穴 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101205410

感想・レビュー・書評

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  • 仕事を辞め、夫の実家の隣に引っ越した私。専業主婦になり、家事以外の時間をもてあます。そんなとき、見たことがない獣が掘った穴にハマる。さらに、いるはずのない義兄が登場し、不思議な物語になっていく。芥川賞受賞の表題作のほか、2作品収録。

  • ズボン、ヒューン、ならばアリスの穴だが、この作品ではドスッ、シーン、肩から下が埋まってしまう。
    リンチを思い出す草地や土の描写を経て、現実が変異するが、それはもとからそうだっただけのこと。
    「工場」の着地は変身だが、「穴」の着地は変態(もしくは成長)。
    まずは義兄の存在感だが、
    この作者はどこかしら子供を作るということにしこりを感じているらしい(実際はいるけど)。
    そこに共感。
    だからこそ、(「ディスカス忌」に続く)「いたちなく」「ゆきの宿」の夫婦にも肩入れしてしまう。

  • 読み返してたら、全部読み返したくなって『工場』も『庭』も棚から出してきた。文庫も単行本も両方買っている小山田作品大好きすぎるんだけれど、他の人の感想見てたら、よくわからないとか何が言いたいのか?とか書かれてあって、そっかーそんな風に読む人もいるんだなと思ってしまう。この面白さって息するみたいなものでうまく言葉に出来にくい。あとから何回も読み返したくなってそうしたら新しい発見とかあって、小山田さんの好きなものが滲み出てるわー、うふふとかなるわけで、そういう自分だけの楽しみ方をわかち合えたりわかち合えなかったりそれもふむふむなるほどー!!って感じも面白くて、今回は『いたちなく』『ゆきの宿』が本当に面白くて『工場』の『ディスカス忌』の斉木君と同じ人物であって違うのかなとか、世界がずれてるかドッペルさんかな、とか小さな繋がりは熱帯魚だよなとか考えたらうはうはしてしまったのでした。あーほんまに、好き。小山田作品大好き(笑)

  • 一日で読めます。謎を残しなかなか怖い。非常に好きな世界観。

  • よく分からない、一体なんの話なの?って感想が多いみたいで漏れなくあたしもそうなんだけど、それがつまらないってことではないんだよな。このなんだかよく分からない、不思議、モヤっとするのが芥川賞っぽいというか笑 読みやすく、直ぐにこのなんとも言えない世界へ引き込まれた。結局、主人公以外の全員が不気味で少し怖い。田舎特有のご近所のことは何でも知ってて、いつでも見られてる感じ。ひー!何か変だなぁと思うことがあっても、葬式とかその地の風習を経験して、そこで仕事をしてそこの人達と触れ合って、受け入れて、慣れていくんだよねぇ…。隣組みたいなものが悪いってわけではないんだけどもさ。
    他の作品も読んでみたい。

  • 表題作の「穴」だけ読んだ。
    このホラー感は何?
    小学生の夏休みの不思議な体験の大人版という印象。
    読んでいてずっと気持ち悪さがまとわりついてくる感覚がかなり良かったですね。


    (追記)
    「いたちなく」「ゆきの宿」の二作もかなり良かった。こちらのほうがまだ怖くなくて良かったかな
    なかなか読み解けていない部分もあるが、面白かったですね

  • 暗くて不気味で怖い
    登場人物がみんな怪しく感じる描写
    でも表立って何も起こらない
    気味悪がりながら続きを読んでしまう

  • 穴 5
    いたちなく 3
    ゆきの宿 4

  • 表題作の『穴』が面白すぎる。
    世間から張り巡らされた抑圧の描写に胃が痛くなり、散歩道に生えた草木の生々しいにおいを感じ、リアルに次ぐリアルに舗装された物語の道に、突如小さく変な穴が空く。変な奴らが登場する。黒い獣、存在を隠匿された義兄。変だけど、それぞれに生態や道理があって、地に足をつけて生きている。変だし不気味だけど、ユーモラスで憎めない。

    誰しも「普通」や「まとも」に息苦しさを感じて、「ここではない世界」を夢見たことはあると思う。『穴』で表現されるのは、あまりにショボくて滑稽で、それなのに泣きたくなるような「ここではない世界」なのである。私も穴に潜り、黒い獣の湿った鼻先を感じたい。

  • たまたま、九州久留米にいた。
    筑後川河畔を歩きながら、穴を探した。
    なかなか不思議な面白さがある。

著者プロフィール

1983年広島県生まれ。2010年「工場」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2013年、同作を収録した単行本『工場』が三島由紀夫賞候補となる。同書で織田作之助賞受賞。2014年「穴」で第150回芥川龍之介賞受賞。他の著書に『庭』『小島』、エッセイ集『パイプの中のかえる』がある。

「2023年 『パイプの中のかえる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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