大いなる遺産 下巻 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102030165

作品紹介・あらすじ

ロンドンへ到着し、遺産に相応しい紳士となるべく、贅沢な生活を送るピップ。花嫁衣裳を着て隠遁生活を送る老婦人ハヴィシャム、その養女でピップを魅了するエステラ、再び姿を現した元脱獄囚マグウィッチなど、ピップは周囲の人々の思惑に翻弄される。その危うい運命はどこへ通じているのか。痛烈なユーモアと深い情感で、人間世界の悲喜交々を描いた、イギリス最大の文豪の代表的傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • “The pen is mightier than the sword”

    さすがや!さすがエドワード・ブルワー=リットンだわ!さすがリットン調査団だわ!(これは孫ね)

    はい、なんでリットン男爵が出てくんねん?まぁそれはおいおいということで、ディケンズの『大いなる遺産』です

    やっぱな!っていうね
    やっぱそうなるわなっていう
    もう思い描いた通りの展開で大満足です
    いらんねん変なサプライズはw

    それにしても登場人物がいちいち魅力的すぎる
    そして分かりやすい
    いい人たちはとことんいい人
    ちょっと冷たい感じの人たちも実はいい人
    ちょっと嫌な感じの人は改心していい人

    すごーく嫌な感じの奴は最後まで嫌な奴w

    そしてピップの周りにはほんとに素晴らしい人たちがいたんよね
    またピップ自身が最後にはそれにちゃんと気付けて、感謝できる人間だったからこそそういう人がいてくれたんよね

    全ての謎がきれいにほどかれるストーリー展開、ハラハラドキドキの逃走劇、善き人々に訪れる幸せな結末、気の利いたユーモアと、どれをとっても一級品の素晴らしい作品でした

    何より素晴らしいのは全てを明かさぬ余韻の残るラストです!
    もう書いちゃう!
    これを知った上で読んだとしてもこの作品の素晴らしさは全く損なわれないと思うので書いちゃう!
    ラストの文章書いちゃう!
    (以下ネタバレ)

    〜私は彼女の手を取り、ふたりで廃墟の敷地から出た。はるか昔、初めて鍛冶場をあとにした朝に霧が晴れ上がったように、いまも夕霧が晴れようとしていた。見渡すかぎり広がる静かな光のなかに、彼女との別離の影は少しも見えなかった。〜

    どうよ?

    出会った時からこの結末は予感されてたのよ〜ってことがひとつね
    そんで「別離の影は少しも見えなかった」ってのはもちろん今後は離れないってことなんだけど、その関係性については言及してないのよ
    それが物理的な距離なのか、精神的なものなのか、あるいは両方なのか
    信頼できる友人としてなのか、愛しあう恋人同士としてなのか
    ここはもうお任せしますって感じなのよね

    で、実はこの素晴らしいラストは当初かな〜りがっかり感漂うラストだったんだけど、ディケンズがリットンに「このラストでええやろか?」って相談した時に「いやいやいや、そんなんしたらもうみんながっかりしはるで〜」言われて書き直した結果らしいのよね

    いや〜、さすがリットン男爵!だてに爵位持ってないわ

    よーし次は光文社に戻るぞw

    • 1Q84O1さん
      新潮に浮気したのに元サヤに戻るんですか〜
      新潮に浮気したのに元サヤに戻るんですか〜
      2024/04/09
    • ひまわりめろんさん
      そういうこともある!
      あるで!あるで!ホルムアルデヒド!
      そういうこともある!
      あるで!あるで!ホルムアルデヒド!
      2024/04/09
    • 1Q84O1さん
      巻き散らかしてテロでも起こすつもりかーい!
      巻き散らかしてテロでも起こすつもりかーい!
      2024/04/09
  • 第2幕のクライマックスで、とうとうピップは自分を支援してくれる“さる人物”に出会う。
    それを機に次々と起こる予期せぬ出来事の数々。姉を襲った犯人との対峙、ある人物との逃避行そして別れなどなど、まさに冒険小説だった。また上巻のさまざまな伏線が回収され、さらには思いもよらなかった人間関係までもが明かされるのだから、ミステリー小説さながらの衝撃も受ける。

    ピップは“さる人物”の遺産を相続し、その財産で愛するエステラに似合う紳士になるためロンドンに向かったのだけど、それはピップが成長するための仮の目的地だったんだと思う。
    莫大な借金、愛するエステラが結婚してしまう苦悩。“さる人物”の正体が判明してからの葛藤…。さまざまな苦難や困難がピップに襲いかかる。
    けれどもそれらを乗り越えたピップのなかには、人の喜びを自分の喜びとする敬虔さや、相手に真摯に向き合うひたむきさ、優しさ、そういったものが生まれた。

