レベッカ (上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (439ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102002032

作品紹介・あらすじ

ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た-この文学史に残る神秘的な一文で始まる、ゴシックロマンの金字塔、待望の新訳。海難事故で妻を亡くした貴族のマキシムに出会い、後妻に迎えられたわたし。だが彼の優雅な邸宅マンダレーには、美貌の先妻レベッカの存在感が色濃く遺されていた。彼女を慕う家政婦頭には敵意の視線を向けられ、わたしは不安と嫉妬に苛まれるようになり…。

感想・レビュー・書評

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  • 読みたかった本。年上の貴族マキシムと電源婚したわたし。美しいマンダレー邸には事故で亡くなった美貌の先妻レベッカの気配が‥。後妻に対する世間の評価や先妻を慕う家政婦頭ダンヴァーズの不気味さ。想像力豊かな主人公と共に手に汗握る展開!

  • 自分のイメージする「ゴシック小説」そのもの。
    古き良き英国の田園地域の丘の上、由緒ある屋敷。
    そこに住まう人々の一見完璧なまでに優雅で整った生活スタイルと幾許かの色恋。
    でもそこには彼らだけの秘密、苦悩があった、、、的な。
    ケイト・モートン『湖畔荘』とか、カズオ・イシグロ『日の名残り』とか。

    でもWikipediaで「ゴシック小説」を調べると、オカルトだったりホラーの要素が強めなんだよな。
    どうも、ジャンル的にはドラキュラとかフランケンシュタインとか近しい場所に位置付けられるらしい。
    うーん、奥が深い。

    「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た」で始まり、マンダレーって何!?と引き込まれる。
    ああ、お屋敷の名前でしたか。

    ヴァン・ホッパー夫人のコンパニオン(身の回り世話をしつつ、一緒にテニスをしたりする間柄なので、メイドともちょっと違う関係性)の主人公は、滞在中のモンテカルロでマンダレーの所有者、妻を亡くしたばかりで一人旅中のマキシム・デ・ウィンターに出会う。
    その身分、育ち、身なりをよそに、何故かマキシムに見初められ、距離が縮まっていく。
    最終的には結婚という展開になり、マンダレーに2人戻ることに。

    花鳥風月を友とするようなマンダレーを取り巻く情景を追想する筆致は、1人の女性の甘やかな夢の追憶の物語のようでもあるが、そこに影を落とすのがマキシムの亡き前妻レベッカ。
    華やかで社交的、圧倒的な美とカリスマ性を持っていたレベッカに比して、極めて凡庸であか抜けない現ミセス・デ・ウィンター。
    その差に悩み、レベッカに嫉妬し、欠損を補おうとする日々。
    其処ここに潜むレベッカの残り香を感じながらも、周囲からの承認を得ようと必死に背伸びをするが。。。

    ミセス・デ・ウィンターの呼称だけで、名も与えられぬ主人公のヒロインに対し、タイトルになっているにも関わらず、既に他界し姿形を現さないレベッカとういう何とも大胆な演出。
    プロット的にはどこかで聞いたことのあるような、幸運を手にした素朴なヒロインというような話なのだが、レベッカの濃密な影が凄い。
    下巻ではどのような展開が待ち受けているのか。

  • fukayanegiさんの最近のレビューが素敵で、どうしても読み直したくなり再読。

    華麗で不穏な世界観、眼前に由緒ある優雅な邸宅や、花々咲き乱れる谷がぱっと広がるような気がする美しい情景描写に、ヒロインが度々妄想を繰り広げるのも相まって、まるで豪華絢爛で上質なミュージカルでも見るかのような気持ちで楽しんだ。
    話の筋はほぼ忘れていたけど、上巻ラストのあのいたたまれない出来事だけは覚えていた。しんどすぎる…。
    ものすごくゆったりとした話の進み方だけれど、貴族の生活に魅せられて全然飽きない。

    • fukayanegiさん
      ロッキーさん、こんにちは。

      自分のレビューが再読のきっかけになれたようで嬉しい限りです。
      ほんとこの作品は前半の麗しさと後半からの怒涛の展...
      ロッキーさん、こんにちは。

      自分のレビューが再読のきっかけになれたようで嬉しい限りです。
      ほんとこの作品は前半の麗しさと後半からの怒涛の展開が凄いですよねー。
      なかなかない完成度の古典名作だと思います!
      2024/02/04
    • ロッキーさん
      fukayanegiさん、急にお名前出してすみません、コメントありがとうございます!

