まぶた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215228

感想・レビュー・書評

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  • 不思議な本だった
    現実では有り得ないことなのに、読んでいるのは日常の1場面ですごい不思議な感じになった。
    【バックストローク】って国語の教科書に載ってるのかな?
    この話が個人的には1番好き

    こちらの1冊を教えてくださったブクトモ様に感謝☆

    • さてさてさん
      みたらし娘さん、こんにちは。
      「まぶた」、不思議な本ですよね。まさしく不思議という言葉が一番似合うと思います。現実と幻想の境が不明瞭なのが...
      みたらし娘さん、こんにちは。
      「まぶた」、不思議な本ですよね。まさしく不思議という言葉が一番似合うと思います。現実と幻想の境が不明瞭なのが理由だと思いますが、実に絶妙にその境を描かれていると思います。
      表紙がまた印象的で一度見ると忘れられなような…。そういう意味では、この文庫本の帯が邪魔ですよね。
      2022/02/28
    • みたらし娘さん
      さてさてさんこんにちは☆
      コメントありがとうございます!
      【まぶた】面白かったです!
      ほんとに感想をうまく言葉にできなくて、不思議としか表現...
      さてさてさんこんにちは☆
      コメントありがとうございます!
      【まぶた】面白かったです!
      ほんとに感想をうまく言葉にできなくて、不思議としか表現できなかったんですが、さてさてさんの言う通り、現実と幻想の境が不明瞭!まさにそれです!

      さてさてさんのレビューに加えて表紙もインパクトあって、帯に書かれてる文にも惹かれたのもあって読みましたが、帯…たしかに邪魔ですね笑
      ない方がもっといい。

      素敵な1冊教えてくださってありがとうございました☆
      2022/03/01
  • 8つの作品が収録された短篇集で、幻想的で奇妙な出来事を交えながらも、人間という愛らしい存在を感じられたのが、印象的でした。

    また、奇妙な出来事を体験した後で、自らの人生を見つめ直すような展開が多いことに、人生とは、何をきっかけにして突然変わるか、分からないものだなとも思えました。しかし、不自然さは感じずに共感できたのは、小川さんの、上品でいて飾らない文体にあるのかもしれません。

    こういった上品な奇妙さと、私の人生観には、精神的な距離を隔てているのを感じ、逆に、読んでいて気楽な心地良さがあって、何となく旅行時に持って行きたい本だなと思いました。

  • 自分からは遠いけれど、決して非現実的ではなく。世界のどこかで、ひっそりと紡錘がれているような奇妙な話。小川洋子の話を読むと、汽水域、の言葉が思い浮かぶ。海水と淡水がひそかに混じりあった、煩くもなく、落ち着いた世界。そこには海水で生きるものの淡水で生きるものとの生と死が静かに拮抗しつつ、微妙なバランスを保っている。作品の完成度でいうと、「海」の方が綿密で、魅惑的。

  • どの作品も良かったけど、私が特に気に入ったのは、「リンデンバウム通りの双子」と「匂い収集」です。「匂いの収集」は素敵な恋の話かと思って読んでいたら・・・・。
    怖かったです。「リンデンバウム通りの双子」は最後の2行がいいですね。すごーく主人公の気持ちがわかりました。

  • 読んだ後は少し寂しくなる話が詰まった短編集。小川洋子さんの小説は体の一部だったり、親しくしていた人だったり当たり前のようにそこにあるものを失うお話が多いですね。

  • どの登場人物も、音もなく崩壊していくようだった。彼らが纏う空気には確実に死が感じられるのに、誰もそれを恐れてはいないように見える。
    死とは息をひそめればいつでもそこにあり、生き物が必ず辿り着く終わりの時。でもきっと怖いものではないのだ。
    それぞれに悲しい出来事や上手くいかなかった事を抱えながら、今多くを求めず穏やかに生きている人々を見ると、心が静けさに満ちてくる。手の届く範囲の、目の前のものを愛していくことの大切さを教えてくれる。
    繋がりのない短編集なのに、全てにどこか共通したものがあった。
    「お料理教室」だけは誰も話が通じない感じがして、フワフワして拠り所がない感覚になった。確かなものがいつもあるのに、この話にはそれが無い不安感があった。

  • 段々儚くなくなっていく人たちが印象的。その場面に遭遇した人たちの心境の変化がよてもよい。

  • まぶた。
    ひらがな3文字だと、なんか間抜けな感じ。
    目蓋。目の蓋のような役割。
    その目で見えているものも、蓋をすれば見れなくなる。
    良いものも、悪いものも。
    蓋をされた目でも、観えるものは人それぞれだろう。
    闇をただ感じるのか、虚飾の世界に埋没するのか、過去失敗したオムレツのとんとんを思い返すのか、
    未来に待ってる壁一面の本棚に囲まれた部屋を作りたい夢なんかを。
    そう、考えると、目蓋って奥が深いな。

