フィッシュストーリー (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250243

作品紹介・あらすじ

最後のレコーディングに臨んだ、売れないロックバンド。「いい曲なんだよ。届けよ、誰かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の表題作ほか、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇四連打。爽快感溢れる作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 「動物園のエンジン」
    「サクリファイス」
    「フィッシュストーリー」
    「ポテチ」
    中編が四作品収められていて、題名を見ただけであの話だとすぐに思い出せるくらい、それぞれが個性的な作品集だった。
    ストーリー展開が上手くて引き込まれるし、他の作品とリンクしているところを発見するたびに、思わず顔がほころんでしまう。

    表題作の「フィッシュストーリー」がよかった。
    歌詞をある小説の一説から引用した、売れないロックバンドの最後のレコーディング曲が世界を救うという壮大な話。
    最終話の「ポテチ」も、とてもいい話で泣けてくる。
    前作で活躍した黒澤も登場するし、伊坂ワールドの魅力が満載の、貴重な一冊だった。

  • 「フィッシュストーリー」
    自分が存在していること、それだけで何か意味があるのかなと思える。
    「世界を救う」なんて、平凡に生きている人間には突拍子もないこと。まさか自分の身に起こるはずがない。けれど、ある日ある時「ほら話にもならない」強い愛情から「世界を救う」魚の卵が生まれたのだ。誰もが下らねえと思ったその卵は、人知れず孵化し時を泳ぎ未来へと繋がっていく。もしかしたら、世界って自分の周りから広がり回っていくものなのかもしれない。決してそれは世界の中心が自分だという意味ではない。ただ、今まさに自分がしようとする行いが、誰かの世界へとリンクしていき、またそこから誰かの世界へと繋がっていく。それが世界が回るということなのかもしれないなと思ったのだ。人から人へ、その連鎖が「世界を救う」ことに繋がっていく。そう考えたら、なんだ「世界を救う」って国のリーダーになったり、愚かな戦争なんてものをしなくてもできるじゃないか。ただし、そのためにはちゃんと「自分」を生きなきゃな。その日のためにも準備が必要なのだから。

    「ポテチ」
    自分が存在していることで、誰かの生きる意味となれるのかもしれないと思えた。
    大切な人だからこそ真実は隠しておきたくなる。真実を知ることが重い枷となることもある。けれど、どんなに真実に虚偽の皮を被らせようとも、決して真実は消えることがない。だからこそ辛いのだ。だけど、もしその辛さを自分が存在していることで少しでも救いとなるのなら。そこには自分の生きる意味も多少なりともあって、もしかしたらそれは自分を救うことにもなるのかもしれない。
    いつかあなたにも真実を受けとめられる日が来るだろう。そして、それは今のあなたが、大切な人にとっても大切な人なんだと認められる日となってくれればいい。

    • やまさん
      地球っこさん
      おはようございます。
      コメントといいね!有難うございます!
      きょうの天気は、快晴です。
      今日も一日、健康に気を付けて良...
      地球っこさん
      おはようございます。
      コメントといいね!有難うございます!
      きょうの天気は、快晴です。
      今日も一日、健康に気を付けて良い一日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/12
    • 地球っこさん
      やまさん、おはようございます。
      いつも「いいね」やコメントありがとうございます。
      こちらは厚い雲の間から晴れ間が覗いている感じです。天気...
      やまさん、おはようございます。
      いつも「いいね」やコメントありがとうございます。
      こちらは厚い雲の間から晴れ間が覗いている感じです。天気が急変しそうな怪しい雲行きです。
      やまさんの今日一日が楽しいものになりますように!
      2019/11/12
  • 「伊坂さん入門編」な短編集。
    他の作品にも出てる泥棒兼探偵の黒澤も登場でニヤニヤ。

    デビュー間もなくから、刊行当時ごろまでに書かれた短編集4篇。
    どれもミステリー要素を含みながらも、人情も描く。
    けど、暑苦しくなくてスマート。
    それが、私の抱く伊坂幸太郎さんの作風イメージ。
    今作では特に『ポテチ』でホロっとさせられる。
    個人的には『ホワイトラビット』でも登場していた黒澤が大好きなので、黒澤の話が読めて嬉しいです。
    たしか、黒澤以外の泥棒たちも『ホワイトラビット』にも居たような。。
    伊坂幸太郎さんの作品が気になってる人に、まずオススメしたい1冊。

  • 2021(R3)3.13-3.31

    4つの中篇集。
    やっぱり、間が空くと物語の世界観に浸り切ることができず、深く味わうことができない。

    「1 動物園のエンジン」、「2 サクリファイス」まではサクサク。「3 フィッシュストーリー」は、覚醒と睡眠を繰り返す。「4 ポテチ」は何度読んでも寝落ちして、イマイチ感動を味わえずにジ・エンド。

