- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101185033
感想・レビュー・書評
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一応連作。
『栖』は『杳子』と同様神経疾患を一つの軸としているが、少ししつこ過ぎる気がした。そして当人に
病んでいる自覚が無い分、情が移りづらい。
『聖』は単体で通じる程の完成度で、こちらの方が好みだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『聖』のみ読了。
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要読書体力!
(この人の小説は文体に慣れるまでに少し時間がかかるかも・・)
死者を村の川向うに送り土葬する「ヒジリ」
なる風習が残る村落に偶然たどり着いた若者と、
村の女との奇妙な出会いを描いた「聖」。
その続編で、
東京で同棲をはじめた二人が
女の病の世界の中に、
じりじりと閉じ込められていく様を
非常に粘度の高い独特な筆致で描出した「栖」。
精神疾患を発症したパートナーの妄想を、
まずは意識的に黙殺し、
次にいったんは向き合い(正論で否定し精神科受診を促す)、
やがて抗わずにそれを受けいれ、
妄想世界を実証する協同者となっていく男性の、
心理の変遷があまりにも生々しくて、
息苦しくなる。
同棲・妊娠・出産を経てもなお、
あいまいで不安定であった二人の関係が、
皮肉にも女の発病とそれに対する男の無様な看護をきっかけに、
歪ながらも明確な輪郭を持ち始めていく。
つまり、病は二人にとって対立、不信の火種そのものであるが、
同時に、
相手が自分に影響を与える存在であると認知するための
たった一つの方法であった、とも言いえる。
村上春樹「ノルウェーの森」とか
島尾敏雄「死の棘」なんかと
読み比べてみるとおもしろいかも。 -
読みながら、佐枝の狂気に引きずり込まれそうで怖かった。自分も紙一重なんじゃないかと。変だし、人にも認められないし、見下される側の人間として。
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学生のころ大学の図書館で借りて読んだ。
特に「栖」に出てくる女性の姿に戦慄を覚えたような記憶がある。
手元にないので文庫化しないかなあとずっと思っている一冊。