贖罪 (新潮文庫)

制作 : Ian McEwan  小山 太一 
  • 新潮社
3.88
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本棚登録 : 103
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (637ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102157251

作品紹介・あらすじ

13歳の夏、作家を夢見るブライオニーは偽りの告発をした。姉セシ ーリアの恋人ロビーの破廉恥な罪を。それがどれほど禍根を残すかなど、考えもせずに──引き裂かれた恋人たちの運命。ロビーが味わう想像を絶する苦難。やがて第二次大戦が始まり、自らが犯した過ちを悔いたブライオニーは看護婦を志す。すべてを償うことは可能なのか。そしてあの夏の真実とは。現代英文学の金字塔的名作!

感想・レビュー・書評

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  • 作家を夢見るブライオニーは、自身の偽りの告白で、姉とその恋人を社会的に抹殺した。
    ほんの少しの嫉妬、嫌悪、幼い感情の諸々。
    償いとは何かを問いかける現代英文学の金字塔、らしいのだが…いや…第1部が、長い長い。
    まだ物語は事件を起こさないのか?
    流れる田園風景をただひたすら眺めさせられているような、あくびの漏れる、などと言ったら大変失礼であるが、ページを繰る指が進まなかった。

    ところが、第2部から加速し始め、第3部、ブライオニーが看護師になってからの物語は非常に面白かった。
    第2部の戦争の話は火薬や血や、土煙や…爆弾によって消し飛んだ(蒸発してしまった、と402ページにあるように!)母子、農民にリンチされている空軍兵、うごめく物体に目を凝らした時のおぞましさ!
    どこかの政治家が、戦争で領土を取り戻さないんですか、なんて聞いていたが、その政治家は、蝿が全身にたかった腐乱死体になる覚悟はあるんだろうか。
    まあ、それは話がずれる。
    わたしとて戦争を知る世代ではない。

    第三部、そしてエピローグに当たる「ロンドン、一九九九年」は、ブライオニーの妄想だったのか?
    彼女はまた、虚偽の告発を繰り返したのか?
    ぼんやりとにじむような真実を、読者は何度も目を凝らして見極めようとするに違いない。
    おそらく読み手によって結末は違うものになってくるのではないだろうか。
    私は、彼女が告発したことを真実と思いたいが、人は見たいものしか見ない。
    語られる中の、自分に都合のいい部分だけを切り取っているのかもしれない。
    言葉の力と、危うさ、真実の曖昧さなど、深く考えさせられる物語であった。
    第1部はとにかく、生あくびと戦ったが、やはり、名作と呼ばれるのは、物語全体を通しての、その深みによるものであろう。

  • 第一部の舞台は1935年のイギリス。作家を志す13才の少女ブライオニーは、姉セシーリアの恋人であり自らも密かに想いを寄せる幼なじみのロビーに向けて、従妹のローラに対する破廉恥な行為を告発します。しかしそれは彼女の想像で創りあげた偽りの告発だったのでした。第一部で描かれるのはわずか2日間の出来事ですが、情景描写や内面描写がちょっとやりすぎなんじゃないのと思うくらいに詳細で、かなり読みごたえがあります。
    第二部はブライオニーの告発によって刑務所に服役した後、第二次世界大戦に従軍することになったロビーの視点で進みます。異国の地から追われながらの敗走という過酷な状況の中、セシーリアから届く手紙によって互いを想う気持ちを確かめ合うシーンが心に残ります。
    第三部は見習い看護師となったブライオニーの視点で進みます。ロビーを貶めた偽りの告発に対する罪の意識にさいなまれるのですが、「作家志望の文学少女」という、普通の人々とはちょっと違った自意識のあり様が面白いです。
    と、第三部の途中まで読んで、まあ普通にいい話だけど、詳細な描写にメインのストーリーが負けている気がしたので、世紀の大傑作とまでは・・・と思っていたのですが、ところがどっこい、読者がこの物語に対して思い描いていたであろう世界観を根底から揺さぶるような仕掛けが終盤に待ち受けていました。ミステリの分野ではまれに用いられるこの手法、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、この手の作品でお目にかかれるとは思ってもみませんでした。
    この仕掛けの箇所まで読むに至り、「贖罪」という分かりやすいテーマを掲げる一方で、ブライオニーが見た真実、ローラが見た真実、そして読者が思い描いた真実というように、真実はそれを見た人の数だけ存在するというのが本作のもう一つのテーマであると理解しました。あわせて、過剰なまでに詳細な描写に対して抱いていた違和感が納得感にすっと変わったのでした。恐らく多くの読者は読み終えた後、すぐに再読の欲求にかられるのではと想像します。
    いやはや、世紀の大傑作と呼ぶにふさわしいたたずまいが確かに本作にはありました。20年近く前の作品が今になって復刊された理由は不明ですが、もっともっと売れて然るべき作品だと思います。せっかくだから映画も観てみようかなあ。

