風と行く者 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101302850

感想・レビュー・書評

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  • 守り人外伝では前にもちょっとあったけど、この巻では若き日のバルサとジグロの護衛師稼業が、がっつり描かれている。

    20年前に護衛した旅芸人達を再び護衛することになったバルサの現在と過去とを描きながら二つの襲撃事件の真相が大きな円を描いて閉じられる、そんな感慨を受けた。
    でもやっぱりバルサとジグロのエピソードがいいなあ。
    互いに自分が死ぬよりも相手を失うことをなによりも怖れていて、そのために感情を動かしてしまう。
    特に若いバルサには複雑な想いがあるのだ。
    イライラしたり、やけになったり、焦燥したり。
    そんな姿を見ていると現在の彼女の頼もしい姿が、いろんな事を乗り越えてきたからこその姿なのだと分かって実に尊い。
    そして旅を終えて帰ってきたあとのタンダとのやり取りにホッとする。

    物語の個人的ハイライトはやっぱりジグロとバルサがケミルの丘で襲撃者と戦う場面。
    うん、かっこいい。

    それにしても彼女は本当にジグロの子供だったのかな?
    サリさんにしか分からないだろうけど。

  • 20年前、共に旅した旅芸人サダン・タラムの一行と偶然再会した女用心棒のバルサ。若き頭、エオナは何者かに狙われており、再び護衛をすることになったが…
    守り人シリーズの外伝が出ていたとは知らなかったので、文庫の新刊で発見してビックリ!20年前の回顧もあるので若いバルサとジグロの活躍もあり面白かった!
    今年は香君も読んだし、上橋さんの作品が2つも読めて嬉しい(*^^*)

  • 久しぶりのシリーズ新刊が読めて、すごく嬉しいです!

    相変わらず、バルサはかっこいいですが、ジグロと旅をしているときの未熟者のバルサも、それはそれでかっこいいなぁと思います。

    今回のお話は、現在進行の護衛の仕事を引き受けて、旅をしながら過去の思い出が進んでいきましたが、そこから、現在に繋がっている因縁や人物のからみが面白かったです。

    それぞれの人物に課せられた試練が、どのような思考で選択されて、結果まで結びついているのか、思考を共有しながら読み進めます。登場人物が多いので視点も多かったですが、立場ごとの生き方の違いから、気付くこともあって、心が動かされた場面も多かったです。

    死というものが、断絶などではなく、残された人のこれからの支えになっているという所がよかったです。物語の時間も、わたしの時間も同じように進んでいるのが嬉しかったです。

  • バルサのシリーズ。まだ続いてたんだ。
    もしかしたら育ての親の娘かもしれない、という設定とバルサと養父と一緒に旅した過去をまたなぞるような構図が面白かったです。
    昔は村から村を回って芸を見せる芸人集団ってもっと居たんだろうなぁと思います。テレビやラジオの普及によって、さらに言えば今はコロナの影響で舞台の配信なども盛んになって、その場に行かなくても芸能が楽しめる時代になりましたが、良い悪いという話ではなく、こういうところから芸事というのは始まったのかな、なんて読んでいて思いました。

    今回は当事者だけでなく、第三者としてのバルサの視点があって本当に良かったなと思いました。どうしても対立した時は自分の側の方で物事を判断しがちですし、どちらに肩入れするのでもなく、違う視点から見るとまるで違う意味を持ってくる、という事は多々あると思うので。

  • 守り人シリーズでこれだけ未読だったので、文庫化を機に読んでみた。
    その前に、シリーズの話もだいぶ忘れかけてるので軽くおさらいするつもりで「精霊の守り人」を開いたらやっぱり面白すぎて全巻一気に読み返してしまった。巻数が多すぎて面倒になって登録サボっているけど…。
    守り人シリーズ、人やすべての生き物が生まれ、子をなして死んでいき、ずっと続いていく…という営みに優しい愛がそそいでいて大好きなんだけど、この巻は特に人が愛しあうこと、そして死と受け継ぐものに焦点が当たっている印象。著者もメイン読者も年を取ったと思うが、年を取った心にじんわり沁みてくる話だ。けっこう大人な話が混ざるので、ジグロにそんな過去があったのか…とドキドキしたし、回復したタンダとバルサが幸せそうに一緒にいるのがとてもよかった。
    伝わらないものがあり、伝わるものがある。今見えないものがあり、後になって見えるものもある。それでも私たちは、今ここにいない人の後姿を思い浮かべて進むことができるのだ。この作中でもいろいろな親子関係があり、愛の形があるけれど、何をどのように受け取り、どう進むかはその人自身の手にゆだねられている、というのが面白いなと思った。作中の登場人物みんなに幸せがありますように、と願わずにはいられない。

