カデナ (新潮文庫 い 41-11)

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  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101318219

感想・レビュー・書評

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  • 三人の視点で描かれる、ベトナム戦争中の沖縄の夏。戦争、反戦、セックス、ロックンロール、そしてスパイ活動。

  • 池澤さんの長編というとじっくり向き合うエネルギーがないとしんどいかなと思ったけど、解説にもあるとおり1968年の沖縄を舞台にした”青春小説”ということで、すんなり入っていけた。沖縄のことは少しはわかるけれど、ベトナム戦争となるとほとんど知らない。テーマは重たいし、悲しいこともあるけれど、湿っぽくなくて、読後感も悪くない。

  • 沖縄嘉手納 アメリカ軍にとってはカデナ。
    アメリカ軍兵士にも苦悩はあった。戦火を潜って生き抜いてきた人の戦への気持ち、今戦火の中に暮らすベトナムの人たちの気持ちが一番わかるのは彼らかもしれない。沖縄に暮らす兵士と市民どちらも人間。フリーダ=ジェインと朝栄さんとタカと安南さん そして彼らの周りの人たち。丹念に語られるそれぞれの生きてきた様がちゃんとそこにある気がする。

    また沖縄でアメリカ軍兵士による事件がニュースになっている。基地の無い沖縄、いつまでも夢でしかないのだろうか

  • ベトナム戦争中に沖縄嘉手納に住んでいた3人の話。スパイ活動でハノイ住民を救うのだがハノイサイドの話が無いのでピンと来なく、会話調のため、一気には読んだもののダラダラと流し読みになってしまった。
    戦争は直接的にも間接的にも深い影と暗い記憶しか残らない。

  • 沖縄がまだアメリカだった頃、泥沼化するベトナム戦争のために爆撃機が行き来するカデナ基地を舞台に、沖縄人の日常、米国軍人の日常、その裏で行われたスパイ活動、反戦活動などを描いた物語。
    国籍やアイデンティティが異なる3人の主人公達が、葛藤したり葛藤しなかったりしながらとあるスパイ行為に「できる範囲で」加担するお話なので、メッセージは重いのだろうが、語り口は軽やかで、爽やかですらあったりする。
    沖縄の歴史を少し知って、印象がまた変わった。

  •  1968年の沖縄米軍カデナ基地が舞台。基地から北ベトナムへ飛ぶ戦略爆撃機、B-52を無力化するために、アメリカとフィリピンのハーフで女性空軍下士官ジェイン。アマチュア無線&模型店を営む嘉手苅朝栄。ロックバンドのドラマー・タカ。一見何のつながりもないし、CIAやKGBとは違う、いわば素人の3人がスパイ活動に関わった回想が交互にそれぞれの視点で描かれていく・・・・・。
     
     ラストちかくのB-52の離陸失敗事故の描写・・・当時実際にあった事件だったんだね!いまニュースを賑わせているオスプレイが、沖縄の普天間基地に配備される問題も改めて考えさせられる。帯には、「たった4人で100万人の命を救う方法。」と銘打っている。物語の根底には決して声高ではないが反戦平和が流れている。また、フリーダ=ジェインとB-52の機長・パトリックの恋いの行方というか、意外な結末も読みどころのひとつかも。
     ロケ現場に行く途中、雨のなか、駅前の店に突入。発売直後にかかわらず売り切れで、二軒目に、一冊だけあって、横から手が出て奪われるのではないかと(そんなことが前に何度かあったので)あわてて棚から引き抜き購入。そんな様子が「柔らかな犀の角 山崎努の読書日記」に綴られていた。
     俳優である氏がしゃかりきになってまで読む本って、一体何だろうっていう思いから興味をそそられ本書を手にした。ちなみ原作の映像化が、もしもあるとすれば、嘉手苅朝栄役だろうね。

  • テーマは重いが、語り口は軽やか。つるつると読める。
    しかし、語られる内容は、ベトナム戦争と太平洋戦争であり、沖縄がかかえる様々な状況だ。
    佐々木譲の解説が秀逸。

  • 沖縄の米軍カデナ基地を中心とした物語。1968年に米空軍Bー52爆撃機(BUFF)が基地に配備され北ベトナムを爆撃する為に定期的に飛び立っていた。沖縄の人達や基地内で働く軍人が情報を盗みスパイ活動をしていく。少しでも北ベトナムの人達の被害を減らしたいと考えるこうした活動は仲間を騙す事の苦痛を伴う。本当にこんな事はあっただろうと思うが、物語にはジメジメしたところは無く酸っぱい思い出という感じになっている。

  • これは上手いと思う。戦争末期の殲滅戦を経て(!)米軍基地の過重な負担(!!)をなお強いられている沖縄を舞台にして、サイパンの悲劇を引きづりながら(!!!)、ベトナム戦まっただ中(!!!!)という時代に生きる年齢も性別も違う3人を中心に描かれた、ひと夏の冒険。どうやっても重苦しくなりそうなシチュエーションなのに、突き抜けた明るさと誰にも覚えのある青春、恋愛が違和感なく存在しているのは、作者の通底にある無常観のせいなのか。ちょっと乾いた感じで、読後感も悪くない。夏に読んだのは正解だった。

  • ベトナム戦争を題材にした小説で、沖縄は嘉手納を舞台に、帯の謳い文句を参照すれば「たった4人で100万人の命を救う」ために奔走する男女を描いたお話。

    裏表紙のあらすじなどから、勝手に二転三転する知略戦や手に汗握るスパイ的な潜入作戦などを想像してしまいました。けれど、実際は一部そのような部分はありましたが、戦争に関わってしまった人たちの、普通の人目線のお話という印象。

    戦争の、特にベトナム戦争に関しては兵士の立場で描かれた映画や小説は多いと思いますが、一般人視点の物語は珍しかったので、割と興味を持って読むことが出来ました。ただ、帯の謳い文句にもありますが主要登場人物4人が「救った」というその数字は、過大評価し過ぎじゃないか?と思ってしまったのが正直な気持ち。

    状況的に、そうでも思わないとやっていられなかった活動だったのかもしれませんけど。

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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