世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101802626

感想・レビュー・書評

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  • ☆4.5

    TwitterのTLでよくお見掛けしていて、気になり過ぎて購入してしまいました。

    今までたくさんの本を読んできましたが、こんな読書体験は初めてです!
    もう「す、すごい…!!」としか言えないです。

    ネタバレ厳禁とのことで、これ以上は何も語れませんが、まだ未読の方は是非!読んでみてください❁⃘*.゚

  • 震え、感動、涙目の一冊。

    声を大にして言いたい。
    こんなにも美しい物語があるのかと。

    母を捨てた屑のようなミステリ作家を父に持つ主人公の青年。
    彼が死の間際に父が最後に描いたらしい遺稿を探し求めるストーリーは静かに流れるように、そしてミステリちっくに読み手をリードしていく。

    次第に関係者から明らかになる父の過去と遺稿の手がかり。
    その傍らで主人公の、父に対する心の揺れを一つの読みどころとして味わっていたら…まさかの心臓の高鳴りと共に感じた震え。
    そこから感動の涙目に。

    美しさを噛み締めた、これぞ一読の価値有りの完璧小説。

  •  僕の母は、フリーランスの校正者・深町霧子は発注元のS社に勤める編集者である。父親は、宮内彰吾という有名なベストセラー推理作家。妻子持ち、甘いマスクと手の早さで知られるプレイボーイで二人はすぐに男女の関係となる。しかし母(藤阪恵美)は、トラックにはねられ、病院の地下で対面した。

    「はい、僕の母です」(身寄がなくなった)

     作家宮内彰吾さん死去(61歳)という見出しの訃報をネットのニュースで見かけた。
     霧子さんから連絡があり、無関係な人の死でいきなり湿っぽくなられても困る。けれど、無関係ではなかった。想像もできない形で、父は僕の人生に割り込んできたのだ。

     松方朋晃という宮内彰吾の息子(異母兄)から電話がきたのは父の訃報から一ヶ月後のことだった。遺作がある。朋晃は一枚の大判茶封筒を取り出した。

    「世界でいちばん透きとおった物語」
    「原稿はどこにあるんですか?」
    「さあ、わかりませんね。見つけたときから空っぽでしたよ」

     不明原稿を求めて、主人公藤阪橙真は亡父の交友関係と現物を追うことになる。

     何故、母は宮内彰吾の子を産んだのか?

     癌で亡くなった父が遺作にかける情熱は、どこから生まれ何を伝えたかったのか?

     会ったこともない父の、透きとおった物語とは何か?

    「世界でいちばん透きとおった物語」は予測不可能な物語で、警察ものやクライムサスペンスの名手でしたから、宮内先生にしては珍しい恋愛小説でしょうかと霧子は言う。

     帯には「電子書籍化絶対不可能⁉“紙の本でしか”体験できない感動がある!」って書いています。(興味深い❣)
     尚、巻末の参考文献に、京極夏彦さんの著書がずらっと並んでいます。妖怪が何か用かい?(妖怪?)って言うわけではなく、ある理由から編集上の共通点の参考です。
    (ごめん、ネタバレ)

     随分前に読みたくて買い漁ったことがありますが、積読になっています。これ以上蔵書を増やしたくないが、楽しみは尽きません。希望が持てる小説。短編だけど。
     読書は楽しい。

  • すごい…の一言に尽きる
    話の内容はそんなにドキドキワクワクもないけど、後半に入ってまさか…と思い気づいた!!!
    これはすごい。
    難しいんだろうけど、もっと長く読みたい1冊!!

  • 何度も読み返してしまいました。「予測不能の結末」という惹句通りに見事に陥りました。しかし、冒頭には宣言されていたんですね。推理小説において、編集者は探偵で、校正者が検察官、そして作家が・・・と。タイトルの意味も途中の「人を殺しかけた」も主人公が10歳のときに受けた脳外科手術の後遺症も、全てが繋がっていた。母親の交通事故以外、一滴の血も流れないけれど、ミステリーの要素が余すことなく詰め込まれた作品です。

  • 「作家の業」

    同名の作中作を扱ったミステリー小説。人気ミステリー作家宮内彰吾の遺作が登場する。ただ遺稿が存在する証言はあるものの、遺稿そのものが見つからない。婚外子であるところの主人公、燈真が遺族である長子、松方朋晃から依頼を受け、編集者霧子さんと遺稿を探す。

