偏愛記: ドストエフスキーをめぐる旅 (新潮文庫 か 69-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101275314

作品紹介・あらすじ

2008年、モスクワ・クレムリン宮殿最大の広さと威容を誇る純白の大広間。ロシア語とロシア文化の普及への貢献を理由にメダルを授与されたわたしは信じられない思いだった。かつてソ連留学中にスパイ容疑で尋問を受け、死ぬほどの苦しみを味わったわたしが、なぜ――。ドストエフスキーの作品と生涯に、自身の葛藤を重ねた自伝的エッセイ。『ドストエフスキーと59の旅』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 2016 1.18

  • 100分で名著だったか、筆者が罪と罰の案内人として登場したときの穏やかな文学者といった印象だった。文学少年時期の強烈な文学体験やソ連留学時代の監視など、回顧エッセイ集。文学から受ける刺激が強いから、自分の世界と外界の変化に敏感なんだろうか。タイトルのごとく、ここに書かれているものは筆者の恋するものではなく、偏愛するもの。

  • おすすめ資料 第206回 (2013.10.4)
     
    タイトルに驚くかもしれませんが、本書はロシア文学者亀山郁夫氏による自伝的エッセイ集です。

    読み進めると、亀山氏の子供のころからのドストエフスキーとの心のつながり...愛情がひしひしと感じられてきます。
    合間合間に氏の多忙な毎日も描かれ、大変おもしろいです。

    秋の夜長にぜひ読んでみてください。
    表紙の2人の共演もくすっと笑えますね。

  • 著者が途中ドストエフスキーと離れていた時期があったというのがもっとも印象的であった。それから、パソコンを駆使して仕事に当たられているというのも少し驚きではあった。私はというとパソコン環境があまり良くなく、ネットをつないでいると、動きが非常に悪くなるため、なかなか思うように調べものもできない。どうやら、ファンがうまく動かないようで冷やしながら使っているような状態。いよいよ購入時か。(その後、新しいパソコンを購入しました。)やはり一番興味深いのは著者の青年時代。学生運動とどう距離を置いて付き合ってきたのか、文学に対してどう見栄を張ってきたのか、あまりくわしくはないが恋愛についてなど。そして、「罪と罰」はいつ読むのか。「悪霊」は読むべきか、よすべきか。「カラマーゾフ・・・」をいつ子どもに読ませるのか。・・・

  • 翻訳者ではなくエッセイストとして。

  • 著者の幼少期からのドストエフスキーとの出会いに始まり、学生時代に経験した学園紛争での裏切りユダのような原罪意識。三島事件、連合赤軍リンチ事件、また原書で「罪と罰」にチャレンジすることになった切っ掛けと経緯、1984年8月のソ連に監視される中での怖い旅行記、そして2008年プーシキン賞表彰式のロシア訪問。このロシア文学者の人生の波乱に満ちた半生が楽しい。この年のスメルコフのオペラ「カラマーゾフ」上演の際の著者の予想が当たった記事は面白い。大審問官のシーンがフィナーレだと!。大学者ではなく、非常に人間的魅力に富んだ人物のエッセイで、この人は本当にドストエフスキー好きであり、その故にこそ、カラマーゾフの新訳が大ブームを起こしたことが納得できる。

  • ドストエフスキーの研究で一躍脚光を浴びた亀山郁夫教授による『ドストエフスキーと私』という自伝的なエッセイです。13歳での『罪と罰』の出会い、大学卒業時の『決別』そして再会…。筆者の人生観が窺えます。

    『カラマーゾフの兄弟』の新訳で一躍脚光を浴びた亀山郁夫教授の『ドストエフスキーと私』という副題がつきそうな自伝的なエッセイです。13歳で『罪と罰』を読んで以来、連合赤軍事件が発生した日時と同じ瞬間に書き上げた『悪の系譜』という卒業論文を機に、一度はドストエフスキーから『決別』し、スターリン時代のソ連における前衛芸術を研究する中で彼等の中にある『二枚舌』に気づき、その成果を後年のドストエフスキーの研究に役立てる…。なんともドラマティックなエッセイの中に潜む『父親殺し』の影…。『人間の業』を余すところ無く描くドストエフスキーの作品の中に自分の人生を重ねる…。過去に何人もの人間が『同じ道』をたどっているであろう経験をもう一度こうしてたどってみると、とても感慨深いものを感じました。

    しかし、旧ソ連時代にとあるきっかけで秘密警察に逮捕され、6時間の尋問を受けるくだりは、やはりとてつもない恐ろしさすら感じてしまいました。さらにはシンポジウムや個別の対談で高村薫女史や、平野啓一郎氏などの著名な作家とのやり取り、高村女史が『悪霊』の主人公であるニコライ・スタヴローギンにシンパシーを感じているという言葉はとても印象に残っております。

    移動、また移動の生活の中で『罪と罰』の翻訳と戦う亀山教授の奮闘する姿もとても心の中にあり、この苦労があってこそ、21世紀の日本にドストエフスキーが甦ったんだなとそんなことを考えておりました。

  • (欲しい!/文庫)

  • スリリング

  • 祝文庫化!

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    「2008年、モスクワ・クレムリン宮殿最大の広さと威容を誇る純白の大広間。ロシア語とロシア文化の普及への貢献を理由にメダルを授与されたわたしは信じられない思いだった。かつてソ連留学中にスパイ容疑で尋問を受け、死ぬほどの苦しみを味わったわたしが、なぜ――。ドストエフスキーの作品と生涯に、自身の葛藤を重ねた自伝的エッセイ。『ドストエフスキーとの59の旅』改題。」

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著者プロフィール

名古屋外国語大学 学長。ロシア文学・文化論。著書に『甦るフレーブニコフ』、『磔のロシア—スターリンと芸術家たち』(大佛次郎賞)、『ドストエフスキー 父殺しの文学』『熱狂とユーフォリア』『謎とき『悪霊』』『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』ほか。翻訳では、ドストエフスキーの五大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)ほか、プラトーノフ『土台穴』など。なお、2015年には自身初となる小説『新カラマーゾフの兄弟』を刊行した。

「2023年 『愛、もしくは別れの夜に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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