- Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101307169
感想・レビュー・書評
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色んなことを考えさせられました。ゆっくりと流れる物語も良いです。50才って本当の節目です。
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阪神淡路大震災の後に書かれた小説とのことです。
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遠間憲太郎は長年連れ添った妻とも離婚し、五十歳になりさらに満たされぬ人生への思いを募らせていた。富樫重蔵は大不況に悪戦苦闘する経営者だが、愛人に灯油を浴びせられるという事件を発端に、それを助けた憲太郎と親友の契りを結ぶ。真摯に生きてきたつもりのふたりだが…。人間の使命とは?答えを求めるふたりが始めた鮮やかな大冒険。
「BOOKデータベース」より
「魔が差す」ということばについて,的確に事例を挙げて説明した小説.
これも一つの側面であるが,これだけではない.
宮本輝氏の小説は,風景が目に浮かぶような精緻なことばづかいが秀逸と思う.登場人物は,人情に溢れていて,人として大切なことを説教じみてなくて教えてくれる. -
遠間憲太郎と富樫重蔵は、「生きて帰らざる海」を意味するタクラマカン砂漠と「世界最後の桃源郷」といわれるフンザへの旅を計画する。
陶芸店の店主の篠原貴志子、育児放棄されてきた少年 喜多川圭輔が旅の同行者となる。
50歳をこえた男たちの心は、常に揺れ動く。
自分のしてきたことに確信を持ったかと思えば、様々な出来事に紛動されて、自信を失ってしまったり。
人間とは、かくもちっぽけな存在。
だが、無限の可能性も秘めている。
「人間は、それらすべてを解決する巨大なエネルギーを秘めている。そのエネルギーの出し方や使い方が、わからないだけなのだ」
「何億兆年もの寿命を持つ星も、たかだか七十寝にゃ八十年の寿命をまっとうできるかどうかわからん俺も、そんなにたいした変わりはないって気がしてくるんや」
20年以上前に、著者が50代前半の頃紡がれた言葉の数々。
1995年の阪神大震災の被災で、人生観、生命観を大きく揺さぶられた。
そして、その後訪れたシルクロードへの過酷な旅の後に生まれてきた何か。
「海洋よりも壮大なる光景、それは天空である。天空よりも壮大なる光景、それは実に人の魂の内奥である」(ヴィクトル・ユゴー)
懸命に生き抜く中にしか、自分の使命を見つけることはできない。
読み続ける中で命の奥の奥から沸き上がってくる、宮本輝の人間賛歌。 -
やっぱり凄い。
またもや、宮本作品にどっぷりはまった。
登場人物達の会話が素敵で、私の人生の指針になりうる言葉が数多くありました。
『ゴムホースの原理』という考え方や
『正しいやり方を繰り返しなさい』という言葉は特に印象に残ってます。
情景描写も素晴らしく、まるで自分が砂漠に立っているような錯覚に陥りました。
宮本作品はどれも面白い。 -
上巻で政治批判が鼻についたと書きましたが、著者あとがきによると、この本を書く前に猛烈にこの国に怒りを抱いていたそうで……それでなのかと納得しました。
下巻では、圭輔くんの再生とともに、圭輔くんに関わる人達もこれまでの人生を振り返り、これから先をどう生きるか模索し、タクラマカン砂漠でひとつの結論に達します。
正しいことを繰り返すというのは、シンプルだけど、とても難しい。
自分なら、目指すことすらできないだろうなあと感じた。
ともすれば、説教くさいと感じられる場面もありますが、人生観や、厭世観に共感できる部分もありました。 -
見渡す限りの砂漠で、壮大な宇宙の中で、自分がちっぽけな存在であることにに気付き、自分が大きなものの一部であることに気付いて満たされていく。
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50のおっさん親友2人のナイスコンビが繰り広げる会話が魅力的で、ぎくっとするセリフがいくつもあった。
『人情のかけらもないものは、どんなに理屈が通っていても正義ではない』
⇒職業上真剣に気を付けなければなりません。
『なあ圭ちゃん、ザウルスはぬいぐるみや。~~~圭ちゃんがさびしいときに、いっつも側にいてくれた友だちやないか。ザウルスが側にいてなかったら、圭ちゃんは寂しかったやろ?つまり、圭ちゃんは、ザウルスに恩がある。』
⇒隣にいた、私が小2の頃から一緒だったぬいぐるみラッキーを抱き寄せてほろほろと涙を流しました。
そしてしまいには、『お前が、よるべない不安と恐怖の日々をおくっていた遠い昔、このぬいぐるみの小さな恐竜に、とてもお世話になったんだよと教えてやろう』で締めるあたり、はー、ため息もん。
この心の内1つで、ああこれは世の中なんだかなあとぼやいていた大人が何かしらを人生の真価として見出したんだろうなという余韻を残していて、根っこのない幸福感に包まれました。
また40歳になったら、とは言わず何遍も読もー。