東電OL症候群(シンドローム) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.07
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101316345

作品紹介・あらすじ

女なら誰しもがもっているんじゃないかしら、そういう堕ちてみたいといった感情を-。『東電OL殺人事件』に自らを投影した女たちの肉声、赤裸に語られた事柄は胸が潰れるほどの真摯な性だった。「逆転有罪」で迷走を続ける法廷、新たに起きる事件。死してなお強い磁力を発するエリートOLの眼差しが、日本社会の闇までをも浮き彫りにする。もはや瞠目するしかない、渾身のルポ。

感想・レビュー・書評

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  • 真実はどこにあるんだろう。
    考えさせられてしまうけれど、被害者の心の闇は何もわからず。
    前作のほうが読み応えがあったかな。

  • 東電OLの続編。相変わらず過剰な比喩表現が鼻につくが、圧倒的な取材力と、事件そのものがもつ異様さが存分に伝わって来る。

  •  毎晩、円山町に立つ東電OLの精神の闇について興味はあるが、殺害した犯人が冤罪であったこと、また新犯人像などには興味がない、読み物として一貫性はあるにしろ、同じことを何度も主張する意味が不明である。最大の読みどころは東電OLに共感する女性たちのインタビュー箇所かな

     以下は同事件を題材にした小説
    鳴海章『鹹湖 彼女が殺された街』(1998年、集英社)
    久間十義『ダブルフェイス』(2000年、幻冬舎)
    桐野夏生『グロテスク』(2003年:文藝春秋、2006年:文春文庫)
    真梨幸子『女ともだち』(2006年、講談社)
    折原一『追悼者』(2010年、文藝春秋)

    追記:『鹹湖 彼女が殺された街』『追悼者』二冊は未読

  • 電力会社のエリート社員だった女性が毎夜売春する生活を長期間続けた末殺害された実話をもとにしたノンフィクション小説執筆とその中から浮かび上がった現代の断層を描いたところ、女性読者から尋常ならざる反響が寄せられたそうだ。その多くは、敬慕する父を失い、エリートへの道を閉ざされて堕落へひた走った被害者への同情と共感だったというから、興味深い。図書館で借りた日に、3時間ほどで半分ぐらい読み進めた。元の作品も読んでみたい。

  • 題名から想像される期待した内容ではなかった

  • 震災による原発問題で東電が槍玉にあげられている最中に新証拠が出てきて再審の可能性もある(ということになった)のは、何かあるんではと訝しがってしまう。

    しかし、明らかに真犯人でないゴビンダさんが無罪から一点有罪となり、今もなお受刑中であるというのも腑に落ちない。

    この事件が時代の闇を象徴するのであれば、更に闇が深くなったと言える2011年には何が起きてしまうのか。

  • 『東電OL殺人事件』の続編。
    無罪判決から一転、有罪無期懲役を言い渡し、迷走を続ける司法。
    そんな中、作者は感想を寄せた読者に会い、話を聞いたりと被害者女性の闇に更に踏み込む。
    そうしていくうちに、社会の闇へ闇へと導かれる。

    2015.2.15

  • 冤罪の怖さ、無責任なメディアに言葉が出ない。

  • 326.23
    続編の本書から読んでしまったが、被害者である渡邊泰子さんが摂食障害であったなどの背景も興味深い一方、元東京高裁裁判官である村木保裕の少女買春については全く無知だったため後半かなり引き込まれて読んだ

  • 前作「東電OL殺人事件」に続き、この事件の被疑者だったネパール人が一審で無罪判決が出た直後、勾留され控訴されたところから、控訴審での逆転有罪判決、そして最高裁への上告までを描く。

    一応ノンフィクションやドキュメンタリーの体裁をとっているが、実際は前作同様、予断と偏見に満ち、不十分な取材の元、著者の心象がそこここに散りばめられた醜悪な文章で綴られた最悪なエッセイのようなもの。
    元になっている事件のほうが、大きな動きがなく、書くことがないためか、手紙を送った読者のことを書いてみたり、児童買春をした判事のことを書いてみたりと、前作以上に内容が散漫になっている。

