- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101290515
感想・レビュー・書評
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森見さんのデビュー作。
中々に森見ワールド全開で終盤あんまり理解できないところがあった。
けども、太陽の塔に対する恐怖の描写だったり、腐れ大学生の描き方はデビューから上手だと思った。
ただ、このキャラクターは一体なんなんだ?
と思ったり、結局これはなんのシーンなんだ?
と理解できないこともあった。
面白かったところもあったけど、超絶読みにくいところもあったりした。そんな感想です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ここのところ森見登美彦の作品をかなり読んでいるが、『夜行』の次くらいに好きだ。デビュー作なのにこんなにすごいとは予想外。いや、すごいからデビューできるのか。
最近の作風に比べると純文学寄りで少し難しいので、読む順番は間違っていなかったと思う。まだ読書歴が浅いころだったら、森見登美彦の文章に慣れていなかったら、それほど好きにはなれなかったかもしれない。
主人公の「私」は水尾さんという彼女にふられたばかりで、その後は水尾さん研究と称してストーカーまがい、いや客観的に見れば正真正銘のストーカーをしている。その衝撃的な事実から物語が始まり、その後は水尾さん研究の日常が語られるのかと思いきや、ほとんど友人たちとの出来事が中心に語られる。その姿は『四畳半神話大系』などにも共通する森見登美彦らしいあほらしいものだが、たまに挟まれる水尾さんとのエピソードは他の作品ではあまり見ないとても瑞々しいものだ。その描写はかなり少ないのに、語り口から水尾さんがどんな人なのか、「私」が水尾さんをどう捉えていたのかが見えてくるのが面白い。「私」は一応彼女には真摯な気持ちを向けていたようだ。それがわかると、あほらしい日常を送る男の話は、実は彼女との別れを少しずつ受け入れようとする男の話であるという物語の本当の姿に気づく。
森見登美彦でこんな切ない気持ちになれるとは思わなかった。 -
「生きよ、(けれども少しは)恥じよ」
よくある大学生の失恋物語だが、作者のセンスある言い回しと奇妙奇天烈の事件も相まってここひとつにしかない失恋ファンタジーという名の世界を作り上げてる。要所要所にツッコミ満載の事件が散りばめられていて最後まで飽きさせてくれなかった。 -
やられたッという感じですね。
文章はしっかりしていて、テンポも良くて、読みやすいです。
何となく夏目漱石センセを彷彿とさせるような、独特の文体も好みです。
文中に「ライ麦畑〜」や「共産党宣言」をパロった部分もあって、その遊び具合も絶妙ですね。
肝心の内容についてですが、アホ満載男汁祭りって感じ。でも、なぜか微笑ましく、最後の方は爽やかですらあります。
私の中で最高にオモロイ“青春小説”です! -
昨日京都大学北部祭にて森見登美彦さんインタビューを聞いて来たのでそれと絡めてお話しします。
インタビューの際にこのデビュー作である「太陽の塔」をよく出されていました、それくらい森見先生にとっては特別な作品なのでしょう。
作中に出てくる主人公は森見先生の人物像に1番近いらしく、当時はさぶざぶしい大学生だったそうです。「太陽の塔」を気にデビューが決まってから大学の研究はあまりやらなかったそうです笑
またヒロインに関してもちゃんと女性を描くのは恥ずかしいそうであまり触れないようにしていたみたいです、なんだか本当に主人公みたいですね!
まさに森見登美彦の原点であり、特別と言えるのではないでしょうか。星四つです笑 -
森見登美彦の世界観は何度読んでも素晴らしい。
主人公の京大の冴えない大学生(自分ではそうは思ってないかしれない)と、猫のように魅力的なヒロイン。何度読んでもこの組み合わせは最高。
主人公の凝り固まったプライドと膨大な知識から紡がれる偏屈な思想と、固い文体に独特のユーモアで語られる日々が、なんともいえない。中毒になる。 -
読んでなかった森見シリーズ第1弾。
水尾さんに振られてから、水尾さん研究と称して他人から見ればストーカー的な行為を続ける京大休学中の5回生が主人公。京都の町並みを楽しむのはさておき、本上まなみさんの解説の、「とどのつまり、ふられた男の子の真冬のさえない独白小説にすぎない」というのが分かりやすい。
水尾さんは、主人公から見た描写だけで、客観的にはよく分からない人だが、黒髪の乙女に繋がるのかな?