狂雲われを過ぐ (新潮文庫 ふ 16-4)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101417042

感想・レビュー・書評

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  • (あらすじ)
    明治政府に反逆し、賊として処刑された者たちが、維新前夜の功績を評価されて次々と贈位されていく中で、奇兵隊三代目総官・赤根武人の名誉がついに回復されなかったのはなぜか。現代の法廷に、山県有朋、伊藤博文らを次々に冥界から証人として喚問し、著者の分身たる弁護人が維新史の暗部に横たわる謎をえぐりだす表題作をはじめ、明治維新前後に材をとった力作3編を収録する。

    (感想)
    ・狂雲われを過ぐ(★★☆☆☆)
     赤根武人という長州人を知ることができたのは嬉しい。
     どうやら、長州の維新史のなかでもかなり「まともな」考え方をもった
     人物だったようだ。ただ、あの時代にまともであることが生き残る要因
     でなかったことが残念なのですが。
     この小説は架空の裁判というかたちで進行させることで彼がなぜ
     後世に評価を得ることができないかを短い文章のなかで詳らかに
     しているが、この構成があまり好きではなかったので☆少な目に…。

    ・三条河原町の遭遇(★★★☆☆)
     何の円も所縁もなかったはずの吉田稔麿と沖田総司。
     二人が歴史の風雲のなかで池田屋で剣を交え命を賭す。
     二人の人生の軌跡を丁寧に描きながら最後のその瞬間までを
     追っている。長州人・吉田稔麿と松陰の距離感などを知ることができた。
     古川さんは地味目な長州人が好きなのかな。
     よかった。

    ・秋霜の隼人(★★★☆☆)
     大久保利通と西郷隆盛の確執を描く。
     司馬遼太郎「翔が如く」を読んでいるので物語はおおよそ知っていた通りだが、大久保利通の描き方が司馬さんとは少し違う。大久保さんが西郷さんに一方的に感じていた友情と妬みが感情を抑えた描き方をされており、興味深かった。

  • 「狂雲われを過ぐ」 赤根と高杉
    「三条河原町の遭遇」 栄太郎と総司
    「秋霜の隼人」 大久保と西郷
    このコントラストがすごく素敵(赤根と山県、というよりも赤根と高杉のが好き)。

    どれも秀逸ですが、個人的な好みで言えば「三条河原町~」が一番かな。
    その「遭遇」した瞬間にぞくぞくした!

  • 「真は偽に似て、偽はまた真に似たり」

    「狂雲われを過ぐ」
    奇兵隊三代目総管・赤根武人。彼は隊を脱走し、ろくに取り調べもされず反逆罪で斬首された。
    維新後、賊として処刑されたものたちが続々と復権される中、赤根の復権運動は主に山縣によりつぶされてしまう。
    この物語は赤根を被告人とした裁判形式で展開される。
    裁判長は山口良忠、検察官に三浦梧楼、弁護人は新田譲。証人は冥界から伊藤、山縣、白石などなど。

    「三条河原町の遭遇」
    新撰組副長助勤・沖田総司と長州藩の志士・吉田稔麿の物語。
    池田屋で遭遇するまでけして交わることのなかった二人の人生。
    ただ殺し、殺されるためだけの邂逅、そこまでの軌跡を描いたお話です。

    「秋霜の隼人」
    大久保利通の物語。
    アメリカへ向かう使節団の船上からはじまり、幕末を回顧しつつ、征韓論、西南の役を経て凶刃に斃れるまでが描かれています。

    幕末の狂雲に飲み込まれた人物を扱った短編集。
    どのお話もさすが!なのですが、やっぱり「狂雲」が一番好きです。
    弁護人の新田はまさに作者の分身。
    普通に事情を知っても、赤根の復権にたいする山縣の執念はすさまじい。
    そのあたり、かなり詳しく掘り下げられていて、作者でなくとも「個人的な恨み」を疑わずにはいられません。

    大久保はとても気になる人物の一人です。
    冷徹、非情、カミソリ、のイメージでしたが、畳みまわしが得意だったなど、意外な一面も持っている彼。
    そのうちいろいろ読んでみたいと思っています。

  • 三篇あります。
    タイトルの「狂雲われを過ぐ」は赤根武人のお話。法廷バトル。
    「三条河原町の遭遇」池田屋で遭遇する吉田稔麿と沖田総司。それぞれの視点で書いていて最後に池田屋で交錯します…。
    「秋霜の隼人」大久保利通が主人公。朝のおめざでノックアウト←

  • 赤根裁判と、池田屋と、大久保さんの短編。「あなたも早いおめざめですな」の場面で、購入決意。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『西郷隆盛 英雄と逆賊 歴史小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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