- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102159736
作品紹介・あらすじ
当時最強を誇ったドイツ軍の暗号機はいかにして破られたのか。「戦争の世紀」が「情報の世紀」へと移り変わるなかで、数学者たちの攻防は続く。RSA暗号、PGP暗号、量子コンピュータ、量子暗号…。ネットや銀行を始め、知らずに我々の周囲に溢れる暗号技術の現在と未来、歴史の背後に秘められた人間ドラマを解き明かす傑作ノンフィクション。巻末に「史上最強の暗号」とその解答を収録。
感想・レビュー・書評
-
傑作『フェルマーの最終定理』の著者サイモン・シン氏による暗号解読に関するドキュメンタリー。
暗号発生の歴史から現代の暗号の状況まで数々のエピソードがちりばめられている。
上巻は暗号の歴史から第二次世界大戦中、最強の暗号作成機として名高かったドイツの『エニグマ』を解読した連合軍の苦労話が秀逸。
コンピューターの先駆けを作った英国のチューリング博士の話が興味深い。
下巻は、コンピューター時代の暗号の話。
今我々がコンピューターを使うとき、例えばメールを送ったり、ネットショッピングをしたりという時には、自然と暗号化がされているが、その暗号とはどういったものなのかが説明されている。
『フェルマーの最終定理』でもそうであったが、本書の文系読者にも非常にわかりやすく描かれている。
ここまで理系の本であるのに多くの読者をひきつけるのは、サイモン・シン氏が多くの人々の苦労の道筋を本として書いているからなのだろう。
非常に知的好奇心を満足させる本である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
サイモン・シン「暗号解読(下)」読了。下巻では暗号解読に関する過去・現在・未来の大きな流れのようなものから人類の叡智を感じ取れ圧巻だった。例えば、ロゼッタストーンのヒエログリフの解読、普段のモバイル通信に関係するRSA暗号と素数、そして将来運用が見込まれる量子コンピュータと量子暗号。
-
安定のサイモン・シン、非常に面白かったし勉強にもなった。ネットセキュリティの暗号など身近な問題ながら難解で、ほとんどの人は詳細を知らないでいることかと思う。 素因数分解が使われてるってことぐらいは聞いたことがあったが・・
最後に歴代の暗号を使った検証問題が出てくる試みも非常に面白かった。この10問を後書きにしっかり残した編集部の執念も脱帽もの -
線文字Bの解読、公開鍵を持つ暗号の開発、そして実用化されつつある量子コンピューターと量子暗号について解説されている。
技術的(数学及び量子力学)なことにも踏み込んで説明されており、読み応えがあるが、丁寧に読んでいけば十分に理解できる。
これだけ調べ上げ、わかりやすく表現した著者に脱帽である。また、訳者もわかりやすい日本語に翻訳することに注意を払っていることがわかる。 -
下巻ではインターネット時代(つまり現代)で使われる暗号技術について解説している。解説といっても小難しい感じではなく、ワクワクするような物語に乗せての解説なので、読んでいるだけで楽しいし、頭にも入ってくる。未来の暗号技術である量子暗号についても紹介がある。これからの技術なので、それほど詳しいわけではないが、特徴を理解するにはいいと思う。ただし、インターネット時代の技術の変遷は速いので、DES以降の現在現役の暗号技術についての解説がないのは、出版年を考慮すると仕方がないのかもしれない。それにしても、暗号技術とはなぜこんなにも人を魅了するのだろうか。人は隠し事が好きなのだろうか、そしてそれ以上に隠し事を暴くことが好きなのかもしれない。知的好奇心だけではなさそうだ。
-
暗号とは何か、暗号と解読の歴史、暗号の現在、暗号の課題をこれ1冊で掴むことができる名著。古代ローマから、エリザベス1世、第一次世界大戦、量子コンピュータの時代までを暗号という視座から追う。
単なる解説本ではなく、暗号にまつわる人間ドラマや外交のダイナミズムから暗号の全容を浮き彫りにしている。さらに、伝記や陰謀史で終わるわけではなく、暗号の仕組みや解読に至るまでの思考経路を数学も言語学も分からない素人に分かるように解き明かしてくれる。
プライバシーと治安維持、外交政策と民主主義といった視点から、暗号技術を誰がどう扱うか今後も議論が続くのだと思う。自分はどちらの立場なのか決めきれない。「犯罪組織は治安党局で監視してほしいけど、一般市民のプライバシーは侵害しないでほしい。自国の不利益は困るけど、外交は公明正大に、国民の目が届くように行ってほしい」というのが本音だけど、犯罪組織の定義すら恣意的に決めうる社会にあって途方に暮れてしまう。
ITパスポートの勉強をした際、「公開鍵」「秘密鍵」と当然なようにテキストに出てきて何のことか分からなかったが、本書を読んで理解できた。どんなに画期的な手法だったかということも分かった。
ITパスポートのような資格試験の勉強をするよりも、サイモン・シンやブルーバックスを読んだ方がITに対する理解が深まると思う。 -
下巻はけっこう難解で(特に量子暗号
)、思った以上に読むのに時間がかかった・・・
読んでいて「ん?んん??」と思う所が出てきてもその後に必ずといっても良いぐらい例え話が出てくるので、そこでおおよそ理解することができました。
この著者の例え話の上手さには感心するものがありますね!
