ベルサイユのゆり -マリー・アントワネットの花籠- (新潮文庫nex)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101801650

作品紹介・あらすじ

ばらが好き。でも、ゆりはもーっと好き。まさか、わたくしの姿がお見えになるんですの? 2018年12月28日、ひとりのパリ旅行者が知らない女から声を掛けられる。女の名は、ランバル公妃。フランス革命で虐殺された、マリー・アントワネットの女官長だった。王妃への強い思いゆえ亡霊となった彼女は語り始める。王妃を愛し、王妃に愛された女人たちのことを──。世界中から嫌われた王妃を過剰な愛で綴る、究極の百合文学!

感想・レビュー・書評

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  • 『マリー・アントワネットの日記』が非常に面白かったので、続編的スピンオフ短編集である本書も手に取ってみました。

    やはり、面白いですね~。
    本書は、マリー・アントワネットの友達というか取り巻きの一人であったランバル公妃がフランス革命で命を落とした後、幽霊になってマリー・アントワネットの周囲にいた人物一人ひとりにインタビューしていくという形式をとった短編集です。

    本編で活躍した(?)デュ・バリー婦人やポリニャック婦人等のお馴染みの人物はもとより、マリー・アントワネット専属の髪結い師や肖像画師、そして主席侍従などあまり本編には登場しなかった人物から見たマリー・アントワネット像なども垣間見れて非常に興味深かったですね。

    本編では、マリー・アントワネットのまさかのギャル口調には驚かされましたが、本作ではマリー・アントワネット本人は登場しないのであの独特の口調を楽しむことはできません。
    ですが、筆者得意の斜に構えた文体は本作品でも健在です。特にマリー・アントワネットの娘で唯一、生涯を全うしたマリー・テレーズへのインタビューではあの語り口を彷彿とさせる語りぶりで、小気味いいものがありました。

    本編と同じように、本書を執筆する際にも著者はかなり参考文献を調べているようなので、本作もファクトチェックはしっかりとなされているのでしょう。
    フランス革命後の歴史を勉強する際にも役立ちそうです。

    本作は、続編といっても良いようなできなので本編『マリー・アントワネットの日記』を楽しまれた読者であれば、ぜひおすすめします。

    この本の裏表紙の紹介には「百合文学」なんて書いてありますが、僕が本書を読んだ分にはそのような雰囲気はほとんど感じられなかったので、ちょっとこの紹介文を読んで敬遠していたような人がいたら「そんなことはない!百合文学などではなく正当な続編だ!」と声を大にして言いたいので、安心して読んでもらいたいと思います。

  • 幽霊となったランバル公妃が、関係者たちから聞きこんだ回想を披露する、連作短編集。
    『マリー・アントワネットの日記』の続編。

    アントワネットの死後についても触れられ、番外編といった感じ。

    おもしろかった。

    マリー・アントワネット自身の幽霊は登場しないものの、本編のおもしろさはしっかり引き継がれている。

    ユーモアたっぷりの、思わず吹き出すようなぶっちゃけトーク。

    根底には、アントワネットに対する愛情がある。

    そして失われていないのが、女性のたくましさ。
    女性が不当に貶められていたことに憤る、芯のある女性たち。

    娘には母アントワネットの精神が特に強く引き継がれていて、ぐっとくるものがあった。

  • 「マリー・アントワネットの日記」の続編。

    革命のさなか、九月虐殺の犠牲になったランバル公妃が幽霊となり、マリーアントワネットゆかりの女性の元を訪れ、話を聞く。

    アントワネットって、時代を超えても不思議な魅力を持ち続け、人々を魅了し続けていると思う。
    その非業の死はもちろん、真偽が疑わしい言動も、全てアントワネットを引き立てているみたい。

