- Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101329741
作品紹介・あらすじ
俺たちの呪われた運命に、ケリをつけてやる-。日本政府に対するケイたちの痛快な復讐劇が始まった!外務省襲撃を目撃した記者、貴子は、報道者としてのモラルと、彼らの計画への共感との板ばさみに苦悩。一方ケイと松尾は、移民政策の当時の責任者を人質にし、政府にある要求をつきつける。痛恨の歴史を、スピード感と熱気溢れる極上のドラマに昇華させた、史上初三冠受賞の名作。
感想・レビュー・書評
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本のバックボーンは極めてシリアスなのだけど、入念に練られた復讐劇そのものは、最高のエンターテイメントだった。ほぼ一気読み。こんなに面白い本があるのか、という感じだった。
ブラジル棄民日系二世ケイとテレビ局報道部貴子の恋愛は、外務省襲撃事件の犯人とそのスクープ者というありえないような緊張関係の中でのもので、ハラハラしっぱなしだった。
外務省で棄民政策を実行した人の言い訳、自己正当化を読むと、ナチスでホロコースト運行列車を忠実に運営したアドルフ・アイヒマンを思い出した。曰く、「私の罪は従順だったことだ。」
私に命令した人がいる、悪い人がいるとしたらそいつであって自分ではない、と言いたいのだろうけど、自分も命令する側でもあるのだろうから、思考停止としか言いようがない。
私の父は、この南米移民政策に応募しようと思ったことがあるらしい。何歩か間違えば、自分がケイになっていたかというと、流石にそれはないか。
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上下巻の作品って上巻がピークで下巻はそこまで……っていう経験が何度かあるのですが、この作品は上巻の勢いのまま最後まで読めた。
最後まで、この人死んじゃう?生き延びる?捕まる?逃げ通す?これが最後の別れ?また会える?とハラハラしながら読み進められました。
あくまでも作品の主役は復讐する側なので、キレものの警察が登場するのがだいぶ後半って言うのも面白かった。
事件をどう解決するか、はサイドストーリーで事件を通して何を伝えるか、が重要だった。
個人的にはケイ目線の世界も見てみたかったなあ。
衛藤のことや自分の境遇のこと、どう受け止めて生きてきたんだろう。
でもあの飄々としたケイのおかげで、テンポよく読み進められたところもあるのかな。 -
ハラハラ、ドキドキのハードボイルド! 先が気になり読む手が止まらない。無知だった日系移民の黒歴史。「知らないということは、それ自体で罪なのだ」の一文が印象的。犯行を応援し、逃げ切って欲しいと思った私は、やっばり寛容さと愛=アモルが不足している日本人なのだろうな。男臭プンプンの表現も多々。銃と車の細か過ぎる構造描写は、斜め読みさせていただきました。 -
第二次世界大戦後のブラジルへの移民政策についての史実をベースに、移民一世・二世、テレビ局ディレクターなどの人生を絡み合わせた物語がドキュメントタッチで描かれれいる。聞くに耐えない苦しみから主人公たちがそれぞれ、どうやって解放されていくか描かれており、長編にもかかわらずいいペースで読み切ることが出来た。最後がハッピーエンドを思わされる展開になっており後味が良く、気分よく読み終えることが出来たところも★5をつけた理由のひとつ。
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図書館で借りたのだけど、上巻より下巻の本の状態がいい。ということは、みんな下巻は一気読みしたな!と、勝手に解釈した。
という私も一気に読み終わった。
松尾の行方が気になるけど、幸せになっていてほしいなぁ。
知人のご両親も、戦後アルゼンチンに移住した方で、とても苦労したと聞いていたので(ジャングルではないけれど)、南米に渡った日本人のことは、もっと知っていてもいいのかもしれない。
つらいことを乗り越える強さ、過去を抱えて生きる強さ。
そしてラテンならではの明るさを見習いたい。
あと、個人的に秋津さんが気になったので、秋津さんのスピンオフ作品とか、あったら読んでみたいわー -
幼い頃、「何で南米の人なのに日本人みたいな名前なんだろう。。。」と疑問に思い、答えを知らぬまま時が過ぎましたが、この作品を読んで答えがわかりました。歴史は「授業で教えてもらう知識」という認識でしたが、教科書を作る日本政府にとって都合の悪い歴史は授業内容から取り除かれている情報も多い。知る為には自分で疑問を持って調べなければならないことを再認識しました。
まるで官僚による組織犯罪。省庁・政府・国会周りはグレーな印象を抱かせる問題提起が多いです。火のない所に煙は立たないと思うので、一般市民は日々国に対して興味を持ち続けなければならないと思いました。
また大きな組織にいると、他責の念から無意識に他人を傷つけているかもしれない怖さを感じました。今後仕事をする上でも、内向きな視線ではなく広い視野で判断を下していきたいと思います。 -
上巻で溜めに溜めたので、やっとスッキリできると期待大で読み進める。作戦第1はまずまず、さて第2は…。上巻がかなり暗く重い巻だった為、もっとすごい復讐になると思っていたのだが…。あんなにひどい目に会わされたのに、なんて良い奴ばかりなんだろう。『日本政府による棄民政策』で、あのアニメを連想し、何故かヒロインの貴子を好きになれず、(柴田よしきさんの『リコシリーズ』のヒロインを思い出した。)能天気なケイにもイライラし通しだったが、松尾に惚れてしまった!彼が生きていて良かった。こういうところが垣根涼介さんなんだな…、なるほど。
フィクションだが背景は歴史上の事実。だからこそ、この締め方は救われる。-
「もっとすごい復讐になると思っていた」
「なんて良い奴ばかりなんだろう」
↑
ですね。同じような感想を抱きました。
不思議な能天...「もっとすごい復讐になると思っていた」
「なんて良い奴ばかりなんだろう」
↑
ですね。同じような感想を抱きました。
不思議な能天気さというか、ラテン系の明るさというか・・・が、垣根ワールドの魅力かも、と。2017/02/16 -
俺もワイルド・ソウル読みました。すごく面白かったので、古いですが、今はヒートアイランドシリーズを読み始めました。
関係ないですが、ちえさん...俺もワイルド・ソウル読みました。すごく面白かったので、古いですが、今はヒートアイランドシリーズを読み始めました。
関係ないですが、ちえさんは道尾秀介は読みませんか?2017/08/24
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南米人の野放図で野心にまみれた生き方に刺激を受けた。貧しい環境で育ったからこそ培われたものであると思うので日本人が真似するのは中々難しいが、この本を読むとそのようなメンタルで生きようと思える。
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戦後の愚策、南米への棄民政策によって人生を狂わされた者達の復讐の話。詳しく知らんかったから勉強になった、読んでよかった!復讐者に肩入れして、先が気になり息をつく間も無く読み切った、圧倒的疾走感と爽快感。