    もったいなかった。

  • 著者の物語は、なんだかセンスがいいんですよね。「フィシュストーリー」「ポテチ」は映像化されたものを、昔観ています。原作が、どんな感じなのかと思い読みました。それぞれの短編中編小説に味があります。個人的に好きなのは「ポテチ」かなあ。私の表現が陳腐だと思いますが、人情物。ウルっと来ました。ところで、著者の作品の映像化には濱田岳さんの出演が多いなあ。いい役者さんですねえ。

  • 伊坂幸太郎さんの本を読んでいて本当にすごいなと思うのは、登場人物を忘れずに覚えていられること。私の物覚えが悪いだけかもしれないけれど、登場人物に魅力がなかったり曖昧なキャラ設定だったりすると、ストーリーもすぐぼやけちゃう。

    今回もキャラが確立されているからストーリーに入り込みやすかった。あと、会話が魅力的。変化球が多くてイギリス人のジョークみたいで好き。

  • 四つの短編から構成される。みんな大好き黒澤も登場する。

    タイトルにもある、「動物園のエンジン」、「サクリファイス」、「フィッシュストーリー」のいずれも名作であるが、やはり「ポテチ」は心を打つものがある。

    オーデュボンの祈り、ラッシュライフ、重力ピエロとのリンクも感じれる「ポテチ」。

    学生時代に読んだときは、感動するな〜程度だった。しかし、約10年近い時を経て、改めて読み直し、物語の真相に近付くとき、読む手が止まらなくなる。「彼の孤独が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さにら鯨でさえ逃げ出すに違いない。」ほどの孤独を抱える心優しき彼のの苦しみやその優しさ、強さに心が打たれる。

    真に優しくて強い人はこういう人なんだなあ。

    「黒沢さん、俺、どうすりゃいいんですかね」
    「何もしないでいいんじゃないのか」

    無責任なことは言えないけど、
    だいじょうぶ、何もしないでいいんだよ
    そのままでいいんだよ、と伝えてあげたい。

  • 4編からなる中・短編集。
    登場人物が作品を超えてリンクするので、本当に面白い。
    伊坂氏は文章、構成とも素晴らしい。
    伊坂作品はすべて読んで揃えたいと思いました。
    「アヒルと鴨~」という面白い作品があるらしい。
    探してこなきゃ。。

  • 本棚整理してたらいつ買ったか分からない未読書がポロポロ出てきたので、せっかくなので読了。
    伊坂さんにありがちな、ハードな部分もなく気軽な気持ちで読めた作品。
    個別でいうと、タイトルにもなっているフィッシュストーリーがよかったな。時系列が前後しながら、全然関係ない話が、色んなキーワードで薄く繋がってる感じが心にすっーっと入ってきました。
    サクリファイスはミステリ好きからすると一番しっくりきたかな。

  • 風が吹けば桶屋が儲かる的な?

  • 中編小説4つが詰まったお買い得?な1冊。
    物語の展開もさることながら、登場人物の言葉一つ一つが実に印象深い。

    「サクリファイス」の中で黒澤が答えた「人を信じてみるというのは、人生の有意義なイベントの一つだ」は特に印象深かった。
    自己防衛の言葉なのか、戯けてみせたのか、相手に対する本心での信頼か、、、どちらにしても自分が置かれた環境の場面場面でこういう気の利いた切り返しができるようになりたいな、と思う。

    あと、笑いたくなったら「ポテチ」を読み直そうと思う。
    「これ一枚一枚はポテトチップというのが正解なんでしょうね」とか、一見しょうもないことにも真剣さを映し出す言葉って、見ていて楽しい。

  • 閉園後の夜の動物園での男の不審な行動を探るものや売れないバンドが制作した曲がその後何十年後もひっそりと誰かに受け継がれているものを描いた物語から成る伊坂幸太郎の短編集。

  • 短中編集で、黒澤さんも登場するのが嬉しい。
    久々に伊坂幸太郎の本を読んだが、やはり独特の世界観が心地よい。
    表題作のドミノ倒しのような展開は著者の真骨頂だと思うが、ミステリっぽい「サクリファイス」もよかった。

  • 再読。
    4つの短編集。
    フィッシュストーリーとポテチが好き。
    伊坂さんの描く人物達は、こんな友人いたらいいなぁと思わせてくれる。

  • 4つの物語から成る1冊。これまでの読者には嬉しい仕掛けがいくつかと散りばめられてる。こういうの何か嬉しいよね。特別感というか。表題作も好きだし、「ポテチ」も好き。ポテトチップス使って例えるなんて本当すごいなと思ったし、感動してうるっときた。