    世界史やフランスに詳しくなくても、面白くて一気に読める本。
    この一冊で興味がわく人もいるかもしれない。

    登場人物や事件を調べながら読んだので、この時代のことをもっと知りたくなった。

    歴史好きも、プリンセス好きも、フランス好きも。
    読む人みんなが、アントワネットや周りの女性たちが残酷な歴史の渦に飲み込まれる様子にドキドキするはず。

  • 「マリー・アントワネットの日記」スピンオフ。亡霊となった、アントワネットの女官長であるランバル公妃がナビゲーターとなり、アントワネットと関わりのあった人物たちの元に話を聞きに行く。
    まず、それぞれの章タイトルが秀逸。語り手である人物たちの本名なのだが、ほぼ誰だかわからない。敢えてわからないまま読み進めて、「なるほど、あなただったのか」とわかる仕掛けが面白い。「マリー・アントワネットの日記」は、アントワネットのギャルっぽい語りのお蔭で重苦しくなりすぎず読めたが、今回は、語り手たちの口調は比較的落ち着いており、革命の後日談がなかなか壮絶な部分もあって、メンタル的に時々キツい。キツいといえど、逆にちゃんと触れてもらえてよかった。酷い現実だが、決して目をそらしてはいけないと思うからだ。
    アントワネットのようなウェーイなノリはなくても、ところどころトリコさんらしく軽やかで、沈み過ぎない展開が素晴らしかった。特にランバル公妃のキャラクターが最高だった。たまに登場人物らにドン引きされ、めんどくさいな~って思うんだけどなんだか憎めないというね。
    発売日に購入し(出るのが待ち遠しくて待ち遠しくて、小説の発売をこんなに楽しみにしてたのは久しぶりだった)、すぐ読み終えたものの、内容の深さになかなか言葉が出てこなかった。今も…この感動をびしっと的確に伝えられずもどかしいのだが…ただ、読めてよかったということは間違いなくはっきりと言える。今回も、斉木久美子さんによるカバーイラストが最高に素敵!!
    様々な語り手によって見えてくるアントワネットの素顔、そしてフランス革命のその後。もっともっと彼女とその時代を自分なりに深掘りしてみたくなった。

  • いや~今回も面白かった。
    20代の頃はまってマリー・アントワネット関連の本を読んでいたから、また本棚を漁って読み直したくなった。

    今の時代の若者も読みやすい文章で、それでいてちゃんと沿っていて素晴らしい。

    ノートルダム大聖堂も変わっちゃったのよ~と、最後に突っ込みたくなる。

  • マリーアントワネットの日記のスピンオフ‥マリーアントワネットの日記よりは、読みやすかったのが第一の感想。でもやっぱり順番としては、マリーアントワネットの日記を読んでからの方が断然いいと思います!やっぱり、マリーアントワネットって天真爛漫でありながら王妃としての自尊心もあって、誰からも愛される‥やっぱりその人柄に惹きつけられます。私も百合にハマっちゃったかな(笑)

  • これもおもしろかった~。
    「Rose」と「Bleu」のようなギャル口調のおもしろさとは違うけど、当時アントワネットのそばにいた人たちが思ってたことを語ってくれてる。
    読み終わってすぐに再読。
    そして今「Rose」と「Bleu」を再読中。
    とっても興味深いし、ある意味アントワネットのファン。

  • 面白かった。読む順番を間違えたっぽい。
    先にマリーアントワネットの日記を読んでから読むべきだった。
    軽く書かれてるけど、フランス革命当時の女性は貴族も平民も大変だったんだろうなと知識のない私でも感じた。
    マリーアントワネットの日記も読んでみよう

  • あの人のことを語らせて。

    パリ旅行者に話しかけてきた幽霊は、マリー・アントワネットの女官長だったランバル公妃。彼女はマリー・アントワネットの近くにいた人々から話を聞き、慕っていた王妃に再び会う時の土産話にしようと考えたのだ。そして彷徨うこと幾星霜。2018年のパリで、ランバル公妃の口から語られる、マリー・アントワネットという人のこと。

    様々に王妃と関わり、王妃を愛した人たちから語られる王妃の姿。それはその人が命を終える時にランバル公妃が聴いたからか、語るその人自身についての語りでもある。あの時代を、革命を、どのように生き抜いたのか。女性として、自分として、何を求めて生きたのか。18世紀の人の感覚というよりは現代女性的な自己認識に感じるが(18世紀のジェンダー論には明るくないので)だからこそ、王妃と一緒にあのベルサイユにいた人のことが身近に感じられる。

    フェルゼンからは話を聞けなかったと言うランバル公妃。彼の心のうちは、想像に任せるのが一番美しいのかもしれない。マリー・アントワネットは、愛されて、また愛した人だった。その愛のすべてが等しく、友情も恋愛も区別なく、ただの愛だったのなら、どれほど心慰められ、また寂しくなるだろう。

    オタク気質のランバル公妃、話しかけた相手もガチ勢で、よい話し相手を見つけたオタクほど幸せなものはないよね、そりゃあ語るよね、と思いました。

  • 「マリーアントワネットの日記」スピンオフ。脳裏にトワネット節の余韻が残っている。今作は幽霊となったランバル公妃が、革命時に翻弄された主立った面々のもとへ世界各地を訪問。マリーアントワネットを話題にぶっちゃけトークした内容を、フランスを訪れた旅人に夜を通して語りつくす短編集。発想が面白いし、はっちゃけた文章は変わらず。マリー・テレーズの章が良かったなぁ、吉川トリコさんこれが一番描きたかったんじゃないかなぁ。今度別作品も読んでみよー。

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著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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