- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101339115
感想・レビュー・書評
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精神疾患を患う笑子と、同姓の恋人のいる睦月は結婚しているが周りはただ二人でいたいだけの状態を良しとしない。自分と違うことを認めましょうとはよく言ったもので、なかなか受け入れることが難しい世の中だ。平成3年に書かれたとは思えないくらいに時勢を切り取り、そしてこんなにも瑞々しいのは江國さんの文体によるものだ。昨今の凪良ゆうさんや千早茜さんといった大きな賞を取る女性作家の流れは、江國さん達が築き上げた上にあるようにも感じ、令和の今でも男女間の関係性や生きづらさが文学になっている。今読んでも考えさせられる。
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江國香織さんの短編でない小説を初めて読んだ。
わたしは下戸なので、お酒に関して明るくはないし
音楽性もないものだからここに描かれる嗜好に
関して一切言及はできないけれど、
この本全ての比喩がとても美しく感動した。
優しい短い一文の中に、人物像や物事の
本質が透けて見える。
とても分かりやすく読みやすかった。
同性愛者の睦月とその恋人、紺。
睦月の妻である笑子。3人の奇妙な
愛によってのみ成り立つ不安定な
関係性が、読んでいくごとに深みを増し、
どうかうまく行ってほしいと願わずに
いられなかった。
誠実であるためにどんな犠牲も厭わない
つもりでいた睦月が、実は一番身近な
愛するふたりに対してとても不誠実だったとして、
それが彼を咎める理由になるんだろうか?
ただ好きで一緒にいたいという根本的な愛の前で、
他人であるわたしたちがどうこう言う資格は
ないと思う。
いろんな愛の形が、受け入れられて広く丸く
収まっていけばいいなとおもった。
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不思議と笑子に共感してしまう。なんとなく憂鬱な気持ちから抜け出せない、どうしようもできない自分も他人も。この作品を読むとごちゃごちゃした私の、こんな日常の中にも、きっと物語がひそんでるんだって思えて、少し救われた気がしました。
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美しい小説だった。
笑子が「ずっとこのままがいい」と願ったように、わたしもずっとこの物語を読んでいたかった。二人の生活をずっと覗いていたかった。
笑子はとても純粋で、可愛くて。笑子がとってしまう行動は自分と重なるところもあって、やけに納得してしまった。そして、笑子を宥めるときの睦月は、恋人に似ている。
笑子と睦月の性格が本当にすきで、この二人の名前が性格のイメージにあまりにもぴったりで感動してしまったほど。
紺もよかった。すごく。
何度も読み返したいとおもう。-
>笑子と睦月の性格が〜
という感想がどんぴしゃりで、感動してしまいました。
笑子と睦月って本当イメージ通りの名前ですよね。
睦月のような...>笑子と睦月の性格が〜
という感想がどんぴしゃりで、感動してしまいました。
笑子と睦月って本当イメージ通りの名前ですよね。
睦月のような宥め方をしてくれる相方さんということで非常に羨ましいです(笑)
読んでいる作品も似ているのでついコメントをしてしまいました。是非またレビューお願いします(^^)2012/05/17
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こんな小説書いておきながら、あとがきで『恋だの信じるだの、無謀で蛮勇だ。』なんて言い切る江國香織が、私は好きです。
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読み終わった後、頭がぼーっとしてふわふわとした感覚になりました。それくらい物語に引き込まれて、初めて一気に読み終えた本です。こういう関係があってもいいじゃないかと思う反面、ちょっぴり切ないなとも感じました。とにかく表現の仕方が独特でいて綺麗。江國さんの本をもっと読みたい!と思ったきっかけになりました。印象に残っているのが「羊羹のような闇」というワードです。ずっと手元に置いて何度でも読み返したくなる一冊です。
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自分の感じていることや思いが人から受けいれてもらえずに、自立できないことの辛さが繊細に描かれている。
自分にとっての好きが、理解不能だと言われてそれを無くならせようとすることはれっきとした暴力だ。
いろいろなしがらみから解放されたいと願いながらもその願いを叶えられず苦しんでいる人に読んで欲しい。