桜田門外ノ変(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101117331

感想・レビュー・書評

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  • 歴史の教科書にも必ず載っている「桜田門外の変」という事件は、年号や事実だけが知られているが意外に、その背景までは理解されていないように思う。その背景とは、水戸藩による尊皇攘夷思想、そして当時の藩主であった水戸斉昭による幕政改革に対する反感という伏線があり、さらに将軍家定の世継問題の動きに対して、彦根藩主井伊直弼を筆頭とする紀州派と斉昭を中心とした一橋派の対立という構図である。

    しかし、著者はそうした政治的背景のみならず、彦根藩と水戸藩の間で起きた水上港運における積年のいさかいなどの描写も含め、特に水戸藩側からみた視点での怨恨が、読者にとってのそれであるような錯覚を覚えさせるかの如く描いている。そして安政の大獄が実施され水戸藩関係者がことごとく弾圧、処刑されるに至ると、読者はもう我慢ならぬと思わざるを得ない感情を、客観的ながらも共有するのである。

    上巻は、そしていよいよ井伊直弼襲撃の実行を決意するところで終わる。

  • 水戸藩をメインに描いた小説は初めて読んだかも。
    幕末モノはどうしても薩摩贔屓になってしまうので新鮮でした。

    同じ徳川同士でこうも憎しみが深まるとは。
    水戸藩の有為の人材は全て死んだとは読んだことあるけど、今作を読むと理解できた。
    色々な業の深さを考えさせられました。

    桜田門外の襲撃の描写が秀逸。
    見事に想像できる。

    ちょっと小説としてはバランスが悪い気もするけど、読んで損がない作品でした。

  • 同じ筆者の生麦事件と合わせて読むのが良いです。桜田門外の変では、尊王攘夷に燃える水戸藩の熱量を、生麦事件では尊王攘夷が不可能と知った薩摩藩や長州藩の視点が描かれてます。

  • 桜田門外の変の指揮役 関鉄之助を主役にした歴史小説。登場人物が多すぎて混乱するが、井伊直弼暗殺への流れがリアルに描写されていて非常に面白かった。

  • タイトルの通り、桜田門外の変を描く。時勢の流れや井伊の幕政に対する憤りなど、心理描写が秀逸。読みながら、共に悲憤し、不安になり、動揺する。
    (上)は、変が終わった辺りまで。

  • 黒船来航、迫られる開国、国の存亡の危機!非常事態を受けて就任した井伊大老。甚だしい専制政治。雄藩の大名の意見も無視。御三家ですら弾圧する。彦根藩としての私怨も手伝い窮地に立たされる水戸藩。続きは下巻へ。・・複数名の老中が大名の意見を聞きながら執政する。江戸時代も合議制が機能していた。民主主義に移行し易い土壌があった。早急な判断が迫られる緊急時、意見を集約する時間がない?だから独断専行?反対意見に耳を傾けずに正しい判断ができるのか。コロナ禍、緊急事態条項の必要性が叫ばれる中、よく考えておく必要がある。

  • 教科書の中では
    ゴシックの太字にすぎない
    「桜田門外の変」
    を こんなにも
    興味深く、子細に読み解かせてもらえる
    その喜びを つくづく感じます

    他の人がどういおうと
    いゃあ これは 読み応えあり!

  • 吉村昭、天才。

  • 感情移入を拒否するような淡々とした文章がちょっと退屈に感じる部分もあるが、価値観が全く異なる江戸時代の人間の感情を、現代の人に響くように描く事は無理なのかもしれなくて、そこに拘る事でわざとらしさが付きまとうのであれば、このような距離感のある文章だっていいのではないか、と思って読み進めた。

    この距離感のせいか、全体に対する記述内容の割合にも表れていると思うけど、主人公の考えや気持ちという事よりも、場所を移動する事に対する重みが今と全然違うなと思った。目的を達成するための移動に時間と体力がかかっている。私だったら耐えられない。そんな通信手段・移動手段が存在しない中で、しかも蟄居させられている主犯格が、急進派の水戸藩士をコントロールして、天皇の勅書を幕府に返却する事を阻止するくだりは、本当にすごいなと思った。

  • 面白い!水戸藩が井伊直弼に追い詰められていく様子が克明に描かれており、良い。学校の歴史で習わないんだもんなぁ。安政の大獄って恐ろしい。

著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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