      本当に、こんな怒涛の展開を見せてくる麗しのサスペンス...
      fukayanegiさん、急にお名前出してすみません、コメントありがとうございます!

      本当に、こんな怒涛の展開を見せてくる麗しのサスペンスはなかなかありませんね。古典作品とは思えないくらい。
      素晴らしい読書のきっかけをありがとうございました!
      2024/02/04
  • この作品を知ったのは、数年前に大学の授業でアルフレッド・ヒッチコックが監督を務めた1940年の実写化映画を見たことがきっかけ。主人公なのに名前が明かされない「わたし」と亡くなってもなお人々の記憶やマンダレーの館に強い気配を残すレベッカの対比、そして不気味な家政婦頭のダンヴァース夫人のインパクトが強すぎて、一度観ただけでハマってしまった。
    上巻ではレベッカの死後初めてマンダレーで開催された仮装舞踏会で、「わたし」がレベッカと同じ仮装をしてマキシムの前に登場し場の空気が凍り付いたシーンまで。
    「わたし」の孤独や抑圧されている様子は見ているこちらも辛くなる。何かしようとするたびレベッカの影が現れ、いつまで経ってもマンダレーでの生活に馴染めず一人浮いている状態。「わたし」にとって良いことがあったり、マンダレーの人々に溶け込めてきたかと思ったりすると、すぐに何か悪いことが起こって楽しかった時間を打ち消してくる。「わたし」をとても不憫に思う一方で、誰もいない時間には彼女の好奇心が爆発して色々な詮索をする姿を見ると必ずしも「わたし」に対して好意的なイメージが抱けない自分もいる。
    今のところ一番好意を抱けるのはマキシムの姉のビアトリス。他の人々より「わたし」がみんなに溶け込めるよう手伝ってくれたりフォローしてくれたり。思ったことを比較的はっきりと言ってくれるところも良い。

  • 映画は、ヒッチコック版、Netflix版ともに未視聴。

    この小説は常に[私]の一人称視点で描かれており、登場人物も主人公のことを「あなた」「君」「デ・ウィンター夫人」と呼ぶだけで、主人公の本当の名前は分からない。
    上巻において主人公[私]は、上流階級の独身イケメン、マキシムと年の差違い&身分違いの電撃結婚をして[デ・ウィンター夫人]となり、幸せなハネムーンをほんの一瞬楽しんだ後、貴族の妻として周囲に溶け込めないことに悩むことになる。

    この小説、特に上巻を楽しむためには、少し英国の社会背景を知っておいた方が良いかもしれない。物語の時代設定は、おそらくこの小説が出版された1930年代と思われる。当時の英国貴族の多くは、課税に次ぐ課税により没落していき、階級が異なる者同士の結婚も珍しくはないが、それでも眉をひそめられることは間違いない、そんな時代である。
    主人公は登場人物の一人、メイド長のダンヴァース婦人から冷たい扱いを受け続ける。いわゆる昼のメロドラマでいうところの「嫁をいじめる姑」そのものだ。ダンヴァース婦人の思考のすべては下巻で明らかになるが、やはり彼女は「身分の低いあんな小娘が[デ・ウィンター夫人]でいいはずがない」と考えているのは明々白々である。
    加えて、[私]がマキシムと結婚する前の雇用主であったヴァン・ホッパー夫人は、おそらくそういった身分違いの結婚の苦しみを知っていて[私]とマキシムの結婚をあまり快く思わなかったのだろう。ヴァン・ホッパー夫人は前半にしか登場しないので、彼女についてあまり詳しく描かれていない。しかし私が思うに、彼女は貴族ではないが、[私]のような付き人を雇うことはできるくらいのお金はある、いわゆるジェントリー階級なのであろう。そういった人は、本物の貴族の生活と価値観の違いを身に染みて知っていたから、[私]がマキシムと結婚する前に忠告したのかもしれない。

    当たり前ではあるが階級がどうこうという説明は本書の中にはないため、そういった描写を読んでもいまいちピンと来ず、上巻は少し退屈に感じられるかもしれない。しかしこういった動画を見て、階級社会について大まかに知っておくだけでも、物語の解像度がぐっと上がるだろう。
    https://youtu.be/egBlSSJW9f0

