- Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101313528
作品紹介・あらすじ
新政府は東京遷都、廃藩置県など緊要な施策に次々と着手。明治天皇は西郷隆盛ら重臣たちが唱えた朝鮮出兵を自らの裁決で阻止するなど、若年ながら国家の舵取りについて重大な決断を下していく。また繰り返し行なわれた全国巡幸は、臣民の間に統一近代国家としての日本の意識を植え付けた。西南戦争を経て、国際社会の一員として成長した日本は、やがて自由民権運動の興隆を迎える。
感想・レビュー・書評
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エジンバラ公謁見◆元田永孚伺候◆藩ヲ廃シ県ト為ス◆天皇使節団◆日本の上将軍副島種臣◆江藤新平の首◆早蕨の典侍◆西国不平士族◆功臣賊臣西郷隆盛◆大久保利通受難◆琉球王退位◆グラント将軍日本の休日◆「教育勅語」前夜◆熾仁親王の憲法草案◆カラカウア王御一行様◆植木枝盛の自由民権
毎日出版文化賞
著者:ドナルド・キーン(Keene, Donald, 1922-、アメリカ・ニューヨーク)
訳者:角地幸男(1948-、東京都)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『文献渉猟2007』より。
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入院前に四分の三ほど読み、退院してから残りを読んだ。
読むペースが全然変わってしまい(遅くなった!!)、ちょっと復職後のことが怖くなってしまう。
それはさておき、第二巻。
明治二年から十七年辺りまでを扱う。
廃藩置県、西南戦争、大久保の暗殺に琉球処分、そしてのちに大正天皇となる王子の誕生。
知らなかったことだらけで、勉強になる。
元田永孚ら、信頼が厚かった侍講たちと、政府首脳との緊張関係とか。
海外の君主や要人との面会の際の儀礼をどうすべきかで激しい駆け引きがあったことなども、さもありなん、というなど感じはするが、とても面白い。
ハワイ王カラカウアの訪問と彼の野望(インドやタイなど東洋諸国で連合する構想)の件は、驚かされた。
最後の章では自由民権運動の盛り上がりと衰退を描いていて、その中で植木枝盛の個人史にもふれられていた。
めちゃくちゃな人、と言ってしまえばそれまでだが、自分を天皇と同一視し、遊郭に入り浸りながら日本での男女同権論の嚆矢となる文章を書いている。
この人の混沌ぶりが何かを語っているような気がする。 -
廃藩置県から自由民権運動、封建制度から立憲君主制、天皇を含め国民が変質していく過程
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幕末の日本の歴史が”外国人作者の眼”から俯瞰しつつ詳細に描かれています。
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第二巻は廃藩置県、明治6年の政変、西南戦争、大久保利道暗殺等、維新の激動の時が舞台となる。
時の指導者達が「玉」として天皇を利用する一方、単に象徴だけでなく、聖断に対して関与してきた姿も見て取れる。
明治天皇のお気に入り、即ち、ブレーンが誰であったのかも理解でき興味深い。この時期は木戸孝允に信頼を置いていたことがよくわかる。
以下引用
・大久保は望んでいた。天皇は大奥の暗闇から出て、まぶしい公衆の注目を浴びなければならないと。ヨーロッパの君主のように。
・西郷隆盛は今こそ改革の時であると決意した。
「華奢・柔弱の風ある旧公卿」を排斥し、「剛健・清廉の士」を天皇の側近に据えるべきであると。
・明治6年、学問の新しい日課表が既に天皇のために準備されていた。伝統的な東洋の学問と西洋の実学との均衡を保とうとする意図が明らかに見受けられる。(サミュエル・スマイルズ「自助論」が利用されている)
・岩倉邸での天覧能は、能の復活に極めて重要な役割を果たした。
(能は徳川幕府と繋がっていたため衰退していた)
岩倉は、海外でのオペラ体験を能舞台に連想させた。
外国の賓客をもてなす恰好の娯楽として能の復活を企てた。
・大久保暗殺後:天皇にも不満があった。薩長土閥で占められてきたこと。
広く天下の人材を登用すべき時である。東北の僻地にも用いるべき人材はいるはずである、と。この八月を以て天皇は北陸東海両道の諸県を巡幸する、と発表があった。大久保の死は、天皇に新たな責任感と自らに備わった威光を目覚めさせたようだった。 -
明治初期の時代に入ってきました。
少しずつ西洋の君主に近い存在に育てられていった様ですね。
この辺りは、貴族階級ではない維新の英傑達の意向が反映していたようです。
明治帝自信も、それを受け入れ率先して新しい君主像を作り上げていったことがよく分かりました。
興味深かったのは、維新を成し遂げた西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、伊藤博文などと、
それ以降政治に関与している人物に対する明治帝の好き嫌いがあったということ。
明治帝が西郷隆盛好きだったのは有名ですが、弟の西郷従道はよく思っていなかったみたいですね。
個人的に残念なのが、山岡鉄舟との逸話が全く取り上げてられていない点。
天皇の人柄を表す逸話が結構あるはずなのですが。 -
2008.8.23
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熊本城開放の行は山川ファン必見(笑)