    振り返ると、あのロンドンでの豪奢な生活はうたかたの夢のようだった。
    ピップが紳士となって手に入れた宝石や家財などは泡となって消えていき、最後に残ったのは寛大な友や、どんな時も変わらずピップに誠実さや正しさを持って接してくれた人々の愛情深さなど、お金では買えないものばかり。それらはどれだけ年月が経とうとも、壊れたり失われることはないピップの財産となるのだろう。
    そして、それがピップの最後にたどり着いた本当の目的地だったんじゃないかな。
    一体、お金って、財産ってなんだったんだろう。

    情けない部分や愚かな部分も含めて、人ってやっぱり愛おしいんだよなぁ…、ピップを見ているとそう思えてくる。
    人って良い面、悪い面のどちらか片側だけをもっているわけじゃないし、そしてその二面性だけで人は生きていけるわけでもないと思う。だから人はちゃんと目の前の人と向き合って対話をして、時には喧嘩もして、そうやって人を知っていくことが大事になるんだろうな。

    • ハイジさん
      地球っこさん
      お疲れ様でした!

      なかなかのミステリー要素で楽しめますよね!
      登場人物たちが皆一癖も二癖もあって、
      最初は引いちゃいますけど...
      地球っこさん
      お疲れ様でした!

      なかなかのミステリー要素で楽しめますよね!
      登場人物たちが皆一癖も二癖もあって、
      最初は引いちゃいますけど段々皆が愛おしくなるのが不思議でした
      イギリスらしいブラックユーモアも良かったです!
      地球っこさんのおっしゃる通り人は単純じゃないですねぇ
      ほんとうに…
      しみじみ(笑)
      2022/11/24
    • 地球っこさん
      ハイジさん こんばんは☆

      ディケンズ、最初は構えてたのですが意外や意外面白くてぐんぐんいけました。
      後半、あの人の正体がわかってからはミス...
      ハイジさん こんばんは☆

      ディケンズ、最初は構えてたのですが意外や意外面白くてぐんぐんいけました。
      後半、あの人の正体がわかってからはミステリー要素も相まってドキドキ。
      あの人とあの人とあの人の関係が明かされたときには、ほんとびっくりしました。

      あと、雨とか霧とか風とか、そんなお天気がピップの心情に合わせてうまく使われてたなぁと。海外小説を読んでるとお天気の使い方が象徴的だなぁと。
      シェイクスピアや聖書の引用、暗喩、そういうとのを知るともっと面白いんだろうなと思いました。

      今年は海外小説の面白さに気づけたかな。
      いつの日かハイジさんのように大作にも挑みたいと思います!
      2022/11/24
  • さて下巻からは一気にストーリーが動き、上巻で謎に包まれたことが玉ねぎの皮を1枚1枚剥ぐようにクリアになっていく

    ピップに大いなる遺産を渡した人物は予想通りだったが、理由がわかりちょっと切なくなる
    さらに過去に登場した人物があれよあれよと繋がっていき、「ええそうだったの⁉︎」と何度も心で叫んだ(笑)

    紳士になるため、遺産とともにロンドンへ
    贅沢な暮らしを送りながらも、人様の勝手なエゴに翻弄されていく

    さらに美しさを増したエステラに再会したピップ
    彼女への愛に確信をもつものの、相変わらずの態度に愛が深まるほど虚しさは増す
    婚約者に裏切られた過去を持つハヴィシャムの差金でエステラの面倒を見ることはできるものの、ハヴィシャムとエステラは最後の賽を投げる
    絶望のどん底に着き落とされるピップ
    最後に自分の気持ちを二人に体当たりでぶちまけエステラに別れを告げる(いやいや、カッコいいよピップ!よく言った)

    一方姉の婿、鍛冶屋のジョー
    親代わりであり、兄であり、友人のはずの二人の関係にも変化が
    ジョーはピップを「サー(sir)」と呼ぶように…
    悲しく思うものの自分が蒔いた種なのだ
    どうすることもできない

    幼い頃クリスマスに会った脱獄囚に再会
    深く同情はするものの、嫌悪感を抑えきれない
    しかし二人の関係にも変化が…

    そして姉を襲った人物にピップも襲われ絶体絶命の大ピンチ!
    死を目前にピップは自分の人生と向き合うのだ

    波瀾万丈な出来事が立て続けに降り掛かり、心身共に疲労困憊するピップ
    しかし友人のハーバートが常に彼を助ける
    そしてウェミックもしょっちゅう自身の城(家なんだけど城なの)に招待し、ピップに手を貸す

    最後はジョーの暖かさと二人の友情にジーンとくる
    遺産を渡した人物との最後も切ないながら救いを感じる
    エステラとの最後のシーンもいい!
    (個人的にエステラ一人称の番外編を読んでみたい!)

    ピップは確かに運命を翻弄された犠牲者かもしれないが、その罠にハマりにいくことは自分で選択しているのだ
    最後にはきちんと気づいたであろう
    ピップを通して皆が変わる
    脱獄囚も、ハヴィシャムも、恐らくエステラさえも…
    そして誰よりピップ自身が自分の向き合い変わっていく…
    気づけば大親友ともいえるハーバートがいつもそばにおり、ウェミック他、たくさんの人たちがピップに手を差し伸べる
    ピップくん
    幸せ者じゃあないですか!
    ちょっと羨ましいわよ!
    知ってた?