  • 奇妙な夢のような物語。

  • どんよりとした曇り空、じっとりと湿った空気、しんと静かな街、ひやりとした手触り。
    ちょっとだけぞくりとするものが垣間見えるような。

    ずっと気になっていた本を、物語の役割をきっかけに読む。
    私の好きなテイストの小川さん。

  • 高校の国語の授業で「バックストローク 」
    をやって面白いと思って読んでみた

    ちょっと難しい
    本質には直に触れない感じ

  • 静謐な時にはグロテスクでもある奇妙な情景が、7つの短編に繰り返される。2018.4.29

  • 難しいですね。いかにも純文学。
    最後の「リンデンバウム通りの双子」を除いては、何らかの不条理が存在します。例えば中国野菜が夜光性だったり、下水から過去の料理の残骸が出てきたり、元水泳選手の腕が取れたり。何かの寓意と言う訳ではなく、作者の何かに対するイメージなのだともいます。
    イメージは見事に伝わってきます。そこらの筆力は素晴らしい。でもそのイメージをどう捉えるべきかで悩んでしまう感じです。
    どちらも余り読んではいないのだけど、どこと無く倉橋由美子を思い出させる雰囲気です。

  • 最近一番好きな作家さん。
    表題のまぶたはホテルアイリスの下地になったもの?
    まぶたを膨らませてアイリスになったのかな。
    全作の根底にあるそこはかとない空虚な雰囲気は小川さんならでは。
    短編なのでさくさく読めるのに、読後はどんよりしている不思議。

  • 8編の短編集。まぶたを閉じて現実と夢とが混ざりあっている時のような感覚になる。読後は「?」が並ぶ話ばかりであったし紐解きたいとも思わないけれど悪い心地もしなかったのは文章が読みやすいからだろう。特に「リンデンバウム通りの双子」は雨の憂鬱さと温もりとが感じられ、心も湿った気がした。

  • 短編の方が読みやすい。フランス映画のような暗さがあります。

  • 大好きな小川洋子さんの短編集。世界観は相変わらず独特で、らしさを発揮している。
    このインパクトのある表紙の本を読んでいる私に「それってどんなお話?」と聞く娘にあらすじをうまく説明できなかった。そんな確固としたあらすじがあるようなないような話が並ぶ。大きな起伏やオチがあるわけではないが、なんとなくその世界にハマっていく感じ。

    「バックストローク」が特に印象的。

  • おっさん、通報されてもしゃあないと思いますよ、幼女連れ回し過ぎでしょ(頻度と挙動の問題)。

    客観的に見てそう大したこと出来そうなおっさんでもないですけど、小野洋子マジックで完全にアウトになってんのか、それともおっさんが意外と変態でアウトになってんのか、どっちなのか判断つきませんけど、限りなくアウト。犯罪。淫の行だよ!!!!

    それはさておき、標題「まぶた」のように、今回もニッチなところを突きまくってエロかったり切なかったり小野洋子さんは忙しいですね。でも、今回は短篇集というのもあってか印象に残る作品は少なかった印象。それもまたすごいとは思います。ただ幼女連れ回したおっさんのインパクトが半端なかっただけかも?

  • 【経緯】
    小川洋子の短編読んでみたくて

    【目次】
    •飛行機で眠るのは難しい
    •中国野菜の育て方
    •まぶた
    •お料理教室
    •匂いの収集
    •バックストローク
    •詩人の卵巣
    •リンデンバウム通りの双子

    【感想】
    「まぶた」。現実と夢、対峙と無視、生と死の境界線たりうるもの。
    虚構と現実が絶妙に混じり合って、読後なんともいえない共感と気持ち悪さを感じた。後日ひとつひとつの感想を記しておきたい。

    【共感】
    •ペンパルは現実の辛気臭いことをいうより虚構でも盛り上がったほうがロマンティックで楽しいと思う。赤毛のアンっぽくて好きよ。

    【引用】

    【不可解】
    はっきりとは言わないで、読者に考えさせる感じさせることができる小川洋子って、スゴイ。

  • 小川洋子のブレない創作姿勢がすばらしい。

  • ゾクゾクする短編集。匂いの収集は映像化しても面白そう。

  • 人のからだの描写が印象的な短編集。
    登場人物は優しくて、グロテスクで、ときどき嘘をつく。

    あらゆるものから攻撃性が排されていて、眠りや違和感や死はただそこに完結されて存在して、そっと周りに影響を与える。
    暖かくて、柔らかくて、乾いていて、少しだけざらついた肌触りの物語。

