アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102025123

作品紹介・あらすじ

"食うや食わず"は生ぬるい-極寒のアイルランドで靴は贅沢品、毛布代りの古コートで眠り、ジャム瓶にいれた出がらしのお茶で空腹を紛らす。でも膝のカサブタを食べて餓えを凌ぐ子よりマシかも?字の読めない掃除人が暗唱するアイルランドの詩は素晴らしいし、隣のラジオから聞こえるシェークスピア劇はすごい。悲惨な中から生きる希望が湧いてくる、ピュリッツァー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 「学べ、と先生は言う。歴史もほかのことも、学んで自分で判断しろ。(中略)頭をいっぱいにしろ。頭に詰め込め。そこはお前たちだけの宝の倉だ。世界中の誰も手を出せない。(中略)お前たちは貧しいかもしれない。お前たちの靴は破れているかもしれない。だが、お前たちの頭の中は宮殿だ」

    極寒のアイルランド。しかし、貧しい家庭の子供たちには、その足にはく靴さえ満足に購われない。
    フランクをチフスや眼病が苛む。貧民街の人々の間には肺病が蔓延し、学校の友人さえ死んでゆく。
    貧困、栄養不足、不衛生、そして無知。それさえなければ……。
    しかし、出会いがある。隣りの病室の少女から壁越しに教わる詩。文盲の掃除夫が暗唱するアイルランドの詩。ラジオで聞くシェイクスピア劇。
    14歳になったら仕事に就く。そしてお金を貯めて、20歳になったらアメリカへ行く。

    たくましく、したたかに成長するフランクが貧困から抜け出す、その出発までを描くピューリッツァー賞受賞作。

  • “食うや食わず”は生ぬるい―極寒のアイルランドで靴は贅沢品、毛布代りの古コートで眠り、ジャム瓶にいれた出がらしのお茶で空腹を紛らす。でも膝のカサブタを食べて餓えを凌ぐ子よりマシかも?字の読めない掃除人が暗唱するアイルランドの詩は素晴らしいし、隣のラジオから聞こえるシェークスピア劇はすごい。悲惨な中から生きる希望が湧いてくる、ピュリッツァー賞受賞作。

  • 原題 Angela’s Ashes

    著者フランク・マコートの回想録で、貧困の内に送られるその多感な少年時代が主に綴られます。淡々と語る日常と独り言のような心の内という特徴のある文体。貧困を生き延びた弟達に捧げられてます。

    アイルランドの北と南、カトリックとプロテスタント、貧富の差、親と子、大人と子供、病気と大恐慌、リムリックの町と雨とシャノン川、複雑すぎる背景。普通の日本人には、ちょっと想像できない。

    無力な少年には、自分ではどうすることもできない理由に虐げられ翻弄され、それでも彼の素朴な目線は人生の、現実の本質を映し出して教えてくれる。

    悩んだり立ち止まったり。迷っては進んでみたり。

    これは彼がアイデンティティーを見つける、作り出す、過程の紡ぎ。
    彼がアメリカに渡る夢を見、
    行き着く先として行くのは、
    帰結としてとても意味深い。

    タイトルの意味は続編を読めばわかるとか。アンジェラはお母さん。お母さんの灰…なんだろ?

  • 後半はフランクが成長し、物事がうまく表現できていたためかすらすらと読めた。
    彼の罪とリムリックへの想いはとても誠実で素直で、その繊細な心の描写には目が離せない。

  • クズな父親による家族蹂躙の物語下巻。
    上巻の終わりが意味深で、大きな事件の予兆を感じたのだが、割に、上巻とあんまり変わらない。
    主人公が成長して経済的困窮を自分でなんとかできる歳になったのは良いこと。
    ただ、目端は利かない様子。まぁあの父親だからなぁ。
    全般を通して、アイルランドという国(特にイギリスとの違い)に対する知識を少しだが得られたのは思わぬ副作用だった。
    続きがあるらしいので機会があれば読む予定。

  • 子どもは逞しい。夢さえ見られれば、絶望しなければ放っておいたってどんどん大きくなる。純粋なのとばかなのは違う。子どもをなめてはいけないと改めて思った。あの頃の希望を思い出させてくれるノンフィクション。

  • 下巻では、入院生活で知り合った少女や掃除夫との交流から主人公が読書に目覚め、仕事を始めるなど成長もしていく。上巻ほど痛ましい場面がなく、面白い。

  • 1930年代、アイルランド。この2つのキーワードに惹かれて読んだんだけど、うん。わたしが知りたかったことちゃんと書いてあった。南北、カトリックとプロテスタント、イギリスとアメリカ。調べて知ったことがそのまま当然の価値観としてこの本の中で息づいてました。

    「アイルランドのために死ぬと誓えよ、息子達」

    「私はもううんざりだ。才能のある子供たちを肥溜めに投げ込むようなこんな国にはうんざりだ。君たちはこの国を逃げ出さなければいかん。アメリカへ行け、マコート」

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著者プロフィール

1930年、アイルランド移民の長男としてニューヨークに生まれる。4歳の時アイルランド南西部の街、リムリックに移るが、父親が稼いだ金を全て酒に使うなど、一家は極貧の生活を送った。19歳で単身ニューヨークに渡り、さまざまな職業に就いた後、高校教師となる。30年ほどニューヨークのいくつかの高校で教鞭を取り、1987年に退職。1996年に刊行された、リムリックの幼少年時代の回想録『アンジェラの灰』は、ピューリッツァー賞、全米批評家協会賞などを受賞、ベストセラーとなり、アラン・パーカー監督により映画化もされた。続編に『アンジェラの祈り』(1999)がある。2009年没。

「2019年 『教師人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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