見張り塔から ずっと (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101349121

作品紹介・あらすじ

発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語-。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。

感想・レビュー・書評

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  • とにかく暗く救いのない話ばかり。今改めて読んでみてもおもしろい。「カラス」が特に好きです。

  • 解説者曰く、ゴーストライター重松清が表舞台に出て来た。ミステリーだ。面白い!切り口が興味を引く。みどり&あたいの関係も新鮮。
    ハッピーエンドなおのろけ3編

  • 暗い小説である。
    救いの光が全く見えない、そんな小説である。
    三つの作品に出てくる家族は、現実にいそうな家族だったり、いなさそうな家族の両方が存在する。
    それがイジメだったり、子供を幼くして亡くしたり、夫のモラハラ?だったり…。
    いや、モラハラと一言で断じ得ないのが陽だまりの猫かもしれない。この作品だけは、他の二作品とは少し違う毛並みである。
    しかし、重松さんって疾走の時もそうだけど、暗い小説を書かれると、読者である自分自身も闇堕ちするから要注意である。

  • 3編の話のどれも、息苦しく胸が締め付けられる話でした。

    重松さんには珍しく、一切の救いがない話(元々完璧なハッピーエンドの物語は少ない印象ですが)
    どうにもならない現実と向き合っている人間たちの姿を、観劇ではなく『目撃』させられている感覚のお話でした。

    あとがきを読んでなるほどなぁあって感動した作品

  • 3編からなるお話。どのお話も暗くてちょっと苦手でした。
    団地内の大人のいじめの話、1歳の息子を亡くした夫婦の話、モラハラでマザコンな年の離れた夫を持つ若い妻の話の3つです。
    どちらかというと勧善懲悪な話が好きなので、救いのないこの本の内容は後味が悪く苦手でした。

  • 3つの短編のうち、『扉を開けて』が一番考えさせられた。一才の息子をなくした夫婦、その息子と偶然にも同じ名前の男の子が最初に出てくる。そこから惹かれた。終始悲しい気持ちが胸からあふれる感じ。

    『陽だまりの猫』は旦那の伸夫さんという人間と、決断力がなく酷く不器用な みどりさんの夫婦のストーリーに苛立ちを覚え、男女の不平等さ、昔の概念が描写されていて心が締め付けられるようだった。

    『カラス』はとりあえずホラー、廃れたニュータウンに閉じ込められたような主婦は怖い。

  • 再読です。何回読んでも面白いですね。3つの短編、「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」
    特に「カラス」が怖くて好きです。
    コロナ禍の今、あえてこういう物語を読むのもいいかもしれません。

  • 人間社会のダークな面を見事に描いた夫婦の物語。
    なんとも言えない余韻が広がります。

  • 「見張り塔からずっと」
    家族の終焉。


    重松清さんと言えば、心情を描くのが抜群に上手い。だから心があったまるものは、普通の小説よりももっとあったまる。が、決して暖かいものだけではない物語になると、より辛い気持ちになったり、悲しくなったりしてしまう。本作は、間違いなく後者に該当する中編集です。収録されているのは、以下です。


    1.カラス
    発展の夢を断たれた住宅地ツインヒルズ・ニュータウンの住人たちの鬱屈と歪んだ「復讐」を描く中編。


    土価が天井知らずの高騰を見せるバブルに購入したマンションがあっという間に価値が下がり、売ったとしても赤字確実。住人たちは、何故このマンションを買ってしまったのか鬱屈を溜め込んでいた。そんな中、転居してきた榎田家族のある言葉が、住人たちに火をつけてしまう。


    非常に辛くなる物語。何気なく言ったかも知れない言葉がたまたま聞かれてしまい、それが広まり、嫌がらせになり、そして関係のない子供が巻き込まれる。何より怖いのがそんな状況の中、主人公夫婦がある種生き生きしていくことです。妻は自治会を立ち上げ、生活にハリが出るようになり、夫はそんな妻に性欲を覚える(というか回復する)。生々しいリアリティです。


    なによりもカラスの存在が抜群。主人公たちの気持ちを代弁するかのようにクエッと鳴く。そして、陰湿な復讐を住人たちの代わりにしてやったかのような攻撃。抜群でした。


    2.扉を開けて
    幼い息子を亡くした夫婦の癒されぬ哀しみと苦悩が詰まった物語。


    無くした息子と同じ名前の健太という少年は、いつも部屋の近くでサッカーボールを蹴っている。その音がうるさく注意しようとするがなかなか出来ない。一見住人トラブルに発展して行くかと思いきや、夫婦の哀しみと苦悩にフォーカスされていきます(大体マンションの隣で朝っぱらからボール蹴ることを注意しないダメ親に腹が立ちますが)


    最後の描写が凄い気になります。これも辛い中編です。


    3.陽だまりの猫
    妻として母親として誰にもまともに扱ってもらえない若妻《みどりさん》の人生を賭けた決断が辛い。


    みどりは、15歳から付き合いだした伸雄(当時22歳)と結婚した。幸せか、不幸かと聞かれたら幸せ。しかし、幸せか、不幸か、どちらでもないか、と聞かれたらどちらでもないと答える。それが、みどりの真実である。


    ちょっと気を遣えない、ちょっと分からない、色々ちょっと〇〇な部分をそこまで言うお前はなんやねん!と言いたくなる伸雄 with 伸雄母。もしかしたらざらに良くあることなのかも知れないが、辛いものは辛い。


    全部読むと気を落とす可能性大です。次は、とんびにしよう。。。

  • よいことはよいんだけど、やっぱり中学生のこと、や、いじめのことが書いてあるといいな。でも重松さんはすごいと思う。

    2001.7.28 中1

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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