- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307060
作品紹介・あらすじ
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように…。若者の祈りに応えて、北海道の小さな牧場に、1頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇が、幕を開けた-。吉川英治文学賞受賞。
感想・レビュー・書評
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「共感」に過剰な価値を置かれる雰囲気がある昨今。
「そうそう、私も!」「誰にでもそういうところはあるよね」
異質なもの、未知の世界にも自分の心を揺さぶる確かなものがあると宮本さんの描く競走馬を巡る本作から感じる。
誰もが抱く罪悪感、劣等感、競争心といかに向き合うか。
手に負えない状況、自分ではいかんともしがたいなりゆき、沸き起こる、抗えない感情に面して、人はどう対処するのか。
登場人物たちの所業を決して裁かず、描き過ぎず、人が動き、物語が展開していく。
作品にどっぷり浸る充足感がたまらない。
後編へ。 -
再読。
何度も読んでる大好きな本。
仔馬の誕生を軸に描かれる登場人物に魅力されます。
第一章の渡海博正の純粋さ、第五章の奈良騎手の部分は下巻を早く読みたくなるようなテンポで良いです。 -
『錦繍』では、宮本輝って女の心がよくわかる人だわって感動したものですが、『優駿』はけっこう男の物語です。それも、『青が散る』よりもだいぶん中年になった男の夢とロマンと欲望の物語(笑)27の女がのめり込めるような話ではなさそうですが、それでもどうしたことでしょう、ページをめくる手が止まりませんでした。
登場人物のそれぞれの過去や現在の物語をとても丁寧に描写してくれるのが、宮本輝作品の大好きなところ。主人公の和具平八郎・久美子の親子のみならず、博正、多田、誠、奈良... と、チェスの盤上を躍る駒たちのように、登場人物たちを物語の中心に集めてくる手法がとても鮮やかでした。
さて、舞台は整いました。続く下巻では、いよいよオラシオンと誠の2つの命が躍動していく(?)のだろうと思います。読むのがとても楽しみ。(Sept. 3, 2020 レビュー) -
久美子は羨ましいといえば羨ましいけど、恐ろしいなあ
登場人物のとことん自己中心的な人間臭さはもしかしたらこれまで読んだ宮本輝作品で一番かもしれない -
友人の薦め。ミラクルバード第3戦の描写は圧巻。北海道の牧場や競馬場の情景が目の前に出てくるようで面白く読めた。「ウマ娘。」で競馬を知った人にも読んで欲しいな。
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これ読んで馬が好きになった。めちゃ面白い。
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1987年吉川英治文学賞受賞
個人的宮本作品金字塔。
人物の主観が章ごとに変わり2回転ほどする。
どの章も生への執着が強く感じられとても良かった。 -
面白くどんどん読めた。久々の宮本輝、やっぱりいい。騎手も大変な稼業だな。引き込まれて読んだ。勝ち負けの世界に身を置くのは厳しい。強くないと生きていけない。人間のイヤなところ、汚いところ、あぶり出されています。