コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181035

感想・レビュー・書評

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  • 【概略】
     コンスタンティノープル、ビザンツ帝国の首都がその一千年の灯を消すこととなったのが1453年、オスマン帝国による侵攻である。当時のオスマン帝国のスルタン・マホメッド2世は、いかにしてコンスタンティノープルを陥落させたか。おおいなる歴史の転換点をオスマン帝国側・東ローマ帝国側の双方から物語として紡ぐ。

    2024年05月02日 読了
    【書評】
     イスタンブール滞在中に読了しておきたくて旅のお供に連れてきた。本当は(旅程ではチャナッカレからイスタンブールへ移動する)5月1日までに読み終えて、本書内の雰囲気をイスタンブールを散策しながら味わいたかったのだけど、2つの誤算があったよ。一つは読み終えることができなかったこと、そしてもう一つはイスタンブールの中心部がメーデーによって各種交通機関が閉鎖され、散策どころではなかった・・・というよりもチャナッカレからイスタンブールへの高速バスのターミナルからホテルにチェックインするまでに6時間近くかかってしまったという。喜餅の(イスタンブールを好きという気持ちが)陥落するところだったという。
     さてさて本書のお話。高校で世界史を専攻していたけれど、実はそんなに詳しくないのがこの辺りの出来事。人種・宗教 etc. が複雑に絡み合ってる「ように見える」から、無機質に必死に暗記したイメージなのだよね。やっぱりストーリーテリングとして読み進めると、楽しいし、なんというか勝手に人物像を思い描くことができるよね。
     マホメット2世(メフメト2世)の雰囲気なんて、織田信長を重ねてしまったよ。若いながらに部下を統率、しかもその統率の仕方が圧力というか威厳というか・・・どちらかというと部下の背筋がシュッとしちゃうような。そして戦略についての思考の幅広さ、使えるアイデアは人種や背景など関係なく使い、人物を登用するあたりなど、もろに織田信長!なんて思いながら読み進めたね。
     かたやビザンツ帝国、ローマ教会のカトリック、そしてギリシア正教という2つの大きな宗教の思惑、そしてビザンツ帝国の属国(という言い方が正しいのかわからないけれど)の諸事情が複雑に絡み合って、皇帝の思惑と上手に重ならないのがなんとも大国の終末状況だよね。歴史は繰り返されるというか。コンスタンティノープルを陥落したオスマン帝国もまたトルコ共和国になる過程において、まるで櫛の歯が欠けるように・・・ね。
     気性はともかくとして、肩書きや人種、背景といったものとは別に、その人物が持つ特性やアイデアを色眼鏡で見ずに取り入れるというスタイルは本当に意識したいし、逆にこの現代こそそういったマインドは重要なのではないかなと思う。特定の人種におもねることなく、また逆に特定の人種にたいして鷹揚にかまえることなく。
     幸いにしてトルコへまたお邪魔することができそうな雰囲気なのだよね。今度はメーデーはしっかり避けて、この歴史あふれるイスタンブールという街を(しっかりと予習したうえで)楽しみたいね。
     楽しみが増えました。

  • 中学生の頃、創作歴史ドラマとしてわくわくしながら読みました。
    白刃を振りかざして敵陣に消えていったコンスタンティノス11世の最期がドラマチックで忘れられない場面です。

  • 登場人物が次々紹介されて覚えられない…諦めて読み進めたけど、主要人物はすぐ覚えられるし、誰か思い出せない人が時々出てきても、それほど支障はありません。
    宗教や民族や帝国や文明…知識もないし理解できなくて苦手意識があったけど、登場人物のそれぞれの立場の感情がわかって面白く読めた。

  • 「人は常に、自らの信仰か自らの祖国か、それとも自らの家族か自らの主君のためかに、死を甘んじて受ける覚悟がなければならない。ところが、今やわれわれは、これらすべてのために、死を覚悟しなければならない事態を迎えている、わたしも、民と運命をともにする覚悟だ」

    2021/4/29読了
    トルコの大軍の前に、絶望的なまでに孤立無援となったコンスタンティノープルを守る、皇帝コンスタンティヌス11世の悲壮な言葉。

  • 1000年の歴史も滅びる時はこんなにも儚い。

  • 高校生の頃に初めて読みました。
    歴史に疎い私でも読みやすかったです。
    読み終わったあと、都市の終わりと時代の転換点を目撃したような気持ちになり、少し切なくなった。

  • コンスタンティノープルの陥落と東ローマ帝国の滅亡を描いた歴史小説。
    陥落までの短い期間を戦争映画のように描いた作品。
    自分の好みではなかった。

  • 再即位したムラト2世VSメフメト2世、ハリル・パシャに対抗するザガノス・パシャ、コンスタンティノープル攻略戦の背後で権謀するハリル・パシャ、苦難の末に完成し火を吹くウルバンの巨砲、艦隊の山越えの責任者の苦悩、自ら死地に赴くコンスタンティノス11世、等々の熱い戦史小説と勝手に思い込んで購入。
    本書籍はそうではなく、当時の人々の記録を淡々と記述した物語です。

  • 歴史の教科書なら、「1453年マホメッド二世、コンスタンティノープルを陥落させる」だけで終わりそうだけど、実はもちろん、それぞれの立場の人間が、いろんな思いや主義を持って、大騒ぎしていたんだなあ、って、しみじみ思った。面白かった。そして、またまた、この時代も、王様の愛人は美少年(^-^)

  • 現イスタンブルであるコンスタンティノープルというビザンツ帝国の首都が、The magnificent(壮麗王)と呼ばれるスルタン、スレイマンによって、オスマン帝国の手中に落ちる様子を、ヴェネチアやジェノヴァ等含めそれぞれのリーダーのキャラクター等にも触れながらまとめられた歴史エッセイ。

    塩野七生さんは、歴史的資料を集めて調べて、事実に基づきながらも生き生きと歴史を描いてくれる人だと思う。そして最もイタリアに詳しい方なので少しヨーロッパの目線が入ったトルコへの見方に触れられて個人的には新鮮で面白い。

    ビザンツ皇帝とオスマン帝国皇帝の性格や戦略の違いなどが対照的に描かれていて、とても面白かった。本当にこうも違ったのだろうか?

    また、蛇だが、現トルコ共和国は認めたくないのだろうとは思うが、宮廷内での男色などにも触れられていて、日本も含めどこでも昔から同性愛や同性での肉体関係はあるのだと興味深かった。

    やはりイスタンブルには歴史とロマンがある。
    トルコ旅行に行く人は読むと旧市街観光を倍楽しめるのでは。

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