    「バックストローク」が、一番好きです。

  • バックストロークの手がもげる描写が印象的

  • 生と死…深淵なテーマを内包した、小川洋子さんらしさを堪能できる短編集。
    小川洋子さんの書く物語を読むと、静かで、霧に煙る、少し寒い異国の街を想起してしまう。石造りの建物には孤独な人達がひそやかに暮らしている。
    深読みすればいくらでも深読みできるけれど、私はあまり考えすぎずに、この雰囲気に浸るのが好きだ。時にエロチックで、どこか不吉な、この独特な雰囲気に。登場人物達の人生の重さを受け止めて、私の心もずっしりみっしり詰まるような気がする。
    巻頭の「飛行機で眠るのは難しい」、巻末の「詩人の卵巣」「リンデンバウム通りの双子」、それに本のタイトルともなった「まぶた」が特に心に残った。切なさが、残った。

  • 2013.3/19

    まぶたとは。
    眠るときに閉じる皮膜。場合によっては、死ぬ瞬間に閉じる皮膜でもある。

    この8つの短編は "眠り" と "死" をテーマにしたものだと思う。

    その中でも「匂いの収集」「バックストローク」が好き。

  • とても奇妙で不思議な物語。物語の終わりは、どれも着地する場所に戸惑う話が多いけれど、何故か感じたことのないような温かみがある。『バックストローク』が良かった。

  • 再読。
    ふと思う。「小川洋子が読みたい」と。その瞬間にはすでに、どの作品を欲しているのかも頭に浮かんでいる。目次を見ただけで涎が出てしまいそう。ああたまらない。

    73頁目
    《どんな時でも彼はわたしを否定しない。すべてを受け入れる。》
    否定することは容易い。違うことが当たり前だから、ただそれを認めるだけでいい。けれど、差異をそのままの姿で受け入れることは本当に難しい。意識しても、無意識だとしても。

    80頁目
    《「ハムスターだよ。彼が見てるんだ。目の病気でまぶたを切り取ってしまったから、目を閉じることができないんだ」》
    見たくないものを見続けなければならないこと。見たいものを見ることすら叶わないこと。残酷なのはどちらなのだろう。

    116頁目
    《彼女は匂いの専門家だ。この世のあらゆる匂いを収集するのを趣味にしている。》
    何フェチかと聞かれたら「匂いフェチ」と答えるようにしている。それはたぶん、「香り」でなくやはり「匂い」でなければならない。妙なこだわり。

    133頁目
    《彼は決して自慢げにではなく、お伽話を聞かせるようにユーモアを込めて喋った。タンスと壁の間や流し台の下では、彼の声は思慮深く響いた。》
    内容なんてさほど重要でないことが多い。話し方や話す場所、込める感情や選ぶ言葉でその物語は良くも悪くもなる。

    148頁目
    《弟は背泳ぎするだけで、わたしの求めるものを何でも差し出すことができた。》
    たまに不安に思うことがある。一緒に居て、自分に何ができているのかと。だから言葉にする。少しでも伝わるように、気持ちや感謝やお詫びを何度でも繰り返す。

    189頁目
    《アルファベットの並ぶページをめくっていると、たとえ両手に収まるわずかなスペースであっても、世界の果てのどこかに、僕のための居場所が確保されているんだと、感じることができた。》
    自分の言葉を形にして残すという行為は、結局、自分のためなのかもしれない。

    読了。
    小川洋子さんの作品を読むと、感想も解説も紹介も、一切が無意味なことに思えてくる。詩や短歌を眺めて「いいなあ」と詠嘆するように、その場限りの余韻だけで満たされてしまう。「言葉の標本」として文字を収集しながら頁を繰っていくのがたまらなく楽しい。

  • 独特な読後感

    不気味ながら
    透明感のある短編集でした

  • 短編集。

    どの物語も小川洋子さんらしく、
    静かでどこか物悲しいけど心が暖かくなる不思議なお話。

    それと、文章が綺麗。
    綺麗というか潔癖な感じすらする。


    しかし、やはり長編が好き。

  • 一瞬のうちに取捨選択するシャッター
    必要なときには閉じたままの眠りを
    場合によっては死をも準備してくれる薄い被膜


    薄い膜の開閉ひとつですべてが決まり
    すべてが終わってしまうはかない劇を書く

    光の授受の瞬間に、「まばたき」との「あいだ」に

    失われていく寸前のものと、うまれ落ちる寸前のものとを見分ける特異なまぶたで彼女はその光を丁寧におっていくのだ。


    上記のすべてはあとがきに記された堀江俊幸の
    小川洋子に、『まぶた』にかんする書評だ。

    小川洋子の作品にも まぶたを感じ、そのことばたちに
    愛を感じたのに、やはり作家、この説明の行かない小川洋子の大事に書きあげてきたものをまた 丁寧につつむのだ。

    「まぶた」の存在になんともぞくぞくとした、魅惑や畏怖、ただならぬものを感じたのに、それをうまく表現できないこのむづかゆさのようなものを払しょくしてくれた。

    ああ、このことばたちは 書き留めて残したい。

著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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