  • 短編集はやはり少し物足りないなぁ、と思ってた。けど、フィッシュストーリーとポテチは良かった。
    ポテチの塩味とコンソメ味を取り違えた際に大西がそれはそれで良いと言ったことに対して、今村が号泣したりする場面とか、あとからそういうこと(赤子の取り違え)だったんだ!と分かったときは鳥肌たった。

  • 「英語で『fish story』 ってのは、ほら話のことだ」(205p)

    伊坂は「ほら話」の力を信じているから、ほらの中に真実があると信じているから、 小説を書いていられるのだろう。

    「だいたいさ、正義なんて主観だからさ。そんなのふりかざすのは、恐ろしいよ」
    「おまえはいつも難しいことを言う」と父が苦笑した。
    「だから、結婚できないのかね」母がまた言う。(148p)

    そして、多分「正義」を信じている。(私と同じように)ずいぶん捻くれた信じかた 、だけど。

    「フィッシュストーリー」他三遍の中編含むこの本、伊坂ファンとしては珍しくこのの作品を見落としていた。同じような題名が多いので、読んだものと思っていたみた いだ。今回映画「ポテチ」上映を記念して読んでみた(これを書いている時点ではまだ未鑑賞)。帯に出演者の名前に、濱田岳、木村文乃、大森南朋、石田えりの名前がある。主人公今村に濱田岳は決定しているだろう。となると、ちょっと捻くれた恋人大西は木村文乃という新人なのか。多分黒澤は大森南朋だろうな。脳内映写をしながら読み進めていったのだけど、途中で話の大筋は分かってしまって、何処に落ちるのかだけが関心事だった。木村文乃の出来が総てを決めるような気がする。結局「ゴールデンスランバー」のような多くの伏線を回収する爽快感は無い。一体これをどうやって二時間の映画に仕上げるというのか、私の関心はそちらに移って行った。

    「これ、いい曲なのに、誰にも届かないのかよ、嘘だろ。岡崎さん、 誰に届くんだよ。俺たち全部やったよ。やりたいことやって楽しかったけど、ここまでだった。届けよ、誰かに」五郎は言って、そして清々しい笑い声を上げた。「頼むから」(200p)

    そして伊坂は「希望」を信じている。(私と同じように)ずいぶん捻くれた信じ方だけど。

    そして、映画を見た。配役予想は全員合っていた(←流石、私)ところが、想定外だったのは、映画作品には珍しい中篇映画だったのです。見終わった直後に書いた感想をそのまま載せる。
    評価は五点満点で四点。

    原作を4日前に読んだばかりだった。こんな中編を何処まで膨らませるのかと思いきや、どんどん進んで行ってあっという間にラストへ。後で確かめると、たった68分の中編だった。 いつも通り、原作通りだ。若葉さん役の木村文乃があんまりすれっからしじゃないのは意外だったけど、これはこれで良い。本で読むより展開が速くて、ついついラストでは、若葉さんと同じで「たったこれだけのことなのに」泣いている私がいた。結果を総てわかっている筈なのに…。いや、一つだけ。中村監督が重要な役で出ていて、初めてお姿拝見したけど、名前と作風からしてもっとスリムな人だと思っていました(^_^;)。

  • やっぱり大好き伊坂作品。
    どの話も、結末の全てまでは描かず解釈を読者に委ねているようなところが共通しているのかな、と個人的には理解した。

    【動物園のエンジン】
    タイトルも内容も、これまで考えたこともなかった言葉の使いかたの連続で楽しかった。伊坂さんは、何といってもこの会話劇が醍醐味だと思っている。

    【サクリファイス】
    「過激で、分かりやすいやり方のほうが、人を惹きつける」という表現。マリアビートルかな? どこかで見た気がする。

    【フィッシュストーリー】
    バンドパートが一番熱かった。一発録りの提案からレコーディングのシーン。
    ジャック・クリスピンが一部のロックファン(世界を救ったバンド)に愛されているミュージシャンとして登場したことが、何ともうれしい。

    【ポテチ】
    再登場の黒澤。温度や感情がないようで、好感や信頼を感じる魅力的な人物。
    今村の愛おしさ、大西のさっぱりした気持ちよさ。
    何気ないところが伏線になっていて、読後感は最高に爽やか。とても好きな話だった。

  • 10年以上前に読んだかな。
    なんかちょっとした行いが他人にちょこっと影響を与えて、さらにその他人の行いが、また別の他人に影響を与える。
    そんな繰り返しによって世界の大きなことにポジティブにもネガティブにも影響を与えていく。

    現実でも身近のちょっとした行いが、世界を変えていると思わせた一冊。

  • 時代を超えて正の連鎖が生まれてるのいいなー
    夢あるなー

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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