- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101391649
作品紹介・あらすじ
指物師の職人の家に後添いとして入ったおしなだったが、なつかぬ継子と姑の苛烈な虐めに、耐えきれず家を出た。二年後、ばったり、夫に出遭ってしまう(「蝋梅」)。こ っそり組織的に藩士に内職をさせていた貧乏藩。足軽勘七の透かし彫の柘植櫛が大店の跡取り娘の手に渡り、娘は「この職人に会いたい」と言い出した(「恋の櫛」)。江戸の各所で職人の技と意地と優しさが交差する。心温まる傑作四編。
感想・レビュー・書評
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人情江戸彩時記シリーズの4作目
2018.09発行。
4話からなり、全てがもの作りの職人の話し。
第1話の「蠟梅」は、奥さんが袋物づくり。
第2話の「木いちご」は、幼馴染が鼈甲細工。
第3話の「藪椿」は、亭主が漆器の塗師。
第4話の「恋の櫛」は、小大名の足軽が柘植細工の櫛と、4話すべてが、もの作りの職人のお金にまつわる悲哀の話し。だが、最後は、全て上手くまとめている。
さすがは藤原緋沙子さんの作品だけ有って、読み応えのある作品に出来ている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説新潮2011年10月号蠟梅(冬椿を改題)、2017年7月号:木いちご、2018年1月号:藪椿、に描き下ろし:恋の櫛、を加えて2018年10月に新潮文庫から刊行。文庫オリジナル。人情江戸彩時記シリーズ4作目。ひとくくりにできないお話いずれにも余韻が残ります。
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4話からなる。
人情江戸歳時記と、描かれていて、どれも物づくりの話が、基礎と、なっている。
「蠟梅」針仕事 袋もの
「木いちご」鼈甲細工師
「藪椿」漆器の塗師
「恋の櫛」柘植細工師
どれもが伝統を受け継ぐ仕事であるのは、良いのだが、どれもこれも、お金にまつわる話であり、蠟梅など、男の口車にのって、貯めたお金を全て取られてしまう女が、描かれている。
最後は、元のさやにおさまるのだが、、、これでいいのだろうか?と、わだかまりが、残るのでは・・・・
「木いちご」にしても、幼馴染にお金を用立てるために、無理をしたのに、それは、賭博へと、化してしまう。
最後に、賭博で稼いだお金で、返って来るけど、その友人は、死してしまう。
「藪椿」塗師が、好意を持っていた女は、嫁したのに、情にほだされて、お金を貸してしまうのに、持ち逃げされる。苦労を知っている糟糠の妻おすぎが、目に見えない所で、尻ぬぐいをしている。
「恋の櫛」 武士でも、ここまで、お金に貧窮しているとは・・・・
しかし、この最後の物だけが、未だ、お金の困窮だけでなく、未来が、明るいように見える。
煩悩に翻弄される人間を描いているのだが、、、、人情味あふれた作品の方が、好きである。 -
人情江戸彩時記シリーズの4作目。もの作りの職人をテーマにした短編が4編。どの話も藤原さんらしい余韻の残る作品で読み返したくなる。私は表題作が一番好きかな?