    作中にもある通り、ミステリはプロットが肝である。
    宮内彰吾がこの小説を書いた動機は確かに、かつて堕胎という形で殺そうとした我が子に対する贖罪のためであったとは思うが、まだ誰もやったことのない表現で読者をあっと言わせたいという衝動もあったんじゃないか。
    発想の原点は燈真が10才の時に負った病の後遺症だった。紙の本だけがなぜか読むと眼がチカチカしてしまう。これが作品の重大な伏線になっている。さらに燈真はどうして「魔法使いタタ」の結末が分かってしまったのか。谷崎潤一郎の「春琴抄」は読むことができたと言うこともだ。

    主人公が作家だと、作者の創作方法に対する記述が出てくる場合がある。だとすると、「最後の五文字」を伝えるためにまずそのページを書き、後から丁寧に言葉を「積み上げて」いったのかなと思った。
    彰吾のプロットを受け継ぎ、燈真が伝えようとした「最後の五文字」は作家の業をおそらく持っていない燈真が発すると、より純粋なものになったんじゃないかと思う。

    併せて読みたい
    「タイムリープ」高畑京一郎

  • 初めての作家さんです。
    結論は面白かった。
    内容も構成も良く考えられており、軽めの文体も
    相まって凄く読みやすかったです。
    そして終盤にかけての謎バラシ…………
    誰もが必ず再確認するでしょう!
    凄いですよ。紙の本の凄さを改めて感じました。

  • 推理小説家の父親を持つ青年が遺稿を探す。どんな小説だったのか予想するシーンで、私がこの本を読む直前まで読んでいた「カササギ殺人事件」を例にかなり複雑な構造の推理小説の例えとして使っていた。
    こんな偶然!!えーっ、こんなところで再会?
    ってなった。

    謎解き要素があるこの作品、なるほどなと思って終了。
    フリー校正をしている主人公の母がでてくるので、校正のこと、出版業界のこと、面白く読めた。

    今まで毛嫌いしていた京極夏彦先生の作品について、作中で先生自身が緻密な構成をDTPソフトを使ってされているとあった。これは実際読んでみて確かめるしかない。

  • 『世界でいちばん透きとおった物語』
    帯文に電子書籍化絶対不可能!?
    “紙の本でしか"体験できない感動がある!
    何気に書店で手に取り、パラパラっと読み始め、その日の目的だった本と一緒に購入、積読コーナー行きの筈だった訳なのだが・・・
    内容が面白く、謎解きミステリーの要素もありサクサク読み終えて、良い作品でした。とレビューを書こうと思い、タイトルと帯文が頭の引っかかった・・・
    そして驚愕の事実に遅まきながら気付かされた。
    この本こそがまさしく、『世界でいちばん透きとおった物語』そのものである事を!
    これは、物語の内容よりも大変な事かも知れないと思ってしまった。
    編集も校閲も大変な作業でしたと敬意を表したいと思います。
    最後に個人的な感想ですが、京極夏彦先生の作品を読みたくなりました。

  • 本書はどうも図書館で借りず購入しないとならない類でありそうだという直感が働き、7月の頭に購入してあった。

    そして今日までの間、皆さんのブクログレビューを、本書だけは絶対に拝見しないようにしていた。
    (読了したので、後で拝見しようと思う)

    期限付きの図書館本を常に沢山抱えていて、今550ページ超えの小説を一生懸命読んでいる途中その行為に疲れた為、本書を今朝からやっと手に取った。

    一気読みだった。
    お陰で今日ほとんど他に何もできていないけれど。


    【以下ネタバレあり】(究極のネタバレは私は絶対にしないが、少しでもネタバレに繋がると感じられる文言を書く時は必ずネタバレぼかしを入れた上で更にこのようにネタバレありと書き、空白行を設けるようにしている)





    途中2つの行為を試してみたり、この本って随分とここの部分がこうなんだなと不思議に思ったりしたところもあった。
    そして、あそこはああだろうなというところが、そうであってゾクっとした。
    内容面でも、それはあれのことを表しているのだろうなとすぐに気付いたところもあった。


    という、なんともわけわからんレビューになったが、これも全て「それを書いちゃあお終いでしょう」という究極のネタバレを私は絶対にしたくないので。
    また非公開メモの方に残しておく。


    後記 : レビューを拝見したら、6月くらいにいくつか「いいね」を押していた。
    究極のネタバレも含まれていたけれど、すっかり何もかも忘れていて、記憶力の乏しい自分で良かった。

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著者プロフィール

第12回電撃小説大賞《銀賞》受賞者。代表作に『神様のメモ帳』『さよならピアノソナタ』など

「2023年 『楽園ノイズ6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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