ぼくは猟師になった (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101368412

感想・レビュー・書評

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  • 猟師ということで先入観で鉄砲撃ちの話だと思っていたら、罠猟だった。狩猟免許の種類によって扱う道具が異なるのは知っていたが、書かれている内容は初耳が多かった。

    緊迫感はあまり感じられなかったが、ごく日常の出来事として猟が語られているのがかえって良かった。

    しかし、猟師の激減が予想される将来にどんな里山が待ち構えているのだろうか。

    今の日本の環境では人間もしっかりと生態系の一部ということか。

  • 自然に対する考え方に共感できた。私に狩猟はできないけど、新しい世界を知れてよかった。

  • 面白くて一気に読み進めた。
    気負っていなくて、あくまで自分の思うがまま、出会うがままという自然体な感じがよい。
    そしてそれなのに、林業や漁業、採集やカモ・スズメ猟、さらには薪割りや風呂づくりのことまで、まるごとの"半猟半X"がでてくるのがとてもよい。

    それにしてもなんというか、言葉に嘘がない感じが文体からも伝わってくる。
    その上で、自身の生き様を、ご自分こそが楽しんで眺めているかのようなハードボイルドなところもまた良い。
    先日のトークショーのような、飾らない人間性を、書の中にもまた再確認できて好感。

  • 罠猟師を目指して、実際に猟師として生活している若者(といっても僕と同じ年)の話しです。
    冬は鹿や猪を取って肉を得て、春は山菜、夏は魚を取り、また秋にには冬の猟を胸を躍らせて待つ。なんともわくわくする生活で、読んでいて自分もやってみたいなとふと思いました。でもこの千松さんは元からそういう生活をしたくて、ぶれずに楽しんで行っているので、僕がやっても直ぐに飽きてしまうだろうなと思います。そもそも魚釣りを一日やる事すら飽きてしまうのですから。
    リアルな動物との対峙や、生き物を殺して肉に加工するプロセスが詳しく書かれていて、こういう事を知らないで漫然と繁殖させた肉をむしゃむしゃ食べている僕。ちゃんと感謝して頂かないといけないなと思いました。
    ちなみにぼくは猪食べた事が無いのですが、とても美味しそうで唾が湧きました。食べてみたいなあ。

  • 猟師が獲ったいのししの鍋が食べたいよ~~~~~~

  • 千松信也氏の随筆。以前、同じ著者の別の本を読んだことがあるが、それとほとんど同じように感じた。

  • 著者の言う通りだと思う。

    ワナ狩猟でかかった獲物を撲殺し、腹を裂いて内臓を出し、捨てるところが無いくらい使い尽くすことと、過剰な栄養を与え、自然界の何倍ものスピードで大きく太らせ、売れ残ったモノ、形悪いモノは破棄されること。

    どっちが残酷だ!

    この本を読んでもマネは出来ないが、間違いなく意識は変わる!

  • 74年生・京大卒の著者の半世記。ワナ猟師の生活記録・猟の記録・獲物の料理方法の紹介を中心に、日本の森林行政についても記述。良エッセイ。捕獲したシカや猪の写真を送ってくる古い知人を訪ねたくなった。

  • 著者は京都大学卒で猟師となった、いわばちょっと変わり種である。
    第一章では、著者がどのようにして猟師になったのかが綴られている。「京大」と「猟師」というキーワードだけ拾うと、一見、少し飛躍があるようにも思えるのだが、猟師になるまでの道筋を聞くと、紆余曲折はあれ、一本筋の通った著者の「姿勢」が見えてくる。
    幼時には自然に囲まれた生活を送る。風呂は薪、昆虫や魚を捕り、周囲の大人は普通に「妖怪」を語っていた。動物に関わる仕事がしたいと思い、一度は獣医を志すが、実験動物と愛玩動物の扱いの差を含めて疑問を感じ、「向いていない」と方向転換。幼い頃、妖怪が身近に感じられたことから、民俗学を学ぼうと京大に進学。入った自治寮(明記はされていないが、当然、吉田寮だろう)の運営にいそしみ、個性的な入寮者に感化されるうち、講義で学ぶより、自分がやりたいことを見つけ、実行する行動力を持ちたいと思うようになる。休学制度をフルに利用して、海外を放浪、NGOの活動などにも携わる。紛争地域の独立運動などに関わるうち、生まれ育った土地に根ざし、そこで生活するべきと思い、帰国。
    卒業までの資金を得るためにアルバイトとして働く運送会社で、以前から興味のあった「ワナ狩猟」を実際に行っている人がいることを知り、その人を師匠として、著者の狩猟生活がスタートする。
    狩猟といえば猟銃によるもののイメージが強いが、著者が惹かれたのは「ワナ」猟だった。銃という文明の利器を使わずに、より動物とナマで対峙するものであるからだ。

