朝が来るまでそばにいる (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 994
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101200538

作品紹介・あらすじ

火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現も飛び越えて、こころを救う物語。

感想・レビュー・書評

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  • 生や死がテーマの短編集。

    擬音や表現が個性的で、グロテスク。
    共通して、この世のものではない存在が登場し、ぬるい悪夢を見ているような心地悪さを感じた。
    寂しさ、執着のようなもの、悲しさといった感情にリアリティがあって目が離せない。

    薄暗い負の感情の中に、愛しさや、生に対する思い、希望のようなものが、ぼんやりと光っているような一冊だった。

  • ・・・・・
    とても苦手・・・
    ごめんなさい

  • この世のものではないものたちと、生きているものたちの物語

    愛する人との死別の物語
    これを「暗くて悲しい話」と片付けられたらどれだけ楽だろうかと思う。大好きな人ともう永遠に会えない。なら、鬼になっても連れて行く。その感情は否定できない。
    私に限って起こらないことだと誰にも断言できないからだ。

    朝が来るまでそばにいる。
    暗く悲しい夜は必ず来るけど、一緒に乗り越えよう。
    そう行ってくれているようなタイトルのままに、
    どの物語も暗い、悲しい気持ちの後に少し前を向ける優しさを放っている。

    綾瀬まるさん、すきだなぁ

  • よく言われる「読むのが苦しい」たぐいの短編集。その中でおぼろげな希望とか、教訓とかを、”成仏”とともに届けるおはなし。

  • 一言でこの小説を表すとすれば、哀しいホラー短編集だと、私は思う。
    全6編のうち3編は死というものが前提にあって、残りの3編にもどことなく死の匂いのようなものが漂っている。
    怖い中にも湿り気や情緒があって、とても日本人好みの内容だと思う。死者の念や想いの強さが、鬼や奇鳥や地縛霊に姿を変えてこの世に取り憑く。そこには人の哀しみが溢れている。

    ホラー要素はほとんどない一編「眼が開くとき」がとてもエロティックで良かった。いらやしい要素や直接的な表現は全くないのだけど、とてもエロティック。だけどある意味でとても恐ろしい物語でもある。
    憧れや恋心は片目瞑って相手を見ているくらいがちょうど良く長続きもするのだろうけど、何かのタイミングで両目が開いてしまう時がある。その瞬間憧れは遠のき、そこから先本物の愛に変えてゆけるかどうか…という。

    全体的に、人の念を強く感じて、読んでいる最中はとても気が重かった。愛する者に対する死者の執着とか、過去の傷を忘れられない生者の苦しみとか。
    突然という形で自分の命が断たれた時にもしも愛する人がいたら、自分はどうするのだろう?と考えたりもした。自分が死んだ後もその相手が幸せに生き続けてくれたらそれで良いと、立派なことが思えるだろうか。
    もしかしたらこの小説の中の夜に潜む者のように、相手に執着して、一緒に死んでも良いから側に居て欲しいと願ってしまうのかもしれない。奇怪なものに形を変えてしまうくらい、愛して、狂ってしまうこともあるのかもしれない。

    近頃よく読む作家さんの中で、彩瀬まるさんは特に好きだ。単純に読み物として面白いのと、読んでいて人に対する愛情というか温かみを感じるところが、とても好きだ。

  • 温かいだけじゃなく、ゾッとする表現もたくさんあった。愛する人を残していく時、自分はどうなってしまうだろう。時間を置いてまた読みたい。

  • 生きること、死ぬこと、食べることはつながっている。
    大切な人を失くした時、遺された方の辛さはもちろんだけど、死んでしまった方の無念さがとても印象的だった。改めて日々を大切に生きていかねばと考えさせてくれる読書体験になった。

  • この世とあの世を繋ぐ六つの短編集。この本全体に死の匂いが深く巣食っている。

    特に好みだったのは「よるのふち」。
    母親を失って混乱する家庭がリアルすぎるほどリアルで胸が痛んだ。そして蝕まれていくのが子どもだけだったことが、またある意味では切ない。母親を求めているのが子どもで、子どもを求めているのも母親なのだ。
    女の白い手が撫でているシーンが印象的。恐ろしいけれど、死してもなお強く消えない想いが、現実との境界線をゆらりと曖昧にしていくようだった。一緒にいたいあまりに、心配するあまりに、生者を引き摺り込んでしまうこともあるのかもしれない。

    「かいぶつの名前」もひどく切なかった。浮遊霊と地縛霊目線なんて想像できないのではと思うのに、読んでいるうちにこういう感じなのかもと悲しい気持ちになってくる。成仏するラストがせめてもの救いだ。
    胸いっぱいに読み終えた。

  • いのちがテーマになっているような短編集。不気味な世界が多く、冷たさも感じるけれどすごく温かい不気味さ。

  • 静かに静かに物語が流れていくのに、心がぐらぐら動かされる不思議な作品。

    今ここに生きている私のすぐ隣にも、もしかしたら「死」が存在しているかもしれない。そもそも生と死の境界線ってなんだろう。

    どの物語も、ゾワゾワするような幻想的なような、「死」を考えさせられるものだけど、不思議と怖いとか悲しいとかではなく、心がほぐされるような柔らかさのあるストーリーだった。

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著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

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