零式戦闘機 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117065

感想・レビュー・書評

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  • 優秀な戦闘機零戦を作った日本が、その優秀さゆえに戦争の深みにはまっていき、そしてカミカゼ特攻や自爆まがいの終焉を迎える。最終部分(沖縄戦)は読み進むほどに気持ちがダークになってくる。

  • (2008.12.17読了)(2008.09.13購入)
    人には、潜在的にコレクターの癖があるようです。9月に「戦艦武蔵」を読んだら、姉妹編的な「零式戦闘機」があることがわかったので、探して購入しました。
    飛行機や戦闘機の知識はないので、どのような飛行機なのかはわかりませんが、太平洋戦争において、活躍した戦闘機であったことは聞いています。
    この本は、零戦の開発の様子、実戦での活躍の様子、そして、ほとんど無傷の零戦がアメリカの手に渡り、対抗手段が考案されることにより、戦果が上がらなくなり、特攻へと変わっていく過程が描かれています。
    「戦艦武蔵」において、棕櫚の果たした役割は、「零式戦闘機」では、牛車というところでしょうか?

    名古屋市港区大江町の海岸埋立地区にある三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所で戦闘機が主翼と胴体前部、水平尾翼の付いた胴体後部とエンジン部の二つに分けられた形で2台の牛車に積み込まれ24時間かけて48キロ離れた岐阜県各務原飛行場に運ばれる。
    飛行機を組み立てる工場に隣接して飛行場がないためにやらないといけない作業なのだけれど、生産量が増えるとネックになる。トラックや馬車での運搬を試してみたが道が悪く激しい震動で、機体が傷ついてしまう。途中の道幅が狭く軒や看板に接触して傷つけてしまう、ということで、ゆっくり移動する牛車になったということです。(7頁)

    ●1937年の飛行記録(28頁)
    1937年4月6日、朝日新聞社の「神風」号が、立川飛行場を出発、イギリスのロンドンに向かった。(試験飛行では、高度4千メートルで時速480キロを記録。)
    立川ロンドン間15,357キロを94時間17分56秒で翔破、世界新記録を樹立した。
    ●新機種が生まれるまで(32頁)
    飛行機の新機種が生まれるまでには、設計から試作までにかなりの月日を要し、さらに試験飛行を頻繁に行って改良に改良を重ね実用機として使用できるまでには、3年以上の歳月を必要とするのである。
    ●十二試艦上戦闘機
    1937年(昭和12年)5月下旬に十二試艦上戦闘機計画要求書案が届いた。(29頁)
    十二試は、昭和12年度試作という意味です。
    1937年10月5日、正式の十二試艦上戦闘機計画要求書が、海軍航空本部から三菱重工株式会社、中島飛行機株式会社に交付された。(37頁)
    1938年4月6日、実際の機と同じ大きさの木型が完成した。(51頁)
    4月27日、海軍航空関係者による第一次木型審査が行われ、修正個所の指摘が100近くに達した頃、審査は一段落した。7月11日、第二次木型審査が行われ、第一次審査の折に修正を指示された部分の確認が行われた。(60頁)
    12月26日から三日間にわたって第一次実物構造審査が海軍技術関係者立会いのもとに行われた。1939年2月下旬、第二次実物構造審査が行われた。
    1939年3月16日、十二試艦上戦闘機第一号機は名古屋航空機製作所試作工場において完成した。(78頁)翌日、第一号機の完成検査が実施された。機体の外形寸度の測定、重量の測定が行われた。機の重量は、1,565.9キロであった。
    4月1日、各務原飛行場でテスト飛行が行われた。(83頁)地上滑走とジャンプ飛行まで。
    4月6日、数百メートルの高度を32分間飛行し続けて無事着陸した。
    4月14日、脚の引込め飛行を、初めて実施。約2時間30分上空を飛び続け脚を引き出し無事滑走路に着陸した。(90頁)
    4月25日からは、2,331キロの正規満載状態ににし、性能および操縦性テストを開始した。最高時速約490キロを記録した。要求時速500キロにあと10キロに接近した。
    7月6日、官試乗が行われた。8月23日、第二回目の官試乗が実施された。
    9月14日、第一号機の領収が行われた。要求書を受けてから約二カ年で、第一号機は完成、領収された。
    1940年3月11日、第二号機が急降下テスト中、空中分解をおこし、パイロットは落下傘で脱出したかにみえたが、空中で体が落下傘から離れ、墜落死を遂げた。(103頁)
    7月末、十二試艦上戦闘機は、すべての問題点が解決したと認められ、海軍の制式戦闘機として採用された。そして、その年の紀元2600年を記念して、その末尾の〇をとって、零式艦上戦闘機11型と命名された。(120頁)
    (2008年12月23日・記)