    動物と、自然と、真摯に向き合う。
    第二章で語られる「猟期の日々」でも第三章で綴られる「休猟期の日々」でもその姿勢は一貫している。
    獲物として捕らえるからには、肉を無駄なくおいしく食べることが、動物への誠意でもある。ワナの仕掛けに加えて、解体・精肉処理、料理法の考案、廃棄部分の扱いに至るまで、試行錯誤と工夫が続く。
    ワナは市販のものもあるが、高価である。市販品を参考に、また先輩からの教えを取り入れ、著者は自作している。掛ける場所、位置、個々の部品、匂い消し。界隈にどんな獲物がいるのか、確実に通る場所はどこか、ワナを掛けたと感づかれないためにどうすればよいか。さまざま知恵を絞り、ワナを仕掛けていく。まさに動物との知恵比べだ。
    伝統猟法は、土地に伝わる文化だ。土地により、獲物もさまざま、条件もさまざまである。特色のある猟や解体の様式は、長年蓄積されてきたその土地の知恵の結晶だ。
    ワナ猟を教えてくれる先輩、網猟を長年行っている猟友会の人々。先輩猟師への敬意も印象深い。

    ワナに掛かった獲物を仕留める箇所や解体の解説は、やはり本書のハイライトだろう。
    写真も豊富でわかりやすい。イノシシとシカでは脂の付き方や肉質がかなり違い、解体法も若干異なる。シカは皮も剥ぎやすく、背骨を割る作業もないため、イノシシよりは短時間で精肉までが可能なようだ。
    この部分、機会があれば見学してみたいなぁ・・・。

    猟期は、11月半ばから2月半ばまで。それ以外は例外はあるが、基本的に猟はお休みとなる。
    休猟期には冬の薪の準備をしたり、道具の手入れをする。著者はそのほかにも野草を取ったり、海や川で魚などを捕ったりしている。そんな日々も興味深い。好奇心の強い人、発想が豊かな人なんだなぁと思わせる。

    著者は、市街地の端、裏は山、という立地に住む。京都ならではという印象を受ける。
    自然と向き合い、食料も出来る限り野山で調達するとはいえ、著者は、「日本の猟を背負って立つのだ!」とか、「近年問題になっているような獣害を猟師が解決するのだ!」とか、気負っているわけではない。
    猟で生計を立てているわけではなく、運送会社で働きつつの「兼業猟師」である。
    自分や友人・知人の食べる分を狩り、捕った獲物は極力、無駄のでないようにおいしく食べる。
    営利目的ではなく、理念や理想に動かされているのでもない。だからこその現場感覚・肌感覚が生きている、とも思える。

    動物も、そして人もまた、自然の中で生かされているはずである。
    スーパーでパックの肉を買ってきたのではわからない、野生動物と自然の姿。
    いきなり猟師にはなれないが、裏山に目を凝らすだけでも、意外に見えてくるものがあるのかもしれない。少し、そんな気にもさせられる。

  • 狩猟といっても銃を使うのでなく罠を用いた罠猟。その罠猟の世界に入っていく著者の姿が書かれています。
    僕自身は狩猟にも自然や野外活動にも全く興味がないのですが、遠い世界と思っていたものが実は自分が生きている世界と繋がっていることに気付かされました。
    何故狩猟なのか? 自然に生きる動物を捕らえ解体し食べる、そのことの意味は?
    罠猟について写真や図解を交えて詳しく説明され、著者の経験を読むことで、新たに知ること感じることがたくさんあります。知的好奇心への刺激というだけでも大きなものですし、また新たな世界へ通じる扉が増えるのも、読書の醍醐味でしょう。

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著者プロフィール

1974年兵庫生まれ、京都在住、猟師。京都大学文学部在学中の2001年に甲種狩猟免許(現わな・網免許)を取得した。伝統のくくりわな、無双網の技術を先輩猟師から引き継ぎ、運送業のかたわら猟を行っている。鉄砲は持っていない。08年に『ぼくは猟師になった』(リトルモア)を出版(現在・新潮文庫)。twitterアカウント = @ssenmatsu

「2015年 『けもの道の歩き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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