    • 高倉の健さん
      作中の登場人物みんなの幸せを願うサマさんが優しいなあ、大人だなと思います。
      ホントにステキな読書体験をさせてくれますよね、もりびとシリーズ。...
      作中の登場人物みんなの幸せを願うサマさんが優しいなあ、大人だなと思います。
      ホントにステキな読書体験をさせてくれますよね、もりびとシリーズ。 説明できないけどホロリときます。
      2022/09/01
    • サマさん
      高倉の健さん、どうもありがとうございます。守り人シリーズ、いいですよね!ステキな読書体験、非常に同感です。壮大な物語世界の神秘を解き明かす視...
      高倉の健さん、どうもありがとうございます。守り人シリーズ、いいですよね!ステキな読書体験、非常に同感です。壮大な物語世界の神秘を解き明かす視点と、人々の素朴な生活と感情を見守る視点が一緒に迫ってきて、私も読むと胸がいっぱいになってしまいます。
      2022/09/01
  • 16歳のバルサの旅と、今のバルサの旅を重ね合わせながら流れる物語。

    不器用だけど静かに包み込むようにエオナを見守るバルサの姿に、ジグロが重なる。
    バルサの中にはジグロの生き様が刻み込まれているんだなぁと、とても感慨深くなった。

    もう一度この物語に出会えて嬉しかった。
    私もチャグムの婚礼の話を読んでみたい!

  • それぞれの立場で、重大な影響を与えかねない判断を迫られる女性達。親から子へ直接は伝えられなかったが、何らかの形で引き継がれていた事がその判断を助ける。
    バルサがたまたま出会い護衛することになった旅芸人は、バルサが16歳の時に護衛したことがある一座だった。
    親子の絆の物語だ。

  • 本編終了後から始まるので、すわ新シリーズ開幕か!と期待したら、メインは過去の若かりし頃のバルサとまだ存命中のジグロの話だった。
    終章の最後、バルサがまた旅からタンダの元に戻ってからのやり取りがしみじみとした幸福感があって良い。

  • 守り人外伝。
    あらすじ
     サダン・タラムとは、死者の魂を鎮めるために歌い踊る楽団。普段は島に住んでいるが、旅をしながら鎮魂していく。ターサ氏族とロタ氏族の間に生まれた人が多く、そのためアール家の当主を尋ねていくのも大きな目的だ。バルサは20年ほど前、ジグロとともに、当時の頭サリが率いる楽団を護衛しながら旅をした。そして今、サリの娘エオナが率いる楽団と出会う。もしかすると、エオナはジグロとサリの間に生まれた娘かもしれず、バルサはほっとけなかったため、また護衛のダビに出る。20年前と同じように楽団・エオナは命を狙われる。理由はアール家の森、「王の谷間」に眠る当主の墓にある秘密。その当主はマグア家ものに毒殺されたのだった。それを隠すために20年前も今もサダン・タラムの頭は命を狙われたのだった。
    《感想》20年前の、やせっぽっちで16歳のバルサと、ジグロ。そして現在のベテランになったバルサの旅が交互に描かれている。16歳のバルサはまだまだ未熟で、経験もほとんど無くて、でも他に生き方がないから歯を食いしばって生きている感じ。それにジグロを自分の人生に付き合わせているようで、サリと出会ってからのジグロの様子も気になって仕方がない。現在のバルサは落ち着いていて、経験も豊富でアール家とマグア家が共存するようなやり方も心得ている。作品全体がバルサの個人的な内容と、このシリーズでずっと安定しているしっかりした設定がうまく組み合わされて、内容の厚い作品だった。このままバルサの作品を息長く続けて欲しいと思う。

  • 久しぶりにバルサと長い旅に出た気分です。この、共に旅をする感覚は、このシリーズならではの感覚だなぁ、と思います。風景の描写から伝わる空気感、お料理の描写からは目の前に湯気の立つ器がありありと浮かぶようです。登場人物それぞれが痛みを抱えながら、決して下を向かない強さがあるところも、とても好きです。
    また一からシリーズを読み直したくなりました。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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