵子さんのその後は、いぢらしいの一言であります。ああ...
戦禍に見舞はれながらも、若者らしい瑞瑞しさを失ふことなく、時代と向き合ふ登場人物の一人一人がとても好ましい。著者の初めての長篇作品ださうですが、その後の阿川作品に比しても引けをとらないくらゐ完成度は高いと申せませう。
夜も更けましたので、寝ることにしませう。晩安大家。
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自伝小説なのだろう。生き生きとした若者の感性が随所にみられる。原爆の描写は細かく凄惨。12.11.3