流転の海 第8部 長流の畔 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307572

感想・レビュー・書評

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  • 宮本輝さんのファンなので文庫化を待ってました。

    東京オリンピックに向けて高揚していく社会。
    一方で熊吾の生きる力は衰えていき、房江はしぶとく変容していく。
    のぶちゃんは、どんな大人になるのかな。
    戦前から戦後にかけての松坂一家の家族史、次でどんなフィナーレになるんだろう。
    9巻目の文庫化が楽しみです。待ってる。

    2018/10/31

  • シリーズ第8部。嗚呼、一気読みしてしまった…。
    時は東京オリンピック直前。朝ドラ「ひよっこ」「まんぷく」、大河ドラマ「いだてん」の映像を重ねて、当時の街や人々の様子を想像して頁を捲る。私が生まれたのも東京オリンピック1964年で、遥か彼方のことのようであり、さほど昔のようにも感じないところもあり…。

    鋭い直感や豊かな人脈、そして物凄い破壊力を両立させて事業を拡大してきた熊吾も60代後半。何度も描写があるが、歯槽膿漏で奥歯が何本か抜け、糖尿病も進行している。気力体力にも陰りが見え、生来の刺激や変化を求める気質も、現実を受け入れなければならない。一旗揚げるのではなく、確実に食べていくことを。ところが、そんな時期にまさかの房江への裏切り行為。

    辛い生い立ちを抱え、夫熊吾の衝動や暴力によって振り回されてきた房江の寂しさや哀しみが丁寧に描かれる。読みながら私自身の辛苦も重ね、心が震える。

    男尊女卑が当然の時代で、妻、母親という立場はすべてを受容し献身的に尽くすものという価値観の中、妻房江が最後に感じた働く喜びと自立の誇りは、心を打つ。誰かのためではなく、自分が自分である房江の自尊心が嬉しい。

    全巻通じて、登場人物が非常に多い作品で当惑することもあったが、誰かの何処かに自分を重ねることができる。人の強さと弱さ。人生の喜びと哀しさ。淡々と粛々と丁寧に描かれる。いよいよ最終巻へ。

  • 読みごたえがあった。
    熊吾の失墜と房江の再起。
    伸仁も高校2年生になり、しっかりとしてしている。
    今後の家族のあり方がどうなって行くのか楽しみ。

  • 相変わらず2-3日で読んでしまう。そしていつも、男とはどうあるべきか、ということを教えてくれるし思い出させてくれる。早く次を読みたい。最終巻となる第9巻は新刊で出ているけど...文庫版で揃えたシリーズ、また文庫化を待とう...
    ほんとに面白い。

  • P158 熊吾曰く
    「また先の心配ばっかりしちょるんじゃろう。心配したら心配したとおりに事が運んでいくぞ」
    P373 房江思す
    先のことを心配したからといって、その心配が杞憂に終わったりはしない。心配すればするほど、その心配は心配したとおりになっていく。
    第九部へ。

  • 老いらくの恋ではなかったのか。
    一時の気の迷いで家族と距離を置かれてしまう、67歳松坂熊吾。
    それはそれで切ないなあ。
    仕事も、他人の世話を焼いているうちはいいのだが、自分の商売となるといつも足元をすくわれて左前になってしまう。

    愚かだと言えば愚かだ。
    毎度同じ過ちを繰り返す。
    それが性分だとしても、学習しなさすぎる。

    ただ、この時代の男として松坂熊吾が卓越しているのは、家族の危機には必ずその場に立ち会っていることだ。
    身体が弱くて何故か怪我しがちな伸仁の、命にかかわるとき。
    学校で伸仁が教師に理不尽な目にあわされていた時。
    熊吾は頼れる父としてその場に居合わせた。

    今回は房江。自らが蒔いた種とはいえ、房江が酔っ払って線路で動けなくなった顚末、城崎で死のうとした結果、自らの力で生きていこうと多幸ホテルで働き帰途に就く姿を、熊吾はしっかりと目を逸らさずに見届けた。
    これができない男に限って「いざという時に出ていけばいい」なんてうそぶくけれども、常日頃を見ようとしない人が、一体いつ「いざ」がわかるの?
    熊吾は仕事で忙しくしていても、女遊びをしていても、常に家族のことはちゃんと見ていた。

    けれど、仕事は逆にいつも抜けてるんだなあ。
    「こいつに任せておけばいい」と思うとチェックが甘くなる。

    とすると、熊吾にとって一番大切なのはやっぱり家族であって、だとするとこの展開は切ないのぉ。
    自業自得だけれど。

  • 流転の海 第8部。
    本書の半ばから話の展開がとても早い。気になって一気に読んでしまった。

    松坂熊吾と房江の夫婦それぞれの描写の対比がすごい。
    最終の第9部でどういう結びを迎えるか、楽しみ。

  • 全9部で完結する流転の海の第8部。正月休み中に読了。前巻のあとがきで房江がつらい思いをするとあったので読むのが怖かったのだが、それほどでもなくてよかった。予想通り市電は止まったけどね。今回も、人と人とのふれあいに胸が熱くなる宮本輝作品を堪能。麻衣子ってどういうつながりだったっけ?大河ドラマなので、全巻一気に読みんだほうがいいね。長期の休みのときに読んでいるので、最終巻は春休みや盆休みんかな。博美がやや可愛そうなのだが、彼女にも幸せになってほしいと思う。

  • 最高

  • んー。
    んー。
    しんどいなぁ。

    最終巻へ

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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