ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉 (新潮文庫 (し-12-83))
- 新潮社 (2008年8月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181837
感想・レビュー・書評
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この巻では、三世紀前半の一部と後半前半。
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アレクサンデル・セヴェルスがライン河を超えて侵入してきた蛮族と戦わずに講和を結んだことで支持を失い、ローマ軍団によって暗殺された後、皇帝の地位を継いだマクシミヌス・トラクスの時代から始まり、フィリップス・アラブス、デキウスといった軍や官僚組織の中堅からの皇帝を経て、ヴァレリアヌスがペルシアとの戦いにおいて捕えられるまでの期間が取り上げられている。
この期間を通じて、ローマを取り巻く外部環境は大きく変化をし始めていた。
ゴート族やヴァンダル族といったゲルマン系の諸民族はこれまでより圧倒的に積極的にドナウ河を超えた侵入を繰り返すとともに、黒海を経由してギリシア、小アジアの諸都市に海からも侵攻をし始める。そして何より、これまでローマとオリエントの国境を形成していたパルティア王国が滅亡し、ササン朝ペルシアが勃興する。
しかし、この巻で取り上げられている諸皇帝は、ローマの防衛のあり方については、従来の体制を基本的に踏襲し、抜本的な改革は行っていない。皇帝自ら陣頭に立ち、蛮族やペルシアの来襲に対して逐一の迎撃を行ってはいるものの、それが多正面、高頻度になっていく中で、次第に対応しきれない状況に陥っていく。
責任感とバランス感覚には優れた諸皇帝だったのだろうと思う。一方で、時代の大きな変化に対して抜本的な改革を構想する能力も、時間的な余力もなかったということなのかもしれない。
前巻に取り上げられていた、ローマ市民権の拡大やそれに伴う軍団の構成の変化といったローマ帝国の質的な変容と、帝国形成以来250年以上にわたって維持されてきた防衛体制の存続という二つの状況が、外的環境の変化に対して有効に働くのではなく、むしろ軋みを生じながらローマ帝国防衛線の崩壊に繋がっていく様子が、非常に印象深かった。 -
新潮学芸賞
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3 世紀前半のローマ。外敵からの侵入が繰り返され、皇帝は対処に奔走。悲しいことに皇帝の誕生&謀殺が繰り返される。内乱は混迷を深め、ひどいときには1年に5人もの皇帝が誕生する。
各皇帝が劣っていたかとそういうわけではない。過去の実績や人望を基に皇帝に推挙されたのだが、実際に従事すると周囲の抗えない力に屈していくのである。もし違う時代に生まれていたら、違った実績を遺せたかもしれない。人間の運の儚さを感じさせる歴史である。 -
★2008年12月5日 95冊目読了 『ローマ人の物語33 迷走する帝国(中)』塩野七生著 評価B
三世紀、いよいよ混迷を深めるローマ帝国は次々と軍人皇帝が短命に終わり、遂にはアラブ人系の皇帝まで現れる始末。一旦綻びが出て繕えないと、最強の帝国もここまで崩れてしまうのかと言うくらいの弱体化が進む。国、組織を維持するというのがここまでデリケート、難しい事と再認識。 -
カエサルは6冊アウグストゥスは3冊に渡って書かれたのに
上巻では紀元211年~235年 皇帝4人
中巻では紀元235年~260年 皇帝10人
「迷走する帝国」三冊で皇帝22人そのうち14人が謀殺されました。
この時代の皇帝たちのコインはアンティークコインの市場で高い値がつくそうです。
在位期間が短く希少価値を産むと。
二千年後に高値で取引されるのも少しは気休めにはなるかもしれないと塩野女史。
この中ではトラキアのマクシミヌス・トラクスがとても好きです。
すごく頑張っていたのに。ひどい。 -
次々に謀殺され、目まぐるしく入れ替わる皇帝。
ゲルマン民族の来襲。
ササン朝ペルシアの勃興。
ローマ皇帝の捕囚。
西暦3世紀中盤、ローマ帝国の危機の深刻化を描く。 -
迷走するにふさわしく、皇帝がコロコロ変わる。市民の責任能力も落ちてくる。現代に通じる。