きらきらひかる (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.78
  • (2659)
  • (2189)
  • (3782)
  • (311)
  • (73)
本棚登録 : 22471
感想 : 2597
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101339115

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 精神疾患を患う笑子と、同姓の恋人のいる睦月は結婚しているが周りはただ二人でいたいだけの状態を良しとしない。自分と違うことを認めましょうとはよく言ったもので、なかなか受け入れることが難しい世の中だ。平成3年に書かれたとは思えないくらいに時勢を切り取り、そしてこんなにも瑞々しいのは江國さんの文体によるものだ。昨今の凪良ゆうさんや千早茜さんといった大きな賞を取る女性作家の流れは、江國さん達が築き上げた上にあるようにも感じ、令和の今でも男女間の関係性や生きづらさが文学になっている。今読んでも考えさせられる。

  • 江國香織さんの短編でない小説を初めて読んだ。

    わたしは下戸なので、お酒に関して明るくはないし
    音楽性もないものだからここに描かれる嗜好に
    関して一切言及はできないけれど、
    この本全ての比喩がとても美しく感動した。
    優しい短い一文の中に、人物像や物事の
    本質が透けて見える。
    とても分かりやすく読みやすかった。

    同性愛者の睦月とその恋人、紺。
    睦月の妻である笑子。3人の奇妙な
    愛によってのみ成り立つ不安定な
    関係性が、読んでいくごとに深みを増し、
    どうかうまく行ってほしいと願わずに
    いられなかった。

    誠実であるためにどんな犠牲も厭わない
    つもりでいた睦月が、実は一番身近な
    愛するふたりに対してとても不誠実だったとして、
    それが彼を咎める理由になるんだろうか?

    ただ好きで一緒にいたいという根本的な愛の前で、
    他人であるわたしたちがどうこう言う資格は
    ないと思う。
    いろんな愛の形が、受け入れられて広く丸く
    収まっていけばいいなとおもった。

  • 不思議と笑子に共感してしまう。なんとなく憂鬱な気持ちから抜け出せない、どうしようもできない自分も他人も。この作品を読むとごちゃごちゃした私の、こんな日常の中にも、きっと物語がひそんでるんだって思えて、少し救われた気がしました。

  • 美しい小説だった。
    笑子が「ずっとこのままがいい」と願ったように、わたしもずっとこの物語を読んでいたかった。二人の生活をずっと覗いていたかった。

    笑子はとても純粋で、可愛くて。笑子がとってしまう行動は自分と重なるところもあって、やけに納得してしまった。そして、笑子を宥めるときの睦月は、恋人に似ている。

    笑子と睦月の性格が本当にすきで、この二人の名前が性格のイメージにあまりにもぴったりで感動してしまったほど。
    紺もよかった。すごく。

    何度も読み返したいとおもう。

    • 319mgさん
      >笑子と睦月の性格が〜
      という感想がどんぴしゃりで、感動してしまいました。
      笑子と睦月って本当イメージ通りの名前ですよね。

      睦月のような...
      >笑子と睦月の性格が〜
      という感想がどんぴしゃりで、感動してしまいました。
      笑子と睦月って本当イメージ通りの名前ですよね。

      睦月のような宥め方をしてくれる相方さんということで非常に羨ましいです(笑)

      読んでいる作品も似ているのでついコメントをしてしまいました。是非またレビューお願いします(^^)
      2012/05/17
  • わたしの中で、今のところ最高の、理想的な人間関係の形。好きなものを好きだと言って、個人だけで生きていけたらいいけど、簡単ではない。体裁とか普通とかそういう纏わりついてくるものを切り離せない。どうにかしたくて、自分のままで平穏に生きていきたくてもがいてる3人が、人生いろいろあるよね、のいろいろを内包した関係をなんとか構築していく話。笑子と睦月だけでもだめだし、紺と睦月だけでもだめで、3人が必要。大事なものがたくさん詰まっていて、ひとつひとつがきらきらひかるんだな、と思った。

  • こんな小説書いておきながら、あとがきで『恋だの信じるだの、無謀で蛮勇だ。』なんて言い切る江國香織が、私は好きです。

  • 江國さんの暖かい表現が素敵だった。

    笑子の人柄が好き。
    金魚の餌食べて金魚の気持ちがちょっとわかるところとか。

    笑子と、睦月と、紺くんとの幸せの形があるっていいなぁ。
    笑子のお父様が睦月を「おとこおんな」と称したところかなり辛かった。
    あと、笑子が、睦月が彼氏と別れたと報告しに行った時に笑子が「常識的な」と言ってたのが。

    嘘をついてでも今の幸せを守りたい笑子。

    三人同じマンションで、誰にも邪魔されずパーティをしていて欲しい家族。

  • 読み終わった後、頭がぼーっとしてふわふわとした感覚になりました。それくらい物語に引き込まれて、初めて一気に読み終えた本です。こういう関係があってもいいじゃないかと思う反面、ちょっぴり切ないなとも感じました。とにかく表現の仕方が独特でいて綺麗。江國さんの本をもっと読みたい!と思ったきっかけになりました。印象に残っているのが「羊羹のような闇」というワードです。ずっと手元に置いて何度でも読み返したくなる一冊です。

  • 自分の感じていることや思いが人から受けいれてもらえずに、自立できないことの辛さが繊細に描かれている。
    自分にとっての好きが、理解不能だと言われてそれを無くならせようとすることはれっきとした暴力だ。

    いろいろなしがらみから解放されたいと願いながらもその願いを叶えられず苦しんでいる人に読んで欲しい。

  • 読んでいるうちに、パンセクシャルとかポリアモリーとかそういう言葉が頭をよぎってしまったけどこの作品が書かれたのは1991年。私が生まれるよりずっと前のこの頃に、こういう関係や存在をカテゴライズする言葉はあったのかなあ。

    性欲が伴わない愛情、相手からの愛を独占できなくてもいいと思えるほどの愛、あまりにも尊くて羨ましくなった。体裁や従来通りの形を求める親たちとの関係に蹴りをつけ「独立した夫婦」となった2人(と、紺くん)。自由で愛に包まれていて憧れる反面、紺くんが大学を卒業したら?誰かの愛が欠け始めてしまったら?何かきっかけがあった時この3人を繋ぎ止めるものって何もないのではないだろうか。

    とにかく、この3人、そして同僚カップルの幸せな人生を願わされるような魅力的な登場人物ばかりの作品だった。

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江國香織の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×