  • 沒想到高科技的零戰,居然是用牛馬拉到飛機場組裝!這個有些諷刺的意象,令我震撼。

  • 8/27
    8月に読了した。終戦から65年も経った。
    技術者たちのの活躍ぶりがすばらしい!
    軍首脳のものたちのアナクロぶりが悲しい。
    太平洋戦争の犠牲者は300万人、、、!悲壮。
    ゼロ戦の活躍と変遷は太平洋戦争の象徴だ。
    若い人たちに読んでほしい。

  • 前半は、ものづくりのプロセス(顧客要求、基本設計、詳細設計、製作、試験、納入、アフタフォローなど)が淡々と記されていて面白い。基本は変わらないんだな。ゼロ戦完成とともに、次第に話題は戦争に移り、太平洋戦争勃発から終戦までの道のりが語られていく。読んでいてだんだんつらくなっていくが、淡々とした記述なのでテンポよく読める。ゼロ戦を通して戦争の全体像が見えてくる。ところで、工場で製作されたゼロ戦を飛行場まで輸送する必要があるわけだが、輸送にはなんと牛車が使用されていた。初めて知った。その後、輸送が改善されたわけだが、改善方法は馬車であった。これらのエピソードは、冒頭から最後まで、随所に登場するのだが、象徴的である。

  • 20年ぶりくらいに再読。吉村昭さんにはまっていた高校時代に初読。今年の暑い夏、実家の本箱に当時の文庫を発見し、茶色く変色したページをぱらぱらめくっているうちに、読破してしまいました。牛に曳かれた「零戦」は、印象的です。目的を達成させるための道具は、その機能を極限まで高めていくと、なぜだかとても美しく見えます。その目的がどんなものであっても。できることならば、目的が後世から非難されないものであることを願わずにはおられません。

  • 苦労の末開発された高性能の戦闘機。
    神風特攻隊もこれに爆弾をつけて敵陣に突っ込んでいたとは・・・
    戦争は無意味以外の何物でもないが、
    人々の情熱があのような世情で、無から
    これほどのものを作り上げてしまうことに驚きを感じた。

  • 綿密な取材を基づく圧倒的な資料を基に、歴史的事実、業績を緻密な描写で描くことで定評がある吉村昭氏の作品。本家プロジェクトXとでもいおうか、ものづくり大国日本を支えた、業績は一流だが知名度はさしてないような男たちを取り上げた小説が多い。もちろん、NHKのようなずさんな取材や、恣意的なフィクションはない。  

      内容は詳しくは書かないが、著者本人のあとがきは紹介しよう。
    「零式戦闘機の誕生から末路までの経過をたどることは、日本の行った戦争の姿そのものをたどることになるという確信が私に筆をとらせた」
    この小説は、まさに零戦というひとつの兵器を通してかの戦争を描いた小説である。

                このような、先の戦争に関する小説を読むとき、単に、戦争は悪い、日本軍は無謀だったのだ、などという感想で終わっては小学生以下である。
     戦争は単純に「悪いもの」以外何ものでもないのか、また、なぜあのような悲惨な戦争をしなければならなかったのか、なぜ若者たちは自ら進んで特攻の露として散っていったのか、といったことをよく考える必要がある。それを考えるときに必要なのは、現在の価値観ではなく、その当時の価値観をもって考えることであるし、さらにいえば、当時に至る近代の世界史の流れをふまえた上で、当時の日本を取り巻く世界情勢について正しく知ることも必要である。

                               戦後の日本人が顔をそむけ続けてきた、先の大戦の功罪について、あらためて考えるきっかけとなってほしい、そのような小説である。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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