旅の終りは個室寝台車 (新潮文庫 み 10-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101268057

作品紹介・あらすじ

無類の鉄道マニアが、鉄道嫌いの若い編集者を伴って旅に出る。悲劇・喜劇の珍道中。門司・福知山間を18時間かけてのんびり走る日本最長鈍行列車の旅。東京・大阪間を国鉄を使わずに私鉄と私営バスだけを乗り継ぐ旅。東京から九州まで四国をまたいで中央構造線を辿る一直線の旅。etc.鉄道マニアとアンチ鉄道派の相棒がくり広げる珍道中。

感想・レビュー・書評

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  • 曽良にヒマラヤ山系氏、そしてカミムラさんに至るまで、旅は道連れ、様々な彩りを作品に与えてくれます。だけど一方で、同行者のキャラクターに頼りすぎると内輪ネタオンリーの駄文になってしまう。相方をネタに話を作るのは、一種のギャンブルです。

    その点本作は、相方のキャラが立ちまくっているのに作者のいつもの味が損なわれていない、いや、むしろ倍加している稀有な傑作です。

    根っからクルマ派の藍君は時に宮脇先生を呆れさせたり憤慨させたりしますが、そのマイペースぶりは実の所先生のお気に入りらしく、淡々とした筆致の中に時として慈愛さえ感じられます。藍君も仕事と割り切る風でありながら、無茶な企画で先生を振り回したり、いつの間にか時刻表を使いこなしたりと、中々の巧者です。

    津々浦々の車窓とダイヤを肴にした、どこかとぼけた珍道中。宮脇本の中でも屈指のお気に入りです。

  • 一人旅を基本とする宮脇氏の、珍しくお供を連れての旅行記。
    それも、同行者は鉄道ファンではなく「ぼくは、汽車よりクルマのほうが好きだなあ」と、相手の思惑など顧慮せず、条件反射的に自分の所感を即座に述べる編集者の藍君。

    宮脇氏の他の作品よりも、ヒマラヤ山系氏を同行させた内田百閒先生の「阿房列車」に近い感じになっている。
    宮脇氏の意地悪な部分も垣間見る事ができたり、はじめはついてくるだけだった藍君が、1040kmも走る特急「白鳥」に全区間通して乗ってみたいと言う宮脇氏に同調したり、プラン作成にも関わってくるような変化が見られたのも面白かった。

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著者プロフィール

宮脇俊三
一九二六年埼玉県生まれ。四五年、東京帝国大学理学部地質学科に入学。五一年、東京大学文学部西洋史学科卒業、中央公論社入社。『中央公論』『婦人公論』編集長などを歴任。七八年、中央公論社を退職、『時刻表2万キロ』で作家デビュー。八五年、『殺意の風景』で第十三回泉鏡花文学賞受賞。九九年、第四十七回菊池寛賞受賞。二〇〇三年、死去。戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」。

「2023年 『時刻表昭和史 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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