- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101303369
感想・レビュー・書評
-
こんなドラマチックなことはないと思うが、ついつい引き込まれてあっという間に読了。これが一昔前のサラリーマンだね。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
個人的にはとても楽しめた。主人公へ感情移入できた。
一つの切っ掛けから主人公の周りで不幸のドミノ倒しが始まり、周囲を巻き込んだ左遷に至る流れだ。
ただし、小説として面白いかと言われると微妙な感じではある。謎もなく、どんでん返しもなく、伏線もない。偶然やご都合主義な展開も少なくない。
前半は、三谷幸喜の脚本に見る意図しないドミノ倒しの雰囲気で面白い。作者は意図していないと思うが、ある意味でコメディー的でもある。
ただ、本作は大企業が舞台のため、近い規模の企業で働いた人間には共感されるだろうが、中小企業だと感覚的にピンとこない要素も少なくないと思われる。
自分がサラリーマンであり、ある程度の規模の企業に所属した経験があるから感情移入できるのだと思う。
サラリーマンで、上司と現場の板挟みに苦しんでいる人にはおススメだが、単純に娯楽小説を読みたい人には期待はずれかもしれない。 -
ありえないようでよくある光景。ほんのちょっとした不手際、それも客観的に見ればとてもくだらないもので、大の大人が右往左往する…。気が付けば大ごとになっていて、どうしてこんなことになったのかと思うが、元をただせば「こんなことで」と思うようなことばかり…。そういう意味では最初に間違いを犯さない、間違いに気が付いたらすぐに正す、当たり前で実はそれが一番難しいから最後に大ごとになるのだが、でも結局はそれにつきるのだろう。清濁併せのむとは言うが、濁りすぎているものはやはり吐き出すべきだ。
また、人事は感情的に行われるものであることも真実だろうと思う。評判の力とでもいうのか、所詮会社組織も人間の集まりなのだから。拾う神あれば捨てる神あり、そしてまた最後は人の力の及ばぬ「運」をつかめるかどうか、それもまた真実な気がする。 -
岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00615616
中堅損保、栄和火災海上の相沢靖夫は、秘書室次長で会長付の四十六歳。会長の絵の個展を企画したが、思わぬ窮地に陥ってしまう。絵を貰ったN証券社長から会長に一千万円の商品券が贈られたのを知り、口止め料二百万円を握らされたのだ。苦悩する相沢。そこに強面(こわもて)の経済記者の取材が……。悩みつつも職責を果たそうとする中間管理職を描き、感動を呼ぶ経済小説の傑作。『人事権!』改題。(出版社HPより) -
よくあることですが、何が出世か左遷か、微妙なとこですね。タイミングというか、運というか。リアルで楽しい本でした。
-
ザ・サラリーマン
-
企業小説は久しぶり。友人がこのジャンルの小説の感想を載せていたので、書評の評価の高いこの本を選んだ。一言で云うと、企業小説の形を借りた娯楽小説といったところか。会社の仕事に向かう責任感や頑張り、人事の軋轢や理不尽さ.などなどがよく著されている。臨場感もあり実感を感じながら読めた。2点マイナスにしたのは、前半の会長対応での行動に、やや不自然な甘さがあった事。後半の逆転劇が、ちょっと都合よく運び過ぎた感があることです。それでもハッピーエンドが良いし、楽しく読めました。
-
約四半世紀前、1994年に『人事』として出版され、改題して出版されたのが本書。中堅損保会社が舞台。会長の秘書室次長として勤める主人公。会長の描く絵画の個展を開催したことをきっかけに、妙なことに巻き込まれていく。
-
中堅の損保会社に勤める46歳の秘書室次長、相沢靖夫のサラリーマンとしての悲哀を描いた小説。
作者が文庫版あとがきの中で自賛している通り、30年近く前に発表された作品ながら、いまだに新鮮味を持って読めます。それだけこの作品が人間、少なくとも日本人の本質を突いているからだと思います。
社内政治やら忖度の世界に翻弄されつつ、悪戦苦闘する相沢に感情移入してしまうのは、彼の小心者だけど心根が真っ直ぐな、愛すべきキャラクターならではかと。しばらく先まで彼のことをずーっと読んでいたくなるような物語でした。
面白かったです。