悟浄出立 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.66
  • (41)
  • (114)
  • (94)
  • (14)
  • (3)
本棚登録 : 970
感想 : 126
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101206615

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 万城目学作品だが、これまでとは異なり、原作から想像を膨らませた短編集。様々な作品をキャラクターそれぞれの目線で感情や行動が描写されているため、どれも主体者の目線で情景やエピソードが感じられる。おすすめは表題作よりも、虞姫寂静。
    万城目氏、中島敦や沙悟浄が推しとは、やはり面白い。

  • この本を読んでいると、久々に中国史に関する本を読みたくなった。中国史は謎が少ないけど、題材にすると書き手によって特色が出るストーリーになって面白い。

    万城目学は著者解題で中国史にミステリー要素が少ないのは、司馬遷がいたからだと主張している。司馬遷によって緻密に歴史が記録されたため、司馬遷以降も中国史は正確に書かれていると主張している。この主張はなるほどなと感嘆した。いつかは史記を読み、司馬遷が情熱を出した文を読みたいものだ。

    この本はいくつかの短編によって構成されている。その中でも、この本のタイトルである悟浄出立に込められたメッセージに胸を打たれた。「過程にこそ素晴らしさがある」というメッセージは、現代の結果だけを求める風潮に一石を投じているのではないだろうか?

    1番面白いと感じたのは、虞姫静寂だ。虞にスポットを当てており、あまり記録が残っていないため万城目学が思い描く虞に対するイメージがありありとこの話に表れていると思う。項羽のかつての妻であった虞に似た女を虞としての役割を与えるというのは、万城目学の妄想力が無ければ思いつかないだろう。

  • 中国の古典に題材をとった五篇の短編から成る短編集。

    この短編集ではない、昔読んだ小説の中に出て来た会話。
    妻がいる男性が妻を手酷く裏切って他の女性の許に走り、恨んだ妻は相手の女性に復讐する。

    「これは酷い…もし復讐するなら男にするべきだ」と、ある小説家は妻に言う。すると妻は
    「そうなんでしょうね。でも、女はそうは思いません」

    この短編集のヒロインの女性は、男にきっちりと一発かまして去って行く。
    代償行為で自分の心の穴を埋めようとするのは
    男性あろうと女性であろうと、あまり褒められた行動ではありませんね。色んな人を傷つける。



  • 項羽と虞にチャイニーズデスコアの優Voodoo Kungfuのvo 李楠とサポート?Bの蒲羽を脳内キャスティングして読んだ「虞姫寂静」が良かった。

    これ、読み始めてから間もなく何処かに行っちゃって、この前やっと発見したんだよね。
    で、再読。
    西遊記も史記も三国志も試験対策以外の知識も興味はなかったワケだよ。これまでは。まぁ、孫悟空は知ってるけど。
    で、最初は正直辛かった。西遊記さえも。
    でも、読んでいるうちに気がついた。と、いうか思い出した。漢文とか古典は同級生が言うほど嫌いじゃなかったことを。みんなに合わせて文句は言ってたけど、文中にふと差し込まれる視覚的な風景描写が好きだったなぁ。
    で、原作からのスピンオフを万城目学が綴るという趣旨の本作。
    原作知識のない私のようなNO歴読者に対し簡単な背景説明を巻末に収録という親切設計。
    中国古典に見られる風景描写を挿入というスタイルを踏襲。美しい。臨場感が湧く。
    行間で物語る漫画家と評されるあだち充の風景描写って中国古典の影響から来てるのかもと思い至った次第。

  • どの話も面白い。その人を周縁から描く手法。ただ、予備知識は多少いるのが難。
    司馬遷のお話が一番かと思う。

  • 名前の意味を知りました。
    脇役?
    そーでしょうか?

  • 特に表題の悟浄出立が面白いです。1つ1つが短いので読みやすいと思います。万城目学さんの個性が出てます!

  • 短編5編。
    1話目の悟浄出立が一番よかった。
    悟浄、あんたは間違ってないよ、と肩をたたきなる面白さだった。
    中国の古典や歴史に疎く、他の話で盛り上がれなかった。

  • 万城目さんといえばエンタメ全開?とおもいきや、これはちがうんだな~。

    西遊記とか三国志とか中国の古典を読んでおくと、本書をよんだときの面白さが倍増します。
    脇役に焦点をあてて、その心象風景を描いています。
    前向きな沙悟浄とか、迷える趙雲とか、原典からはなかなか想像しづらいんだけど、
    本書を読むと、
    「なるほどな~、そうかも。そんな部分抱えながら生きていたんだよね~。きっと。」
    と思えてきます。

    20170131

  • タイトルや装丁にある西遊記より、三国志や司馬遷の話のほうが、私は好きだ。

全126件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

万城目学の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×