  • 文体と描写力だけで、ぐいぐいと読ませる腕力は流石。古典的作品を読んでいる感すらある。でも、物語としての構成にいささか辛い点をつけてしまう。そこをクリアすればと思うこと残念至極である。64

  • 読了してから、少し時間が経ってしまった。
    「盗まれた貴婦人」の前に冒頭の方を読んでいたが、あまり馴染めず、パーカーを優先してしまった。
    その後、読み進むうちに、著者の方法に慣れて来て、面白く読んだ。
    僕は、ロマンティックなシーンより、暴力的なシーンの方を好んでしまう。
    昔、ツルゲーネフの「猟人日記」を読んだ時も、一番印象に残ったのは、馬を殺す話だった。
    この作品でも、後半のブライオニーが戦地を歩いて故郷へ向かう部分が一番印象に残っている。
    文学の要素はストーリーばかりではないが、最後の一章で、僕の心に疑念が沸き起こるのはむしろ、作者の狙い通りかもしれない。
    ミステリーではないのだから、合理的に解決されていなくても良いのだ。

  • 久々に読んだ長編小説ですが、ミステリーとしてとても素晴らしい内容になっています。特に文体が素晴らしく、難解な箇所もありましたがこれぞ文学という、自分が今まで読んできた大衆小説とは違った際立った表現が数多くありました。
    内容としては、小説家志望の少女ブライオニーがついてしまったウソで、姉とその恋人が大変苦しい想いをすることになるのですが、その結末は如何にもミステリー小説といった形で終わりを見せます。600ページを越える長編ですが、時間のある夜などに纏めて読むことをお勧めしたい一冊でした。

  • すごいものを読んじゃったとまず思った。どんな悲劇が起きるか分かってたので、第一部は読み進めるのが辛かった。異様なまでに細かく心の動きや意識の流れ、情景を丹念に丁寧に描写していて、ついのめり込んでしまう。「ダロウェイ夫人」を思い出した。そして第二部からの怒濤の展開。ロビーやセシーリア、ブライオニーの運命が気になって読む手が止まらない。こういう事かと納得したと思ったら、あれ?という展開になって最後は呆然。作者のテクニックと企みに翻弄された。何でこんな傑作を今まで読み逃してたんだろう。

  • ラストの章で物語がガラッと反転するような感覚。タイトルの意味すら覆され、考えさせられる。再読リスト入り決定。映画『つぐない』も観てみたい。

  • 再読。
    読んだことは確かだが、単行本で読んだっけか? と思ったら、2008年に上下巻で文庫化されていた。恐らく読んだのは旧文庫版であろう。
    しかしこれ、何度読んでも、なかなか酷い内容ではあるw 主人公は贖罪云々より刺されなかったことに感謝すべきだろうw

  • 著者:Ian McEwan

    【版元】
    発売日:2019/01/01
    読み仮名 ショクザイ
    装幀 Chiris Frazer Smith/カバー写真
       新潮社装幀室/デザイン
    発行形態 文庫
    ISBN 978-4-10-215725-1
    C-CODE 0197
    整理番号 マ-28-5
    ジャンル 文芸作品
    定価 907円

    現代の名匠による衝撃の結末は世界中の読者の感動を呼び、小説愛好家たちを唸らせた。究極のラブストーリーとして、現代文学の到達点として――。始まりは1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために劇の上演を準備していた。じれったいほど優美に、精緻に描かれる時間の果てに、13歳の少女が目撃した光景とは。傑作の名に恥じぬ、著者代表作の開幕。
    https://www.shinchosha.co.jp/book/215725/

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