『フェルマーの最終定理』を読んだ時にも思いましたが、物理とか数学がそれほど得意でなくても楽しめるというのが良いなぁと思います♪ -
下巻冒頭は太平洋戦争でのナヴァホ暗号から始まった。ネイティブでなければ聞き取れないことを考えると、ある意味最強の音声伝達方法だ。間に古代文字の解読が話題となる。ロゼッタ石のように手がかりがあるものは暗号解読と同じだが、未だ解読されないものがある。そして、いよいよインターネット時代に、非軍事目的で個人情報を守るための暗号の話だ。国家と個人の利益が相反する問題が……。公開鍵、暗号鍵は初級シスアドの参考書で読んだ記憶があるが、暗号のかけ方の理屈は驚くばかり。量子コンピュータによる解読不能の暗号は登場するのか?
-
公開鍵、秘密鍵のくだりはその辺に売ってるへたな基本情報の教本よりわかりやすい。この本には出てこないが、太平洋戦争中に鹿児島弁が暗号として使われた話を思い出しました。
RSA暗号の名前の由来になっている3人より早くに素因数分解の性質を利用した暗号を考案していたジェイムズ・エリス、クリフォード・コックスの存在は知らなかった。守秘誓約等の関係で口外できなかったそうだが、成り行きが違っていればRSA暗号も今とは別の名前がついていたかもしれない。 -
下巻は言語を使用した古代文字の解読から始まり、共通鍵、公開鍵暗号の鍵配送問題の解決、最後は量子暗号の可能性の示唆について描かれる。
インターネットを使用したメッセージのやり取りが当たり前になっている昨今、通信の暗号化は重要な問題だが、その重要さは理解しつつも仕組みの詳細までは把握しているのはごく僅かな人だけなのではないだろうか。なぜなら、特に意識せずともソフトウェアが自動的にそれを行ってくれるため、我々自ら暗号化や鍵の生成を行う必要がないからである。
本書は2000年前後に発表されたものだが、電子商取引が世界中で盛んに行われる日もそう遠くないだろうと予測しているが、当に予測した現状どおりになっており、その電子商取引は公開鍵暗号を使用した取引により安全性が保たれている。
例えば、アマゾンのようなECサイトと我々が物の売買をするとき、我々が入力する情報はアマゾンが広く公開している公開鍵で暗号化されてアマゾンに送られる。その後、アマゾンだけが保持している秘密鍵で復号化を行うので、通信途中で悪意の第三者に盗聴されたとしても復号される心配はない。(暗号化アルゴリズムは現状強固なものが使用されているが、脆弱性が見つかった場合はその限りではない。)また、サイト側が公開している公開鍵が正当なものかどうかも認証局が発行する電子証明書によって担保されている。
ここにきて暗号技術は解読がほぼ不可能なところにきており、昨今の情報漏洩事故の原因はフィッシングなどで自ら情報を漏らしてしまうなどの不注意からくるものが多く、暗号や鍵の解読が行われたことによる事例はないように思えるが、今後量子コンピューターによる暗号化が実現されることにより、どう転ぶのかは未知なところではある。ただ、ここまでの人類の暗号に対する歴史を振り返ってみると、当時は絶対安全と言われていた暗号が時代が進むにつれて解読されているということは事実なので、鍵暗号が量子コンピューターにより、瞬時に破られてしまう日はいつか訪れるのかも知れない。