    反対に、こういったことを考慮しなければ、上巻では物語がダイナミックに動くことはほとんど無く、退屈に感じるかもしれない。しかし下巻に向けての下準備はすべて上巻で行われている。例えるならジェットコースターが最初にじわじわと上に登っていくようなものである。しかし読者は、ちりばめられた伏線をよほど注意深く読み進めない限り、自分が地上からはるかに高い場所に無理やり引っ張り上げられているということに気づかない。私は上巻の最後になって、やっと物語のレールの高さに気づいた。息をのんで上巻を閉じ、下巻の一ページ目を開けば、あとは地上に向かって真っ逆さまに落ちるだけであった。

    もしこの小説を手に取ったのなら、どうか途中で止めないで欲しい。下巻になってようやく最重要人物「レベッカ」についてすべてが明かされる。この足のすくむような物語の高みと、そこから一気に「レベッカ」に引きずりこまれる戦慄を味わって欲しい。

  • 「静かな炎天」で車事故の被害者がアフタヌーンティーにはまった本だとあったので。

    たぶん、これが名作というものなんだろう。
    非常に読みやすかったし、面白かった。

    たしか、アガサ・クリスティの作品で、
    「コンパニオン」が出て来たことがあった。
    犯人だったような気もするが。
    金持ちのご婦人が自分の世話や相手をするために雇う
    若い女性だが、
    召使いではなく、秘書に近いような感じ。

    このコンパニオンだった女性が、
    ひょんなことからマンダレイと言う邸宅に住む男性の後妻になる。
    前妻の名前がレベッカ。
    美しく楽しいパーティを開く華やかな女性。

    (下巻へ)

  • ひたひたと気味が悪い…でも読むのを止められないです。映画を先に観ましたが原作も面白いです。
    主人公はマンダレーにお屋敷を持つマキシムと結婚してこの地にやってきたけど、先妻レベッカの影がどこまでも付き纏ってきておかしくなりそう。レベッカを崇拝するダンヴァース夫人も怖いし。。
    やっぱり、主人公の名前がどこにも出てこず、「きみ」「あなた」「ミセス・デ・ウィンター」って呼ばれてるな。。
    仮面舞踏会の悪意が凄い。下巻も読みます。

  • レベッカの圧倒的な存在感。
    「わたし」と一緒に私もマンダレーにいる気分です。

  • 面白すぎて一気に上巻の最後まで読んだ。
    元の英文と翻訳、両方の完成度が高い。

    世間知らずの若い娘が休暇先で偶然であった金持ちと結婚することになり、イギリスの邸宅で暮らし始めるが、そこでは亡くなった先妻のレベッカの名残がそこかしこに残っていて、主人公が必要以上に神経質になる。
    回想文なのに、主人公の悲観的な妄想が止まらないところが面白い。
    上巻では大したことは何も起こらないとも言える。不穏なレベッカの不存在と、何かが起こりそうな予感だけで、一巻持たせた感じ。まったく飽きさせずにこれだけの長さを読ませるのだからすごい。
    レベッカを崇拝していた家政婦頭のダンヴァース婦人が、主人公に対して明らかないやがらせを仕掛け始めたところで上巻が終わる。下巻の展開が楽しみ。

    ※Amazonのレビューには新訳が軽すぎるという批評があるが、僕はよいと思う。主人公の幼く無邪気な面がよく出ていると思う。

  • 地味で気弱で、レストランの店員にもなめられっぱなしのヒロインが、妻を亡くした大金持ちに見初められ、後妻となるシンデレラストーリー!と思いきや、屋敷には前妻レベッカの影が色濃く残っていて、ヒロインは新しい生活に馴染めず徐々に弱っていく。
    ストーリーは今のところヒロインがいびられすぎててかわいそう。ここから逆転できるほど自己肯定感がなさそうだし。
    しかしとにかくマンダレイの屋敷の描写が美しくて細かくて、建物好きなのですでに大満足です。調度品のひとつひとつにレベッカの魂が宿っていそうな不気味さも感じられてまた良い。これはあらすじを知るだけではわからなかっただろうから、本当に読んで良かった。

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