    こんなひどい自称「ルポルタージュ作家」が、また「ハシシタ 奴の本性」のようなひどい事件を引き起こしている。下劣で卑怯な本性は推して知るべしである。

  • 『東電OL殺人事件』の続編。『東電OL殺人事件』は読んだのだが、続編の方を読んでいなかった。最近、無罪という形で決着したことで、この本が重版となったようだ。

    続編では、この事件に触発されたかのような事件の伝播が描かれており、それがタイトルにシンドロームと言葉を冠した理由なのだろう。現代の暗部をこれでもかと深く抉ったルポルタージュであるが、そこまで描くかと思う部分もある。

    それにしても謎の多い、衝撃的な事件である。

  • 著者はこの本の三本柱として「この事件に対する女性読者の感染」「わが国メディアの劣化」「司法の闇」をあげているけれども、正直言ってどれもそれ程深く掘り下げられていないと思う。裁判記録と、読者の紹介と、裁判官の不祥事について書かれているという感じ。著者の考えの部分が、どうしても考察というより妄想に思えて仕方なかった。東電OL事件の裁判に関わった裁判官の不祥事を追っているけれども、それがどう判決に影響を与えているのかがわかったわけでもない。ところどころ、それは東電OL事件にどう関係してくるの?と言いたくなるような項目がたくさんあって、まとまりがないように思えた。ただ、『東電OL症候群』というタイトルから、ひとりのジャーナリストが東電OL事件に突き動かされてこんなにたくさんのことを調査することになったっていうエッセイみたいなものと考えれば、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

  • 東電OL殺人事件の続編。
    裁判所でのやりとりの記述が多く、興味なく頭に入ってこなかった。筆者の考察を元にした調査が面白く、それがあまりなくて残念だった。

  • 最近の裁判をめぐるさまざまな報道や震災に対応する会社の苦悩などがこの事件と重なって、再度東電OL殺人事件を読み返してみた。この東電OL症候群と両方読むことで、最初は感じなかった作者が伝えたかったことが少しでも深く理解できたような気がしている。

  • そりゃ驚異だった。

  • シンドロームという題名ですが
    なんかしっくりこなかったです

  • 07.4.14

  • 東電OL裁判の途上
    関係者や裁判官にまで副次的な事件が波及・連鎖してゆくさまが
    まるで死者の手引きのようでもあり、
    皆汚いものなのよ、と、泰子が示唆しているようでもあり、
    そう思わせる現実の出鱈目さと相まって、非常に考えさせられる。

    堕ちて命をなくしたOL。
    それが死して尚、浮き彫りにし続けるものに深い感慨を覚える。

    自己を徹底的に罰しつづけ、遂には他者の動機を誘引し、破滅的な毎日から死へとダイブしたOLの凄まじさを、また考える。

    正直、読んでは考え、考えては読むにつけ思うことは、渡辺泰子は、僕自身でもあるという事であり、
    そう確信しつつ自ら恐怖もするのである。

  • 東電OLといったキーワードを使っているけど、
    中心に据えたにしてはなんか散漫な印象。
    それにしても、数年前、会社のあった渋谷から自宅まで歩こうと
    昼の円山〜松濤をぶらつき、モチロン神泉駅のところでは
    TVで見た記憶から現場となったアパートはあのあたりと確認して、
    杉並まで帰ったのだが、読んだ後だったら近づいたか疑問。

  • グロテスクを読んでいたのでそういうことだったのかと思って読んだ。孤独とずっと向き合ってきた被害者に共感をおぼえる女性も多いだろうな。でもその人を神格化するのは違うと思う。

  • 同著者の「東電OL殺人事件」の補足本とも言える、加害者の判決後のルポ。「東電OL殺人事件」の印象があまりにも強すぎたので、それに比べると印象は薄いが、事実と著者の思考が丁寧に突き詰められている様は見事です。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者、業界紙勤務を経てノンフィクション作家となる。1997年、民俗学者宮本常一と渋沢敬三の生涯を描いた『旅する巨人』(文藝春秋)で第28回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年、『甘粕正彦乱心の曠野』(新潮社)で第31回講談社ノンフィクション賞を受賞。

「2014年 『津波と原発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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