人生の親戚 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126173

作品紹介・あらすじ

人生の途上で堪えがたい悲しみに直面したとき、人はその事実をいかに受けとめ、その後の人生をどう生き得るか。肉体に障害を抱えた長男と精神に障害をもつ次男、二人の息子を同時に自殺によって失った女性が、その悲惨を真正面から引き受け、苦しみの果てにたどりついた生の地平は。魂の癒しを探り、生きることへの励ましに満ちた感動的な長編小説。第一回伊藤整文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 息子二人を自殺で失った女性の半生。
    同時期に書かれた「恢復する家族」と共通する表現が多く、筋としても苦難の受容と克服がテーマになっている。
    手紙で語らせるスタイルが印象的。
    引用はイエーツ、バルザック、フラナリー・オコナー。
    ムーサン、サッチャン、アンクル・サム、ミツオなど、相変わらずネーミングセンスが好み。

  • 生きる上で抱える大きな悲しみ・痛み・苦しみ。それらを忘れる、捨てる、ましてやなかったことにすることはできない。その当たり前の現実について、乗り越えるでもない、それらぐるみ生きていくという力強い勇気をもらえる一冊。悲しいことが必ず訪れる人生に、光をもたらしてくれる温かい一冊。

  • それぞれ知恵と身体に障害を持った兄弟を自殺で亡くした母の生きざまが勇気を与えてくれる。2015.6.6

  • 大江健三郎さんらしからぬ面白さだ。まり恵さんは「本当の回心」出来たのだろうか?熱望しても叶わなかっただろう。ヤッテも・ヤラなむてもたいしたちがいはない。まり恵さんが瀬戸内寂聴とダブッて凄まじい。

  • この時期の作品を読むのは初めてだが、ここには難解さや、あるいは一時期の大江作品にあった神話的イメージは影を潜めている。一見したところでは、私小説風に語られているが、これはやはりこうした手法のフィクションなのだろう。小説の後半では「イエスの箱舟」がモチーフとなっていることからもそう思うのだが。作中で繰り返しアレとして語られるムーサンと道夫の事件は、なんとも痛ましい。それをを生涯抱え続けた倉木まり恵の造形は実に鮮やかにその像を結ぶ。また、最後で明らかになる表題の意味も深い。

  • 自分の心の壮絶な傷を受け入れて生きていこうとするヒロインに読者も何らかの癒しを感じるはず…

  • 終始読みにくさを感じた。宗教的な知識が無いためかもしれない。理解するには何度かか再読する必要を感じた。

  • 知能の発達の遅れた子供にも自殺についての認識があり、それは決して的外れのものではない。
    今を生きているだけで、その濃密さを感じることができれば、それにこしたことはありません。
    現に生きている今に、それらの今を加えて、時を濃密にする。
    それが瞑想のシステム。

  • 3回くらい読み返した。読めば読むほど面白いかなりスルメな作品

  • お-9-17

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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