- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288239
作品紹介・あらすじ
ついに工事が始まった。大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。百姓たちは汗水を拭う暇もなく働いた。「水が来たぞ」。苦難の果てに叫び声は上がった。子々孫々にまで筑後川の恵みがもたらされた瞬間だ。そして、この大事業は、領民の幸せをひたすらに願った老武士の、命を懸けたある行為なくしては、決して成されなかった。故郷の大地に捧げられた、熱涙溢れる歴史長篇。
感想・レビュー・書評
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一大事業がはじまった。巨石を運び、水門を築く百姓たち。大河の土手には、工事が失敗したら見せしめに庄屋たちを吊るすための5本の磔柱が立てられた。大河との合戦に終止符を打つためには神への供物が必要なのか…。
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江戸時代の筑後川治水工事の話の後編。難工事ではなく、一冬の間に堰渠は完成。順調に話が進むと思われたが、試験通水で戻り水が起こり、死者を出してしまう。しかし、菊竹源左衛門によって、五人の庄屋は救われた。いい話でした。
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菊竹様ーーーー
元助が幸せになって(なりそうで)よかった。
棟梁の銀さんが上司にほしい。 -
下巻は菊竹様に涙…こんなに農民想いのお奉行様は居ないだろうけどたとえフィクションだとしても泣けます。水神、ってこの人のことだったのか。。嘆願書という名の遺書、心にきました。
大石堰出来て、こんなに大量の水を見たことがない村民が川の側に佇んで日がな一日眺めてる気持ちもわかるし、あの水流を何かに利用できないかと考え始める村民もいて、治水工事思い立って嘆願した五庄屋たちは救われただろうなと思いました。元助と伊八も田んぼが作れる。
藤兵衛さんもよかった…上巻でなんて嫌な爺と思っていましたが、耄碌してたと自分の間違いを認めてずっと苦しんでたんだな。。磔台の酷さをまざまざと目にしてたというのもあるんだろうけど。
この辺りの人たちの苦労を知っているから、町の商人も阿漕な事はしないのが良いです。阿漕なのはこの後の奉行…年貢高上げたらしいから。。
あとがきに「時代小説は武士や町人ばかり、舞台も江戸や大阪。この頃の人口は八、九割が農民だろうし大半は地方に住んでる」とあって、確かに、と思いました。多く記録残ってるだろうしドラマチックに描けるのは侍や町人なのだろう。でも農民を描いてもここまでドラマチックに出来るのは、このエピソードの魅力と帚木さんの筆力なのだと思います。
筑後出身の同僚はこの大石堰でなく、長野堰とかは見学に行っていたそう。どうやら大石堰は昭和28年の筑後川氾濫で壊れて建替られてるそうで……でも当時の石は近くに残されてるみたいなので見に行きたいです。 -
素晴らしい。感動した。読後感も良い。
縄田さん絶賛も新田二郎賞受賞も大いに納得で
登場人物に対する抑制された愛情を感じた。 -
涙なしでは読めない。
水神となった菊竹源左衛門。武士でありながらも、百姓の重要性を理解し、百姓こそが国の命運を握っている、と説いた。この言葉は恐らく、作者の今の日本の農業政策に対する、怒りの念も含まれているのだろう。
食こそが人間の礎であり、そのためには山や川に覆われた土地を開拓しなくてはならない。この本のおかげで農業や土木の重要性を再確認できた。そして、今の日本に最も欠けている点だと思った。 -
台地の田の水は人力で汲み上げるしかない。しかも村全体の田圃の水を。
物語はこの[打桶]から始まり、堰渠をつくりあげるまでの百姓達の物語
瑞穂の国と呼ばれるこの国を作った先人達の苦労に、知らず知らずのうちに目が潤んだ。 -
読みながら胸が熱くなった。心の氷を溶かしてくれるような物語。ラストもすごく良い〜〜。