- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102165010
作品紹介・あらすじ
どこから見ても風采の上らない英国情報部のチャーリー・マフィンは、KGBヨーロッパ・スパイ網の責任者ベレンコフを逮捕したこともある腕ききだが、部長が交替してからは冴えない立場に追いやられている。折しも、ベレンコフの親友カレーニン将軍が西側に亡命を望んでいるとの情報が入った。チャーリーはどこか臭いところがあると警告したのだが…。ニュータイプのエスピオナージュ。
感想・レビュー・書評
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原書が刊行されたのが'77年、訳出されたのが'79年。25年も前の作品である。
確かに携帯電話とかインターネットとか無い時代で、ローテクであるのは致し方ないが、この頃の小説はひたすらキャラクターとプロットの妙味で読ませている。つまり作家としての物語を作る技量が高く、本書が放つ輝きはいささかも衰えているとは思えない。それがゆえに2002年に32刷を数えるほど未だに生きながらえているのだろう。
これはチャーリー・マフィンシリーズの第1作である。
この第1作を読んで、これがシリーズ物になるのかと正直驚いた。それほどびっくりする結末である。この結末を読むとチャーリーが色んな人と交わす会話、地の文に現れる独白が別の意味を持ってくるから面白い。この結末を前提にもう一度読み返すのも一興だろう。
そして興味深いのはニュースで報じられる政治ニュースの裏側を垣間見せてくれる事。特に各国首脳の訪問にはかなりパワー・バランスが作用しているのだという事を教えてくれた。
本書ではCIAがカレーニン亡命劇に一役買うことが出来なくなりそうになると大統領の各国訪問から英国を外すように働きかけ、情報部へ圧力をかける件はなるほど、こういう駆け引きが裏に隠されているのかと感心した。
私がこの本に手を出すまでに想像していたシリーズの展開は本書の結末によって、もろくも崩れ去り、次回からどのような展開になるのかが全く想像つかなくなった。非常に次作が楽しみだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「消されかけた男」の主人公、チャーリー・マフィンは、さえない風貌の中年男ですが、実はスゴ腕のスパイ。様々な国の組織を相手に戦う羽目に陥りながら、しぶとく生き延びていきます。
真山仁さんは小説「ハゲタカ」の主人公、"世界最強の買収者"鷲津政彦のキャラクターをつくるときに、このチャーリーの姿にインスパイアされたといいます。
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GUEST 107/真山仁:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2013/11/post155389.html -
英情報局のスパイが身内から嵌められるシーンから始まるお話。
ジョン ル カレのスパイ小説よりも読みやすいけど、フォーサイトよりも難しい。そんな印象を持ちました。
意外な結末に愕然とし、もう一度はじめから読み直したいと思いました。 -
さえない中年のスパイなのに、実はもの凄い人。
この人の能力を認められない上司が、おばかですね。
でもこういうパターンが多いかも。ラストが秀逸。 -
スパイ小説ってこんなに面白かったんだー!と思わせてくれた1冊。チャーリーの魅力にハマります。
1993年 -
久し振りのスパイ小説。ぐいぐいとストーリーに引き込まれる感覚も久し振りでした。
ラストの結末は、予想出来ない筋書きでしたが、KGBの将軍の亡命話にイギリスとアメリカの諜報機関の長が揃ってのめり込む筋書きは、少し荒唐無稽さを感じましたが、後書きの解説にも触れられている様にスパイの暗躍する世界にしがない中間管理職が組織に一矢報いる話しは新鮮でした。
他の著作も手に取ろうと思います。 -
ジョン・ル・カレの系譜の英国情報部もの。組織の人間関係、主人公の泥臭いキャラクター、アメリカとソ連が絡み合って非常に面白い。
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詳細は、あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノート をご覧ください。
→ http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1590.html
雑誌のブックレビューをみて読んだのが、フリーマントルの本を読み始めたきっかけ。
チャーリーシリーズの第一作に 最初に出会えてよかった。
渋くてかっこいいスパイ? というより渋くて複雑な内容にすっかり夢中です。
"どこから見ても風采の上がらない英国情報部のチャーリー・マフィンは、KGBヨーロッパ・スパイ網の責任者ベレンコフを逮捕したこともある腕ききだが、部長が交替してからは冴えない立場に追いやられている。そんな時、ベレンコフの親友カレーニン将軍が西側に亡命を望んでいるとの情報が入った。チャーリーは警告したのだが・・。
『1979/4 シリーズ第1弾』"
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英国諜報員チャーリー・マフィンは見た目はさえない中年オヤジだけど、実は凄腕のスパイだった。
そんなチャーリーは、新しい上司や年下の同僚にとっては目の上のたんこぶのような存在であり、上司たちはいつかチャーリーを排除したいと考えている。。。
騙し合いの連続のスパイの世界。会話のひとつひとつの中にも駆け引きや騙しのヒントが隠されているような感じ。映画のような派手さはないけれど、常にきな臭いような、もやもやしたような、何とも言えない緊迫感がある。上層部の陰謀。そして意表を突くラスト。
チャーリーが相手にするのはロシアの情報部員。この作品を読み終わってまだ余韻が残っているころに起きた、イギリスでのロシア人スパイ暗殺未遂という衝撃的なニュース!
小説の世界が飛び出してきたかのようだ。
翻訳にちょっとばかり古臭さを感じたし読みにくさもあったけれど、この小説にはそれがぴったりなのかもしれない。