穴 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205410

感想・レビュー・書評

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  • 書店で目に留め、小山田浩子の小説を初めて読んだ。

    心地よい居心地の悪さのある場所の話。

    「穴」に現れるたくさんの他者たち。
    座敷童というか、地域童のような、突然現れて理不尽に振る舞い、いなくなるものたち。

    「いたちなく」のいたちたちと母いたちも、「ゆきの宿」の赤ちゃんたちも、そんなふうにやってくる。

    松井哲也『ロボット工学者が考える「嫌なロボット」の作り方』で言われる「他者」との邂逅について考えていたところだったので、この小説に現れる他者たちと出会い、こういうことだなと感じた。

    他も読んでみる。

  • ある女性が夫の実家のある独特な雰囲気のある田舎に引っ越す。そこでの出来事が描かれるのだが、途中で視点が妻から夫へと切り替わる。不明な点が多く、自分でもこの作品をしっかり評価できているかわからない

  • この本は、完全に衝動買いした。
    二週間くらい探している本があるのだが、どの大型書店に行っても置いていない。
    在庫検索でも、在庫なし。
    先日もある大型書店で目当ての本が無いのを確認してから、せっかく来たのだからと、あれこれ見ていて、たまたまこの本を手に取り、この作家の「工場」よりも薄いという理由で購入した。
    僕よりも大分若い世代の、若い夫婦が夫の転勤に伴って、実家に転居する話である。
    僕は女性でないので、ネイルや健康食品の相場など分からないが、その他にも細かな部分で、一通り読んだだけでは分からない伏線が幾つもあるのだろう。
    いたちや、先生と呼ばれていた幽霊だか「あさひ」にしか見えない幻だかの義兄や、正体の分からない黒い獣など、途中から作品は非日常的な様子を呈し始めるが、最後は「あさひ」のコンビニ勤めが決まったところで終わる。
    僕が気になったのは、義母が74000円の健康食品代を「あさひ」に支払わせて、差額の20000円に気づいていないところ。
    これが、「あさひ」の感じたような理由で、払われないなら義母と暮らすのも大変である。
    「いたちなく」「ゆきの宿」は正続というか対を成した作品。
    「いたちなく」の冒頭で不妊検査の為に、精液を採られた夫は検査結果を知らぬままで、「いたちなく」は終わり、「ゆきの宿」の途中まで、妻が友人夫婦の生まれたばかりの赤ん坊を非常に可愛がるシーンや妻と友人の妻との内緒話などで、妻が子供が出来ないのを悲しんでいて、友人夫婦を羨んでいるのだと受け取っていたのだが、最後に完全に裏切られた。
    そして、それは良い結末だった。
    友人斉木の作る雪だるまは、主人公夫婦の未来の赤ん坊の象徴に思える。

  • 最初から最後まで、何とも掴み所のない小説だったように思える。非現実じみた事象が所々混じった日常をぼんやりと過ごしている主人公の見ているものを、読者はこれまたぼんやりと何か奇妙な気配を感じながら読み進めていく。強烈に引き込まれることも、完全に興味が醒めることもなく、淡々とページを捲り続け、そして捲るページがなくなった。
    自分には本作の何がそこまで評価されているのか理解できない。確かに、穴や獣、義兄、義祖父、子供たちに関する、まるで違和感たっぷりな描写には何らかの意図があるような、ないような、深い意味を内包しているような、そんな気を持たせてくれた。だがそれが何だと言うのか。読者があれやこれやと深読みすることに任せて、作品内に確固たる答えのないピースを適当に散りばめただけのように、自分には感じてしまう。全体を通して薄ら寒い不快感のような気味悪さを演出させてはいるものの、それ以上に何かあるかと言われれば首を捻らざるを得ない。
    よく分からなかったので少し他の方の書評を読んだりしたが、それによると作者は何を書いているか分からないまま書いているのだとか。なんじゃそりゃ。しかしそれを聞いて納得できた。だからこそ読者である自分にも訳が分からなかったというわけだ。
    風景描写などについては卓越したセンスを感じたが、ストーリーテリング的な観点からしてみれば、その面白さはかなり薄味であるとしか言えない。これが純文学というものなのか? 少々自分には、芸術性に重きを置いたような、一見さんお断りのような、お高くとまった作品には向いていないようだ。

  • よくわからなかった...

  • 電車で読んでたら
    ほら落ちた。

  • 情景、仕草の表現が細かくて目の前に浮かんでくる。話がよー分からんのは芥川賞ならではのいつもの事。
    穴よりもいたちぬきが面白かった。短い話だからか、割と素直に全編読めた。ところどころに出てくる登場人物が気味悪く描かれているのがおすすめのポイント!

  • 2013年後期芥川賞受賞作品

    芥川賞らしい濃密な情景描写。あさひの同僚のネイルが禿げかけているところなんか、すごい

    本筋の「穴」のお話。不思議な物語。私なりの解釈はあるけど、ネタバレなしに語ることは出来ないのでここでは黙ってます

  • 「穴」★★
    「いたちなく」★★★
    「ゆきの宿」★★★

  • 初めて出会った感じの不思議な小説でした。
    読み終わっても、疑問だらけで部分的に読み返して解明しようとしてみたがどこがどう繋がっているのか、義兄と義祖父、獣と穴と大勢の子どもたち、老人達の関連など過去と現在が何かで繋がっているのだろうかと読み戻ってみても掴めず。分からない事だらけですっきりはしないのにクセになる独特な作品だと思いました。

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著者プロフィール

1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞。他の著書に『庭』『小島』、エッセイ集『パイプの中のかえる』がある。

「2023年 『パイプの中のかえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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