龍神の雨 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101355535

感想・レビュー・書評

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  • 3.7

  • 思い込みと憎しみの力は恐ろしい

  • 終始陰鬱な世界観の中展開されるストーリー。最後でようやく救われた気がしました。

  • 「道尾秀介」の長篇ミステリ作品『龍神の雨』を読みました。

    『鬼の跫音』に続き「道尾秀介」作品です。

    -----story-------------
    自分を責めながら弟は生きてきた。
    妹の告白を聞き、兄は犯罪計画を立てた。
    「道尾秀介」は、決してあなたを裏切らない!!
    第12回(2010年) 大藪春彦賞受賞

    「添木田蓮」と「楓」は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。
    「溝田辰也」と「圭介」の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。
    「蓮」は継父の殺害計画を立てた。
    あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。
    ―そして、死は訪れた。
    降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。
    彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか?
    あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。
    -----------------------

    久しぶりに「道尾秀介」の長篇、、、

    大藪春彦賞受賞作ということで、期待して読みましたが… 期待以上のクオリティで、序盤から終盤まで緊張感が途切れず、愉しく読めました。

     ■第一章
     (一)雨のせいで、彼らは罪を犯す
     (二)雨のせいで、彼は家族を殺す
     (三)雨により、彼らの川は勢いを増す
     (四)雨により、彼女の殺意は生まれた
     (五)雨のなか、彼らは家を出る
     (六)雨のなか、死体は移動する
     (七)雨は龍に罪の証を届ける
     (八)雨は彼らを失敗へと導く
     ■第二章
     (一)龍の右手は赤く染まる
     (二)彼は龍の悪意と対峙する
     (三)彼女を恨み、龍は生まれた
     (四)彼女を求め、龍は動き出す
     (五)誰が彼女を龍に変えたのか?
     ■第三章
     (一)龍の棲み処を彼は知らない
     (二)龍の目的を彼は知らない
     (三)彼は龍の正体に近づき
     (四)彼女は牙にかかる
     ■第四章
     (一)墓は真実を語り
     (二)龍は捕らわれる
     (三)彼は男の顔を知り
     (四)龍は鬼の顔を見る
     (五)龍を捕らえたのは
     (六)二つの首を持つ鬼で
     (七)首の一つは策略を練り
     (八)彼は鬼の城の在処を探り
     (九)鬼は彼女との契約を交わし
     (十)龍は鬼の城で無言の叫びを上げ
     (十一)すべての流れは城の頂で一つになる
     ■終章
     (一)川の終り
     (二)龍神の雨
     ■解説 橋本満輝


    血のつながりのない親の再婚相手と暮らす二組のきょうだい(兄妹と兄弟)と酒屋の経営者を軸に物語は展開、、、

    実母が事故で亡くなったことから経済的な理由で大学進学を諦め、「半沢」が経営する酒屋レッド・タンに勤めて家計を支えている「添木田(旧姓:須佐)蓮」と、その妹で中学3年生の「楓」は、継父で無職の「睦夫」と生活しているが、最近、様子がおかしいことに気づいた「蓮」は、その原因が「睦夫」にあることを疑い、それが確信に変わったときから殺意が芽生えてくる… 小学5年生の「溝田圭介」は、中学2年生で兄の「辰也」と継母の「里江」と生活しているが、「辰也」は「里江」に反抗的な態度を取り続けており、「辰也」の強要により「辰也」・「圭介」兄弟が「蓮」が勤める酒屋レッド・タンに万引き目的で入店するところから、二組のきょうだいは様々な場面で交錯することになり、物語は大きく動き出します。

    序盤で、

    ○「睦夫」は、母の死後、仕事をやめ、「蓮」と「楓」に暴力を振るい、さらに「楓」を性的な対象としてみている ⇒悪い奴
    ○「辰也」は、継母「里江」とはほとんど口をきかず、学校をさぼったり、万引きをしたりして反抗的な態度をとっている ⇒悪い

    ○「半沢」は、「蓮」に慕われており、何でも相談できる家族のような存在 ⇒良い人

    という人物像が植え付けられるた状況で、

    「楓」を襲おうとした「睦夫」が、「楓」の激しい抵抗により死亡… それを知った「蓮」は「楓」とともに遺体を秩父の山中に埋めるが、自宅アパートから遺体を持ち出すところを「辰也」が目撃しており、「辰也」が、それをネタに「楓」を脅迫、、、

    と展開するのですが… これがうまーくミスリードさせられる仕掛けが埋め込んであって、ある事実が判明することにより物語(人物)の見方が一
    瞬に大きく変わります。


    まさか、「半沢」が狂気の人物だったとは… 序盤から緊迫感のある展開が続くのですが、終盤、「楓」と「辰也」が建設中のビルに監禁され、「蓮」と「圭介」が二人を救出に向かう場面で、緊迫感はピークに、、、

    二組のきょうだいが、どうなったかは明示されておらず、読者の想像に任されている部分なのですが… 「睦夫」の遺体は大雨で川に流れ
    だして事故死の扱いとなり、「蓮」が犯行を自供しようとして110にかけた電話はつながらず(この2点は本文中に出てくる報道文で示唆
    …)、兄妹で新しい人生を踏み出したと信じたいですね。

    もちろん、「辰也」と「圭介」は、継母「里江」との関係を修復したんだと思いますしね… そう考えると、私としては納得感があるなぁ。

    テンポが良かったし、緊張感が途切れず、愉しめる作品でした。

  • 過去の真実ははっきりしないままだったが、それをどう捉えるかが大切だと思った。うまくミスリードさせられたが、ラストの物語のピークが期待ほどではなかった。

  • 道尾秀介さんの作品はどれを読んでも面白い!

    この「龍神の雨」もとても面白いです。しかも解説がとても秀逸なので是非読んで欲しいです。

    こんな読み取り方もできるのかと…
    読解力が羨ましい。

    ひとつ謎なのが辰也が盗んだ体操服はそう言うことだったのか??笑

  • “なぜあの時こうしなかったのか…”と、後悔ばかりが先に立つ切ないお話です。
    蓮と楓の母、圭介と辰也の父、子供連れて再婚したなら長生きしなさいよ!
    残された家族が不幸じゃないか!!

  • 晴れているシーンも雨の降っている家の外から窓の中を覗いてるような感覚だった。人と人の繋がりがこんなにも難しい状況があるのか。事件の中で浮かび上がる人々の心情や後悔が素晴らしいと思う。

  • 降りしきる雨の中、両親を亡くした二組の兄弟が接点を持つ。
    ひたすら陰鬱。登場人物が少ないので、結末にそれほど意外性はない。

  • 継父と暮らす兄妹、継母と暮らす兄弟。あの日、雨が降らなければ。

    読んでいる間ずっと、重たい灰黒色が脳裏につきまとう。どうかどうか、と半ば祈るように、ページをめくってしまった。
    ほんのわずかでいいから、暖かな陽の光が彼らに注がれますように。
    どうかどうか。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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