    ミステリー要素もピップの成長も、人の心の移り変わりも…多彩で巧みで面白い
    今読んでこれだけ面白いということは、当時の人たちにはどれほどの影響を与えたのか…

    ただどうしてもピップに対する執拗なイジメや蔑み、俗物たちの品のない嫌がらせ…
    こういう描写が多すぎてウンザリしてしまったので、少々好みからは外れる…うーん残念

    • 地球っこさん
      ハイジさん、おはようございます♪

      下巻のレビューもたっぷり楽しませていただきました♡

      過去の登場人物があれよあれよと繋がっていく感覚は、...
      ハイジさん、おはようございます♪

      下巻のレビューもたっぷり楽しませていただきました♡

      過去の登場人物があれよあれよと繋がっていく感覚は、面白そう!
      エステラという人物も気になるなぁ。
      そっか、ピップくんは幸せ者だったんだ!

      ハイジさんがレビューをあれよあれよという間に下巻まで上げてくださったこと感謝です。
      ピップがどうなったんだと心の隅に引っかかってたので、なんだかスッとしました(*^^*)
      2022/05/23
    • ハイジさん
      地球っこさん
      おはようございます!

      ピップくん
      心配ですよね
      わかります!

      散々な目には遭いましたが、彼はそこから成長して、なんかかんか...
      地球っこさん
      おはようございます!

      ピップくん
      心配ですよね
      わかります!

      散々な目には遭いましたが、彼はそこから成長して、なんかかんか幸せ者だと思います(^ ^)

      …そう後半は完全に親戚のおばさん目線になりました(笑)
      2022/05/23
  • 貧しい少年が、思いがけなく得ることになる「大いなる遺産」とは……。

    『クリスマス・キャロル』に代表される、19世紀のイギリス人作家チャールズ・ディケンズの長編小説。

    アルソンフォ・キュアロン監督による同名の映画では、舞台を20世紀のアメリカに移してリメイクされているが、原作は当然に19世紀のイギリス・ロンドンとその郊外が舞台。

    本筋は主人公の成長物語ではあるが、小説では恋と富と挫折と後悔が様々な場面で様々な人物に見えたり隠れたりする。
    主人公ピップにエステラ以外の登場人物も魅力的で、ミス・ハヴィジャム、実の姉とその夫ジョー、囚人マグウィッチ、後見人ジャガーズなど、19世紀の風情のなかで映画以上の多くのものが語られている。
    特に、ピップにはジョーはもちろん、ジャガーズの事務所員ウェミックがいたことで「世の中、そう捨てたもんではない」と、ずいぶんホッとさせられる。

    でもやっぱり、この小説の一番は“エステラ”で、しかも、エンディングのシーン……それは映画でも変わらない……あぁ、手で触れられないほど、美しい。

  • 遺産の贈与者は一体だれか。本当にあの人?
    お金はあった方がいいけど、多すぎなくていい。幸せを感じられることが幸せだと思う。ああでもないこうでもないと、色々考えてしまうピップは良い人だ。

  • 当初は新聞連載であったということで、話の展開が速く劇的です。最後に女性と再会する場面がありますが、連載時には再婚した女性の設定だったのが、書籍化にあたり、読者の意見を取り入れて、未亡人の設定に変えたそうです。
    筆者の生い立ちが所々に反映されていて、当時のイギリス社会を垣間見ることができました。

  • メチャクチャ面白くない?突然金や地位を得る若者というのは何度となく焼き直されてるが、これを超える話は無いのでは。登場人物の一人一人がイキイキとしていたし、最後も良い。古さを感じない翻訳もgood!

  • 人はやはり失敗から多くを学ぶ生き物だと感じた。成功からも学びはあるけれど、失敗してどうしようもない不幸を感じる時こそ、本当に大切なモノが見えたり自分の言動を省みたりできて、それはいつの時代も変わらないのだと思った。下巻での伏線回収や謎が解けていく感覚がすごく快感で一気に読んでしまった。

  • 上下巻通じての感想です。
    読む前は、遺産をめぐる相続人の争いの話かと思ってましたが、全然違いました。
    イギリスの田舎にいた主人公の少年は、匿名の支援者が現れて大金を支援し、紳士になるべく、ロンドンに行きます。匿名の支援者はいったい誰なのか、大金を手にした主人公がどういう運命を辿るのか・・・。
    ロンドンに行ってから話が俄然面白くなってきました。

    100年以上前の小説ですが、登場人物のキャラクターが濃すぎです。

    そして、全く関連がなかったように思えたいくつかのエピソードが、すべて繋がったときは、まるで伊坂幸太郎さんの小説みたいだと思い、驚嘆させられました。

    訳者あと書きにもありましたが、本作の終わりの部分は、当初の予定を変えて書き直されたそうですが、この書き直された最終の部分がすごく良くて、読後しばらく余韻に圧倒されました。

  • 3.3

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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