はい、こちら国立天文台: 星空の電話相談室 (新潮文庫 な 54-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205212

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  • 著者は国立天文台の広報普及室に勤務していた人。
    一般の人からの問い合わせに応える、言わば「電話番」
    もちろん、広報は電話応答だけが仕事ではないが、本書では、その電話応答での出来事が中心に語られている。

    普段、天文台に電話をかける事はしない(電話をかけた事がある人の方が少ないと思うが)ので、一体、どんな内容の質問があるのかが、まず興味があった。
    流星群、日食などの天文現象についてのものや、学校の先生、研究者の問い合わせは想像できるが、それ以外は何があるのだろう。

    一番、多いのは「日の出、日の入り」の時刻。(特に初日の出)

    「理科年表」に載っている内容なのだが、考えるより前に聞いてしまおう、という感じで聞いてくるらしい。
    本書の発行は2005年。ネットが今ほど身近ではなかった頃だが、こういう人は、今でも掃いて捨てるほどいるだろう。

    それから、学校の宿題対策なども。
    観測の方法やデータの問い合わせなら、まだいいが、「結果」だけを聞こうとする人もいるそうだ。
    (それも親が、というケースもあるとか)

    こちらの方は読書感想文や論文の「コピペ問題」など、今の方がもっと「悪質」になっている。

    少し意外な感じがしたのは、最も回答に困るのが、「マスコミからの天文現象に関する問い合わせ」だという点。
    何が困るか、というと「条件がハッキリせず、要領を得ない」から。

    例えば、日食ひとつにしても、必ず聞かれるのは
    「前回、起きたのはいつか?」
    「次に起きるのはいつか?」
    という点。

    要領を得ない、というのは「日食」が「皆既日食」だけか、「部分日食」も含めるのか、観測できるのが世界のどこでもいいのか、日本から見えるもののみか等、いろいろ条件があるのだが、それらを省略して、質問するケースが非常に多いそうだ。
    人に質問する機会の多いマスコミが科学に対して、訓練されていないのか、「同族」であるからアラが目立つのか。
    ふとノーベル賞に関連した誤報騒ぎを思い出した。

    そして、やはりいる「困った人々」
    天文現象は人間の都合で変更できるわけでもないのに、「こうあるべきだ」と演説する人。
    中には、天文とは全く関係ないことで電話をかけている人もいるらしい。

    こういう人達も相手にしなければならない、広報普及室。
    その苦労がしのばれる。

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